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ゾンビ ザ グレート

 環境、エネルギー、ゾンビ。

 それが世界共通の問題だった。ゾンビ禍からの復興にはエネルギーがいる、だが環境にやさしい自然エネルギーは効率が悪く、火力は環境に悪い。この解決法がゾンビ発電所だった。
 発電というのはタービンを回すことだ。ゾンビ禍の原因で禁止された原子力もそうだ。ゾンビたちをうまく誘導して棒付きタービンをグルグル回させる。ゾンビ、エネルギー、環境を一挙に解決できる最高の策だった。ゾンビ交換作業員以外にとっては。

 防護スーツ越しでも、臭いそうな地獄の中、動かなくなったゾンビを引きずって廃棄エリアに捨てる。手順を守れば襲われることはないが、三か月目ぐらいの新人はよくゾンビの仲間入りする。その度俺が始末書だ。クソ過ぎる。

 ただ面白いこともある。ゾンビは通常3か月で使い物にならなくなる。だが一年経ってもグルグル回している奴がいた。俺は好きなレトロ俳優の名前をとってアーノルドと名付けた。
 アーノルドはヤバイ。ゾンビ群れのタービン速度など人種性別の偏り関わらず一定だが、アイツがいるタービンだけ明らかに早い。そして意味不明に呻くゾンビの中アイツは呻かなかった。戯れに元気か?と声をかけた時だけ呻いた。アイツには知性がある。何よりアイツは体格がイカつくなった。すべてのゾンビがボロボロになる中アイツだけ成長する。明らかな異常だ。

 そんな話をどこからか聞きつけたのか研究所の奴らが来るらしい。奴らはアーノルドの謎を知るために細切れにするだろう。
 だがそれを許していいのか?俺はアイツが偉大なゾンビに思えてならない。ゾンビ禍は終わったと政府はのたまうが実際世界はゾンビだらけ。そんな掃きだめの世界には英雄が必要だ。奴隷の身となっても心が折れないような。

 俺はアーノルドを逃すことにした。アイツは世界を変える。英雄ではなく厄災かもしれないが。
 俺はどちらにしろ行く末を見届けたかった。

【続く】

さぽーとすると映画館にいくかいすうが増えます