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熱血紅茶闘士 午後野丁太郎

「アニキ!こいつ午後の紅茶なんて持ってますよ!」

地面に叩きつけ、踏み潰す。血しぶきのように中身が飛び散る!

「かわいそうなやつだな。オレが本物の紅茶を飲ませてやる」

モヒカン番長はティーポットを取り出し、熱々の紅茶を注ぎ、猫山に突き出した。

「やめてください!僕猫舌なんです!」

「俺の紅茶は猫もおいしそうに飲むぜ」

モヒカンは話を聞いていない。猫山が拒絶しようとも、紅茶は近づいていき、口元にまで辿り着く。このままでは無理矢理でも飲ますだろう。万事休すか。諦めが頭によぎったその時である。

「無理矢理紅茶を飲ませるのは止めるんだ!」

紅茶のような赤い瞳をした男、丁太郎が割って入った。

「紅茶道に反する行為、許さないぞ!」

「俺はおいしい紅茶を飲ませようとしただけだぜ」

午後の紅茶を力強く突き出す。

「おいしい紅茶ならこれで十分だ!」

「ペットボトルの紅茶なんてゴミだぜ」

モヒカンはつぶれた午後の紅茶に唾を吐きかける。丁太郎は怒りに燃え、瞳に赤みが増す。午後の紅茶の底を気を込め叩く!中身がモヒカンの口めがけ、レーザーのように飛び出す。

「飲んで確かめてみろ!」

「オレが受けますぜ!アニキ!」

モヒカンの舎弟のインタラプト!午後の紅茶は舎弟の口に飲み込まれる!

「こんな紅茶どうせまず……ハッ!」

「な、なんでだ……まるで淹れたてのような口に広がる香りと味は……」

舎弟はガタガタ震え、膝をつく。予想しない味に心を打たれたのだ。

「午後の紅茶は機械でティーポットでつくる紅茶の過程を再現してるんだ!」

泣き崩れ、潰れたボトルに土下座する舎弟。午後の紅茶を踏み潰した行為を如何に非道なことなのか身に染みたのだ。その様子にモヒカンは動揺を隠せない。

「お前も試すか」

丁太郎が差し出した午後の紅茶を手に取り……口をつける。

「!!……あっ……あ、あ……」

口に広がる感情を言葉に変えることができない。だが番長のプライドとして、どうにか言葉を紡ぐ。

「た、ただ紅茶の味を再現してるだけじゃない……香りがよくて、後味もスッキリしてやがる……」

「マイクロブリュー製法。通常サイズの茶葉と細かいサイズの茶葉を混ぜることで他にはない飲み心地を実現しているんだ」

モヒカンは恥じた。先入観で午後の紅茶をバカにし続けた自分の愚かさに、泣き崩れた。

「そう泣くな。反省して前に進めばいいんだ」

差し伸べられた手を取り、モヒカンと舎弟は立ち上がる。グチャグチャの顔のまま猫山に顔を向ける。

「すまねぇ……午後の紅茶の良さをしらないばっかりに、あんなことしちまって……」

「もういいよ。これからは一緒に飲もう!」

「おう!」

みんなに笑顔が戻った。丁太郎は平和が戻ったのを見届け去る。紅茶は奥が深い。それゆえに人の数だけ紅茶道が存在し、ぶつかりあうことも多い。そんな争いを止めるため、丁太郎は日夜、午後の紅茶の輪を広める。

【完】

さぽーとすると映画館にいくかいすうが増えます