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俺の家に聖火が一時的に安置されることになって半年が過ぎた。

 俺の家に聖火が一時的に安置されることになって半年が過ぎた。霊的エネルギー、風水の関係上、次の機会があるまでここに安置していくことがいいらしい。設置してる間お金も振り込まれることだし、俺は聖火を気にしないことにした。

 だが今、俺は聖火を片手に新国立競技場を目指している。俺は聖火を半年見続け気付いたのだ。聖火がオリンピックを求めていることを。連綿と続いたオリンピックを絶やしてはいけないと叫んでいる。延期とされているがこのままでは中止、更にはオリンピック自体の廃止すらありうる。聖火はそう俺に感じさせたのだ。俺は聖火を引き抜き、走り出した。家は日本海側にあったが、走り続けついに東京入りを果たした。

「そこの全裸の男!いますぐ止まりなさい!発砲許可は出ている!」

 三人の自衛隊員が前方に並ぶ。今日は自衛隊がお相手か。今まで警察だったが流石東京。
 俺は走りながら相手を観察した。相手は三人、距離200m、銃器は詳しくないが警察の持つような拳銃ではない、連射のききそうなやつ。200m走の世界記録は19秒ほどだが、そのタイムでは撃たれる方が早いだろう。
 俺は聖火を持つ右手に力を入れて全身に炎の熱を回す。そして聖火を上空に投げ、体の限界まで細部の感覚を研ぎ澄ました。足の指の先まで繊細に動かし、大地を蹴ることで決して靴を履いてでは出来ない極限加速!

 そして200mを100m世界記録と同じ9秒で駆け抜けるスピードに入る。俺の体は異常な熱を帯び、背中が発火する。だが気にはしない。そのまま身をかがめレスリングタックル!銃を構えたまま何も出来ぬ自衛隊員を地面に叩きつけ、一人ダウン。
 更に何が起こった理解できない顔した男の腕を掴む。だが焦りながらも最後の一人がこちらに銃を向ける。しかし引き金より早く男に向かって一本背負い!投げられた男はもう一人を巻き込み吹っ飛んだ。8mほど先で倒れ、そのまま動かなかった。

 競技なら金メダル獲得だな、と思ったが東京へ入ったばかり。ここはまだ予選会場のようなもの。本選は新国立競技場で待ち構えてるであろう。
 俺は投げた聖火が落ちてくるのを掴み、クールダウンした。背中の炎がやむ。
 かつてギリシャで行われたオリンピックは全裸で行われたというが、聖火の加護を受けた戦士が多かったのだろう。服を着てればイチイチ燃えて試合にならない。

 俺は会場に火を灯すだけでなく、聖火の加護を受けられる真の戦士たちを呼び覚ます、開会宣言をしなければならない。そう思うとまだオリンピック開催の道のりはまだ半分も進んではいないだろう。
 だが走ろう、たとえどんな妨害があろうとも。

――

 東京都都庁知事室

「東京ロックダウンは完了しましたか」

 知事の威厳ある声が部屋に響いた。

「完了です。ですが知事、これは必要なことなのでしょうか?経済の影響は計り知れません」

 黒スーツの男の顔は毅然としているが、声はどこか震えているようであった。

「あなたたちはあの男を舐めすぎです。あの男は真のオリンピックを開催するつもりです。そうなれば世界中の戦士たちが目覚め、経済の崩壊は元より科学文明の崩壊、ひいては時代が紀元前に戻る可能性すらあります」
「そんなことが……」

 男は知事が嘘を言う人ではないことを知っている、だがそれでも信じられぬという顔だった。

「EDOKKO達を呼びなさい」
「あいつらですか!?危険ではないですか!?」
「そのためのロックダウンです!今まで江戸しぐさを宣伝し、EDOKKO達の要求を飲んだのはこの時のため。奴らには働いてもらいますよ」

 男は知事室を出て早急に準備に取り掛かった。

「ギリシャの亡霊め……けしてオリンピックは開催させませんよ」

 知事は独りごちた。

【続かない】

これはなんですか


さぽーとすると映画館にいくかいすうが増えます