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ブラッドボーン 夜明けを追う狩人 第三話 『大橋』

 

「…ああ、獣狩りの方ですね。それに…どうやら、外からの方のようだ。私はギルバート。あなたと同じ、よそ者です」

窓越しに彼は様々なことについて教えてくれた。この街はよそ者に厳しいこと、「青ざめた血」については知らないが血についてなら医療教会の街、聖堂街の大聖堂にいけば何かわかるのではということ、聖堂街には大橋を渡ればいいこと、そしてこの街は呪われてるから早く離れたことがいいこと。

ギルバードは咳をしながらも、饒舌だった。排他的な街ということならば、異邦の者同士話せたことは嬉しいことだったのかもしれない。異邦……少し話しただけで見抜かれたが、しゃべりかたがなまってでもいるのか。自分は何者か?についてのヒントになりそうだが、これだけでは解決の糸口になりそうにない。俺は別れ際に「お大事に」と言い残し、先に進むことにした。呪われた街、それは現状を見ればよくわかる。だが戻る道も進む道もわからない。今は「青ざめた血」を求めて聖堂街に進むしかなかった。

あちこち閉められた門が多く、進める道は少なかった。ある意味迷わないという点では助かったが。道なりに進むと「人型の獣」にまた出会った。人と話した今、よくわかる。アレは人ではない。「アレは人ではない」声に出し、言葉を脳裏に刻む。人の形をしたものを殺す忌避を塗りつぶす。素早く間合いを詰め、ノコギリ鉈を振り下ろす。ギザギザの刃が相手の血肉を削ぎ、仰け反らせる。反撃する暇を与えることなく、三度ほど切りつけるとアッサリ血が出なくなった。最初に出会った狼型と比べるとずいぶん弱い。だが狼型を斬ったときのようなノコギリの刃が一つ一つ皮膚に食い込み、肉を切り裂く感触がなかった。人型と狼型では皮膚の具合が違い、ノコギリの刃がそんなに食い込まないのかもしれない。

斬れば死ぬので気にする必要はないか。そのまま出会う人型を斬り捨てながら、大通りに出られる階段まで来た。大通りには相変わらず壊れた馬車と、棺桶等々が転がっている。階段上から4体の人型が一塊になり歩いているのが見える。武器はたいまつと斧、たいまつと盾、フォーク、鉈。道はここしかないので通りに出るしかないが、どうするべきか。一体一体は弱いのはわかっている。素早く一体を撃破、すぐさま次に取り掛かればいけるか。

俺は階段を通り過ぎたのを見てから、通りに降り後ろから襲い掛かった。予定通り鉈持ちを手早く始末した。だが二人目を殺しきるほど、スタミナが持たなかった。激しく動いても一呼吸置けばすぐに動ける。だが絶対に一呼吸おかねば武器を振れないのだ。この隙をつかれ、赤々と燃えるたいまつが体を打つ。重い衝撃が骨に響き、炎で肉が焦げる。血が尽きなければ死ぬことはない。それは狼型と戦ったときの感覚で分かる。だが痛みは体を蝕み、悶えさせる。自分に出来ることはいち早く呼吸を整え、素早く後ろに飛びのくことだけだった。

距離を取り輸血液を打つ。相手の出方をうかがう。残り三人、ゆっくり近づく。後ろには扉、開く手間を考えるとあそこから逃げるのは得策ではないか。自分のウカツさに泣きたいところだが、まずは打開案を練るのが優先。反撃覚悟で突っ込むか……それとも……

俺はノコギリ鉈を強く握り「頼んだぜ」武器に向かって小さく囁いた。こちらから相手に向かい、斧持ちに先制の一太刀を浴びせた。盾持ちと、フォーク持ちが反撃に動く。ノコギリ鉈のスイッチに手をかけ、力強く振る。逆U字型かI字に開き、リーチが二倍になる。変形の勢いと腕の力をのせて、そのまま横に振りぬき、薙ぎ払う。

フォーク持ちは絶命、斧持ちは耐えるが逆U字に戻しながら、その衝撃をのせ切り払い絶命。盾持ちは盾のおかげで生き残ったが、一人。距離を取り呼吸を整えてから盾の上から、激しく打ちつけ、守りをこじ開ける。そして絶命。

変形攻撃の威力は絶大だった。横に広く、巻き込みやすい。これが仕掛け武器の本領か。これを掴んだとき武器について分かった気でいたが、実際に体験してより深く理解した。他に残っていた大通りの人型を変形攻撃で薙ぎ払い、大通りの奥までたどり着いた。

壊れた馬車の裏から様子を伺う。はりつけにされた狼型が燃やされ、無数の人型が取り囲む。なかなかおぞましい光景だ。変形攻撃が強いといってもこれだけを相手にするのは無謀か。そして銃を持っているものがいる。

だが進まねばならない。大通りの上に大橋があり、一番大きな通りは門で塞がれ進めない。大橋に直接上がる道も見えない。ただ門の隣に横に一人か二人程度通れる小道がある。おそらく大橋つながる道はあそこを抜けた先にある。そして小道なら大人数でも、一度に相手にする人数は少なく済む。走ってあそこまで行く。小道の先に獣がいれば挟み撃ち。だがこれが一番勝算のある行動に思える。さっきは失敗したがどうにかなった。次もどうにかなる。どうにもならないときはその時どうにかする。

深呼吸をし「やるぞ」と小さくつぶやく。少し独り言が増えたな。人と話したことで声を出したくなったのかもしれない。そんなこと思いながら一気に走る。足音に気付き、人型が一斉にこちらに振り向く。武器を振り上げこちらに向けるが、振り下ろされるより早く駆け抜ける。飛んできた銃弾が足元で跳ねる。群衆たちの間をすり抜け脇の小階段を上り切り、小道まであと十歩。次の銃弾は体のギリギリを通り外れる。

そのまま小道を突っ切り向こう側の広場へ出る。敵はいない。挟み撃ちの心配なし。素早く振り向き、追ってくる人型へを迎撃体制を取る。が追ってくるものはいなかった。不思議に思ったが縄張りでもあるのかもしれない。

来ないのならこれで良し。門のほうで大男がひたすら拳を打ちつけていたが、こちらに気付かないようなので無視。不要な戦いは避け、大橋へ続く階段を目指す。階段付近に犬と銃持ちがいる人型の群れに少し手間取ったが、銃の射線から外れた狭い階段へと退避し、近づいてきた犬ともども変形攻撃で薙ぎ払い、残りの銃持ちは障害物を立てに近づき斬り殺した。

やっと大橋までたどり着いた。嘆いてるかのような不気味な女性の石像が並ぶ。まず少し先に見える狼型が二体いるのをどうするか。相手からこちらが丸見えの気がするが、こちらに気付かないような動きをしている。獣達はもしかすると目がそんなによくないのかもしれない。ならば銃でも撃って一体づつおびき出して叩くか。遮るものなく銃声が響く。弾が当たった一体だけでなく、もう一体もこちらに振り向いた。耳は良いらしい。

強力な狼型に対して2体同時は不利。こいつらの縄張りが広くないことを信じ、一気に大橋をかける。二体の獣の間をすり抜け、途中大男と地面に這いつくばる巨大なカラスがいたが、それも躱し橋の奥へ奥へと進んでいく。橋の一番奥には閉まった門が見えた。

閉まっている?いや確かめないとわからない。そのまま門に近づいていく。その時、甲高い叫び声と共に巨大なナニカが門の上から下りてきた。

 


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