すべてを包みこむコート
洋服には女性物、男性物がある、
こんな時代だとこの表現すら正しいのかわからなくなる。
一般的にスカートやワンピースは女性物という認識ですが、現在の風潮では女性男性は関係なくなっていくと思われます。
男性の化粧が普通となった今では全ての「当たり前」を改めなくてはならない。
わたしは多様性云々というより、もともと自分が良いと思うファッションをすれば良いと思ってきましたから、他人の価値観を否定することはない。
そもそも、わたしが二十歳前後の頃にも男性がファッションとしてスカートを合わせるなんてことも見てきましたから、それ自体に驚きも何もありません。逆に世の中の流れでしか洋服を選べない人よりはずっと素敵なことだと思っている。
それでは男性物って何なんだろうか?
われわれカジュアルファッションの分野においては、ミリタリー、ワーク、スポーツがほとんどのベースになっています。
丈夫さであったり、動き易さであったりと機能として生まれたデザインが、時を経てファッションアイテムとなった訳です。
そんな様々なアイテムが生まれた時代をさかのぼると、ほとんどが男性が着ることから始まっているのです。
デニムだって、カーゴパンツだって、トレンチコートだって・・、歴史を見ずとも想像するに容易い。
つまりは男性物というより、男性が着る社会であったに過ぎないのだ。
一つ一つのディテールは歴史そのものではあるが、男性であったから生まれたわけでも何でもない。
少なくともカジュアルファッションにおいて男女なんてものはないのは明らかなのだ。
昔のバイヤー時代から女性にも男性物(一般的概念)をどんどん着て欲しいと思ってセレクトしていました。そして、それはデザインする側にまわっても変わることはありませんでした。
単に小さなサイズを作るのではなく、サイズも超えてユニセックスな物を作りたいと思うようにもなりました。
その最初が「Desert Duster Coat」、このアイテムは男女フリーのワンサイズ展開でした。男性はそのままで格好良く、女性には着丈を長く、袖を捲って着てくれた方がかわいいという発想からでした。
それから2、3年を経て、リバーランズオーバーをデザインすることになる。
‟テーマはデザインとして男性女性を想像させないこと”
まずは袖先裏をリバーシブルのように表地を付ける仕様にして、デザインのように捲れるようにしました。
そして、襟型にもこだわりました。
ベーシックに逃げるのではなく、少し大ぶりなラウンドカラーにしました。
丸みをもたせることが決して可愛らしさになる訳ではないことも感じていただけるのではないでしょうか。
その他、肩位置も違和感のないようラグランにしています。
とは言え、9割方は男性のお客様がほとんどです。
このモデルはサイズも2、3のみで、サイズ1すら展開していない・・。
それでも、このコートのデザインプロセスは無意味ではないのです。
こんな思考の入り口としては十分大きな手ごたえも感じています。
次につながるつなげるデザインを。
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