私ができること

長文で失礼します。
私は、2024年の1月末まで大阪府和泉市にある住宅型有料老人ホームで約8年間施設長を務めました。(定員50床弱、介護職約25人の規模です)

始まりは32歳の時。介護未経験で、覚悟を持って親の会社に入社したのですが、事務員採用の予定が、既存の施設でいきなり施設長に就任することに。入社当日に任命されました(笑)。しかも元々いた施設長は降格。

僕の入社前月の介護職は10人でしたが、その年に退職した介護職は21人でした。離職率は驚異の210%(21÷10×100)です。

当然、現場は人手不足に陥っているため、お金をかけて人を集める。派遣や人材紹介も普通に使っており、僕と同月入社は6人もいました。しかし、離職率が高い職場に無理やり人を集めても結果は同じで、お金をかけるから入社する人は多いが、退職する人も多いという状況でした。

当時は、穴のあいたバケツに必死に水を継ぎ足している感覚でした。

なぜ辞めるのかがわからない、どうやったら求人に応募が増えるのかがわからない。そんな状態がずっと続きました。介護のこともわからない(そんな奴が施設長になるなよ)、社長の息子としてどう振るまうべきなのか(二世なんて誰だって嫌だよね)、施設のトップとしてできる風に見せないといけない、など悶々とした日々を過ごしていました。

3年目の時点でも、介護職約25人に対して、年間の退職者は15人でした。散々な3年間。自分が未熟なばっかりに、退職した職員にも、残ってくれている職員にも、苦しい思いをさせてしまいました。

変化があったのは4年目からです。この年から数値的に大きく改善することができました。

介護職は25人ほどの体制の中、それぞれの年の退職者は、

 4年目 4人
 5年目 3人
 6年目 0人
 7年目 4人
 8年目 3人

0人にできた年は6年目だけなので偉そうなことは言えませんが、3年目までと比べると大きく改善でき、かつ安定した状況を継続することができました。こういう状態になると、様々な良い状況が生まれます。例えば、

①採用を焦らなくて済むので、面接段階で自社に合いそうな人を選べる余裕が出てきます。正直、それ以前はほぼ全員採用していましたが、この頃から「断る勇気」を持てるようになりました。

②教育や職員の成長に目を向けれるようになります。人材育成が課題ではない事業所はない。リーダー層の育成、職員のキャリア、何を伸ばし、どういう経験を積ませてあげることができるのか。会社ができることを考え、費用をかけ、経験をさせ、経験値をあげる、スキルアップする、興味を持っているものを深堀させるなど。未経験の職員を採用することも怖くなくなり、リーダー層の育成にも適正を見ながら力を注ぐことができます。

③結果的に顧客からのクレームが減ります。職員の入れ替わりが少なく安定している、職員が成長し笑顔が増えてくるとクレームが減りますし、クレームが出た時もうまく対処できるようになります。それが次の信用につながります。

など良いこと尽くめです。

なぜこれほど変わることができたのか。これが、僕が人に語ることができる領域、実績です。

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もう1つの実績は、満足度についてです。(いわゆるCSとES)

◇従業員満足度(ES)について

退職者が少なくなると、平均勤続年数が長くなります。ここで問題として出てくるのは、マンネリ化でした。給料が高いから続けているだけ、仕事が楽だから続けているだけとなり、介護に向き合う意識がおざなりになったり、改善する文化がなかったりと悪影響が出てきます。そういう職場はありませんか?

僕も社長に何度も言われました。「辞める人が少ないのは、お前のとこは楽やからやろ」と。

働きやすい環境を整えることはすごく大切です。でも、その次が必要です。従業員が「ここで働きたい」、そのようにここで働いていることを前向きに捉えている状態にしたい。そう思ってもらえるよう、職員の成長を促す、支援することに力を入れました。(詳細は省きますが、研修を工夫したり、様々な経験が積めるようにしていきました)

自社で働いている中で満足している項目に関する職員アンケートの結果は、

 やりがいがある 90%の職員が満足
 給与水準が良い 80%の職員が満足
 人間関係が良い 80%の職員が満足
 成長できる環境 80%の職員が満足
 信頼できる上司 75%の職員が満足

という結果でした。

ただし、満足度が低かった項目もあります。それは、
仕事の負担
です。35%の職員が満足。言い換えると、65%の職員は仕事の負担が大きい、楽ではないと思っているということです。つまり、忙しくて大変だけど、従業員満足度は高く、退職者も少なく安定している、ということになります。

◇顧客満足度(CS)について

シンプルに10点満点で評価していただいた際の平均点は、9.0点でした。

こちらについては、正直、アンケート調査をする前からこのくらいの数値は予測していました。それは日頃からの関わりで、どの程度信用していただけているのかを肌感覚で理解していたからです。ただ、実際に数値として結果が出たときはやはり嬉しかったです。

なぜこのような満足度になったのか。これが、僕が人に語ることができる領域、実績の2つ目です。

もちろん、どちらも偶然そうなったわけではありません。試行錯誤の結果、従業員とともに到達できた領域です。

従業員の退職者が少なく安定していて、教育もしっかり行えて、顧客満足度も高い。結果的に、採用費用も減り、他に投資することができる。実は、売上も毎年増収でした。処遇改善や特定事業所加算も得意です。(コロナ期は増収でも減益の時がありました)

従業員満足度(ES) → 顧客満足度(CS) → 安定した売上・利益
これらが好循環していきました。

ここまで長文を読んでいただきありがとうございました。なぜわざわざこのような話を書いたかと言うと、自慢したいからではありません。

僕は2024年7月に大阪で起業しました。株式会社アナザーエイトという会社です。事業の1つは事業所さん向けの個別コンサルです。同じような悩みを抱えている事業所さん、施設さんがいらっしゃれば、お力になれると思います。初回相談は無料でさせていただきますので、ご連絡ください。という宣伝でした!(笑)

もう1つのメイン事業は、サブスク型のリアル研修・勉強会事業です。事業所との契約ではない、成長意欲をもったまたは悩める介護職の成長を支援するための事業を立ち上げます。コミュニティ機能を持たせたリアル研修・勉強会をサブスク形式で構想しています。夢のようですが、1年後を目途にと考えています。まずは、単発のオンラインセミナー・研修・勉強会から始めていきます。(貸会議室などを利用したリアルなものも並行して実施していきます)
経営層、リーダー層の育成から、問題職員が変わる?ような再生工場的なことまでできるのではないかと夢想しています。

僕が人材育成で重視していたのは、「人間力の向上」です。介護技術や介護専門の研修だけでなく、業界の垣根を越えて学べることはたくさんあると考えています。例えば、リーダー育成、コミュニケーションスキル、離職率低下の対策など多くの分野がこれに当てはまります。実際に、施設内研修にビジネス書を取り入れたりしていました。

どれも介護職特有の課題ではなく、全産業が課題にしていることです。広く学ぶ、視野を広げながら吸収する、それを現場で活かす。それが介護福祉業界に大きな恩恵をもたらしてくれると考えています。このような考え方から、今現在は「ビジネス書をもとにした勉強会」を介護福祉職向けにオンラインコミュニティ内で開催したりしています。

これからはオンラインやリアル会場での勉強会を多々開催していきたいと考えています。是非ご参加をご検討ください。

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