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【作品考察】A Song for XX (PART1)

 本記事では浜崎あゆみ初のオリジナルアルバム「A Song for XX」を紹介していきます。楽曲の考察を歌詞に重点を置いた(音楽知識が乏しいため)内容です。長文のためPART1として投稿します。


【初めに】
 「A Song for XX」は浜崎あゆみにとって1枚目のオリジナルアルバムで、1999年1月1日に発売されました。オリコンアルバム週間チャート最高1位を記録、累計145万枚以上を売り上げています。初のミリオンセラーを記録した本作の登場で、浜崎あゆみの全盛期は幕を開けていきます。一人の少女「濱崎歩」がプロデューサーの松浦勝人と出会い、恋人として結ばれ、平成の歌姫「浜崎あゆみ」に変わっていく。本作はその物語の始まりが収められた伝記として位置付けられる内容です。


【A Song for XX】
01. Prologue
02. A Song for XX
03. Hana
04. FRIEND
05. FRIEND Ⅱ
06. poker face
07. Wishing
08. YOU
09. As if...
10. POWDER SNOW
11. Trust
12. Depend on you
13. SIGNAL
14. from your letter
15. For My Dear...
16. Present


【楽曲考察】

Prologue
 アルバムインスト曲。
 浜崎あゆみのオリジナルアルバムでは数多くのインスト曲が存在します。インスト曲を配置することで、作品の統一感や曲順に意味を持たせる効果があるのかと。(たまに「なぜここに…」と疑問を持たせられる場合もありますが)本曲が記載されている歌詞カードのページでは、本人がベッドで眠っている姿に朝陽が差し込んでいる写真が使用されており、物語の序章や一日の始まりを表す目的で楽曲を配置しているのかと考えられます。また編曲も透明感がありかつ壮大で、「濱崎歩」が「浜崎あゆみ」として目覚めていく様子を暗示しているようです。


A Song for XX
 アルバムリード楽曲。
 母子家庭で祖母に育てられた自身の過去を真っ直ぐな言葉で綴られた内容です。表題の「XX」とは自身の母親のことを指しており、両親の愛情を受けず成長していくことに対しての不安と葛藤が楽曲では叫ばれています。自身の感情や状況を問う言葉が幾つも投げかけられていますが、本人は答えを母親の口から聞きたかったのかなと個人的に推測しています。また他者からの期待に応えようとする程、他者に対しての不信感が激しく募っていく心情がとても特徴的です。しかし最後に「一人きりで生まれて 一人きりで生きて行く きっとそんな毎日が当たり前と思ってた」と過去形で締め括られていることで、楽曲に少し希望を持たせている気がします。それは今まで孤独を感じていた人、今孤独を感じている人達が共感できる要素です。そして商業的な話に移りますが、アルバム発売前に発表した5枚のシングルは全て(少し誇張して言うと)前向きで明るい雰囲気の楽曲でした。また本人が歌番組などに出演した際も無邪気な話し方で、天真爛漫な印象を与えています。容姿からもアーティストではなくアイドルの様な存在で世間に浸透していきますが、暗い雰囲気の本楽曲をアルバムの告知で大々的に使用したことで人々の想像を大きく裏切り衝撃を与えます。一連の戦略が本作品の商業的な成功へと導き、「居場所がなかった」と歌う浜崎あゆみが多くの人達の居場所になったのだと考えられます。


Hana
 アルバムオリジナル曲。
 社会や共同体の中で生きていく強さや儚さを花に例えている楽曲だと思います。浜崎あゆみが福岡から上京して、東京での生活に対して感じたことを歌詞にしているのかなと考えると情景が浮かびやすいです。本人は19歳で歌手としてデビューしますが、子供から大人へ移行する期間の年齢だからこそ書けた詩でもあると思います。楽曲の中で花は決して弱い存在ではなく、自身の運命を理解して生きる強い存在として描かれています。「A Song for XX」同様、歌詞では様々な質問が繰り広げられますが、最後の「過ぎた日々 振り返るのと 明日に期待をするのは どっちが怖いことですか」という問いが印象的です。そちらに対して「そんな質問はやめましょう あなたが咲くのなら」という回答は、本人が自身の運命を受け入れたと捉えられそうです。


FRIEND
 1枚目のシングル・カップリング曲。
 芸能界に入るため上京した本人が離れた地元にいる友人へ宛てた楽曲ではないでしょうか。友人と過ごした何気ない時間を大切そうに振り返る内容となっています。東京での様々な経験を通して、自分を支えてくれていた友人の存在に改めて気付き、少し後悔も伴った歌詞が気になります。「この世界に君はひとりしかいない」や「離れてても胸の奥で友達だよ」という歌詞は友人に伝えたい本人なりの謝罪と感謝の気持ちを表した言葉かもしれません。


FRIEND Ⅱ
 アルバムオリジナル曲。
 デビューシングルのカップリングとして発表した「FRIEND」の続編で、友人と離れて過ごした時間の経過が楽曲では描かれています。友人を理解しきれなかった悔しさを「ごめんね」と自分の気持ちを率直に伝えている歌詞が切ないです。歌手デビューをしたことで本人と友人の間に距離が生じたのだと勝手ながら想像しています。未来で再会した際は「他の誰にも負けない最高の仲になっていたい 深い絆が出来ると祈って」と綴られていますが、友人にこの楽曲が届いていると願うばかりです。


poker face
 1枚目のシングル曲。
 浜崎あゆみの記念すべきデビューシングル曲です。濱崎歩がプロデューサーの松浦勝人と出会い、本人が感じた心境の変化が楽曲で反映されています。自身の幼少期を告白した「A Song for XX」では「いつも強い子だねって言われ続けてた 泣かないで偉いねって褒められたりしていたよ」と歌っていましたが、本曲では「いつだって泣く位 簡単だけど笑っていたい」と歌っています。今まで周囲から求められていた強い生き方に応えてきた本人が、松浦勝人と出会ったことにより、自身の気持ちと正面に向き合えたのだと思います。そして他者へ素直になることで、今まではとは別の自分らしさを手に入れようとしている過程が描かれています。しかし自分の気持ち(松浦勝人に対しての恋愛感情)は社会的な立場上、決して打ち明けられないため、本人はポーカーフェイスで「あなたの愛が欲しいよ」と楽曲の中で叫んでいるのがとても虚しいです。人間が持つ表面の強さと内面の弱さが共存しているのが本楽曲の魅力だと思います。


Wishing
 アルバムオリジナル曲
 「A Song for XX」の母親や「FRIEND」の友人とはまた別の大切な人へ向けた曲と個人的に考察している曲です。アルバムに収録されている楽曲の登場人物で、最も本人が自分の気持ちを素直に伝えられる相手になのかなと思いました。長年を共にした相手で自分の弱音を吐け、今まで我慢していた涙も流せる位、信頼を寄せている人物だと歌詞から読み取れます。また歌詞の中では時間の経過と共に与えられる存在から与える存在になりたいと、本人の気持ちが変わっていきます。そして頼りにしている人の願いが叶うことを願う気持ちが「君が大好きなあの人と 笑っていられるように...」に込められているようです。最後に「...」と表記しているのは、その願いが叶うことで本人と相手との間に距離が生まれると理解しているからかもしれません。本楽曲では分かりやすい恋愛や友情の内容ではなく、人間関係の形に囚われない大切な人を想う愛情が表現されています。


YOU
 2枚目のシングル曲。
 大切な人と過ごした日々が春夏秋冬に擬えて描かれている楽曲です。春から冬までの時間を様々な情景描写と共に歌われているので、小説を読んでいる様な気持ちになります。本楽曲を通して大切な人とは、季節の醍醐味を一緒に感じたい相手なのかなと考えさせられました。楽曲の中では二人の過ごした四季がとても特別であること、そして今後も季節を共にしたい本人の想いが謙虚に奥ゆかしく伝えられています。「Wishing」同様、恋愛とも友情とも汲み取れる歌詞となっていることも特徴です。(実際は松浦勝人に宛てられていそうですが)無力に思える自分を「そばにいるだけでただ 心が癒されてく そんな支えにいつか なりたいと願うよ」と恋人や友達という関係を明かさず表現していることで、多くの人々が共感しやすい内容になっています。

PART2に続きます。

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