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【作品考察】A Song for XX (PART2)

 本記事では浜崎あゆみ初のオリジナルアルバム「A Song for XX」を紹介していきます。楽曲の考察を歌詞に重点を置いた(音楽知識が乏しいため)内容です。長文になってまったためPART2として投稿します。


As if...
 アルバムオリジナル曲。
 浜崎あゆみと松浦勝人が恋人として結ばれ、二人が過ごす日常から未来に視点を向けた楽曲なのではと考察しました。アーティストとプロデューサーの立場からより親密な関係に発展したと小説「M 愛すべき人がいて」では告白されていますが、本アルバムの中で最も恋人としての関係が反映された歌詞かと思います。「いつわりの日々を続けるのも そろそろ疲れてきたけど それで一緒にいられるのなら 仕方ないね」と世間から隠れて交際する葛藤や虚しさが楽曲の中では描かれています。本人の中で浜崎あゆみがアーティストとして成功する夢と、末長く松浦勝人と一緒に過ごす夢の釣り合わせが困難になっていそうです。二人が同じ時間や空間を共有しているものの、気持ちや考えの違いが大きく変化している時期に制作されたのではないでしょうか。楽曲の最後では「いつの日か いつの日か きっと 一緒にいられるよね...」と感情の共有や世間からの公認を得られた関係を望む気持ちが込められていると思います。


POWDER SNOW
 アルバムオリジナル楽曲。
 本楽曲は「A Song for XX」と共にアルバム告知用のショートクリップが製作されています。またどちらも2枚目のアルバム「LOVEppears」に続編と思われる楽曲が収録されているのです。上記のことから2曲は繋がりがあるのかなと個人的に推測しています。「A Song for XX」で自身が泣くことは許容されていないと受け止めていた本人を救う、受け皿の様な楽曲だと考察しました。歌詞の冒頭では絶望に打ちひしがれ、未来への期待どころか明日が来ることをも拒否しています。「泣きたいだけ泣いてもいい? 涙枯れてしまう位」と率直に自身の気持ちを訴えているのが「A Song for XX」と対比的です。悲しみに対して泣き叫びたい気持ちを請う内容ですが、最後に「雪止むまで」と綴られていることから本楽曲は決して悲観的ではなく、人生を乗り越えていくために必要な時間(空間)として歌われているのかと感じました。


Trust
 3枚目のシングル曲。
 本楽曲で初めてCDシングルランキング週間トップ10入り、売り上げも10万枚以上を突破します。また「日本有線大賞」の新人賞を受賞する等、浜崎あゆみが世間に少しずつ認知される機会を作った楽曲といえそうです。1枚目の「poker face」、2枚目の「YOU」と比べて本楽曲ではより自分に自信を持とうとする姿勢が伺えます。プロデューサーの松浦勝人に出会えて得られた自己肯定感が主題として描かれていますが、合間に恋心が募っていく様子を表現しているのが本楽曲の魅力だと思います。「口びるにすこし近付き始める」という歌詞は二人の距離が接近していることを意味していそうです。また「今の二人なら信じられるハズ もうひとりぼっちじゃないから」と孤独だった幼少期を乗り越え、信頼したい人に出会えた喜びが「自分を信じて ひとつ踏み出して 歩いていけそうな気がするよ」と本人の目覚ましい成長に繋がっているのだと考えられます。


Depend on you
 5枚目のシングル曲。
 アルバムの先行シングルとしてリリースされ、売り上げ10万枚以上のセールスを記録します。また「日本ゴールドディスク大賞」にて本楽曲が新人賞を受賞。「Trust」と同様に浜崎あゆみのブレイクに貢献した楽曲といえるでしょう。「あなたがもし旅立つ その日が いつか来たら そこからふたりで始めよう」と冒頭で歌われている通り、アーティスト・浜崎あゆみの出発を、濱崎歩と松浦勝人が共にする姿を想像できる内容です。作品の変化として2枚目のシングル「YOU」では相手に対して「きっとみんなが思っているよりずっと キズついてたね 疲れていたね 気付かずにいてごめんね」と申し訳なそうにしていますが、本楽曲では「ずっと飛び続けて 疲れたなら 羽根休めていいから 私はここにいるよ」と自身が相手に対しての居場所であることを表明しています。「Trust」で描かれていた自信を手にして、本人の気持ちが変わったのかと思います。楽曲の最後では「これから始まって行く ふたりの物語は 不安と希望に満ちてる」と締められていますが、敢えて「不安」という言葉を「希望」と一緒に使うことで人間らしさが聞き手に伝わり、架空の物語ではなく現実を生きて行く人々の共感を得られたのかなと考察しました。


SIGNAL
 アルバムオリジナル曲。
 アーティストとしての成功を目標に定めた後に製作された楽曲の様な気がします。アルバム3曲目の「Hana」では時間の残酷さを憂いていますが、本楽曲では「過去はきっと現在とは比べものにならない だけど現在に未来が勝てるわけがないさ」と今を生きる大切さを力強く言い切っています。やはり松浦勝人に出会えて得られた夢や恋愛感情が、「Hana」の頃とは比べものにならない、本人の自信や強さを引き出していそうです。「立ち止まっているヒマなんてない 私には時間がない」と歌詞からも疾走感が伝わります。また信号機の青・黄色・赤と、時間の過去・現在・未来を繋げる着想も、本人の焦燥が点滅している様な世界観となり面白いです。


from your letter
 アルバムオリジナル曲。
 本人が松浦勝人から受け取った手紙を通して作られた楽曲なのではと題名から推測しています。小説「M 愛すべき人がいて」では口に出来ない言葉を歌詞にして、自身の恋愛感情を伝えていたと言われていますが、本人が書いた作詞に対しての答えの様な手紙だったのかもしれません。自分自身が相手にとって必要かは不明でも、自分自身が相手を必要としている想いを率直に伝えています。一方でアーティストデビューに対しての不安や、自身がプロデューサーと付き合うことで生じる心配なども添えられていて華奢な印象も楽曲に与えています。最後に自身の決断を「賭け」と表現しているのは、ニューヨークで行ったボイストレーニングなどの試練を乗り越え、成功は人事を尽くして天命を待つ状態であること、そして他者の気持ちは自身では操作できないと理解している気持ちを意味しているのかと思いました。


For My Dear...
 4枚目のシングル曲。
 本楽曲は製菓商品のCMソング(本人が出演するCMとしては初めてになります)。初期の浜崎あゆみが歌う理由が集約されているような楽曲です。冒頭から「いちばんに言いたい言葉だけ言えなくて この歌をうたっているのかもしれない」と恐らく松浦勝人に対しての向けられた想いが綴られています。様々な事情で制御された自身の気持ちが楽曲の中で可能な限りの言葉に置き換えられていそうです。本人が絶対叶わないであろうと思い、だけど絶対叶えたいと望む気持ちを歌という方法で間接的に松浦勝人へ伝えようとしています。その間接的な表現を歌う浜崎あゆみに当時の人々は引き付けられたのだと考えられます。


Present
 アルバムオリジナル曲。
 本アルバムに収録されている最後の楽曲で、歌詞が本人の意図により一部のみの公開となっています。楽曲の内容はスタッフやファンの人達、そして松浦勝人に向けた感謝の気持ちを歌っていると捉えられそうです。「A Song for XX」では「居場所がなかった」と歌っていた本人が「みんなの声が聞こえたから この場所へ来ることができて」と本楽曲では新しい居場所が出来たこと、そして「みんなの愛に包まれたから こうして今声を届けていられるんだね」と歌える喜びを最大限に表しています。公開されていない歌詞では本人の日常を通して触れ合う人達が登場し、過去の孤独な自分に対して未来は一人ではないと伝えているようです。題名の「Present」とはそんな現在が、本人にとって何よりも嬉しい贈り物である事を意味しているのかなと思いました。


終わりに
 「A Song for XX」というオリジナルアルバムは浜崎あゆみが、平成の歌姫と呼ばれる前に創られた唯一の作品です。本作の素朴で初々しい雰囲気は決して他の作品では味わえない魅力があります。また本人の成長や、松浦勝人との恋愛が物語の様に進展していく曲順も特徴的です。本作は自身が持つ暗い感情と正面に向き合い、そして恋愛感情を遠回しに表現することで多様な人々の共感と支持を集めました。大ブレイクを果たした本人は恋人からの期待に応えようと次作「LOVEppears」で更なる社会現象を起こします。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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