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舞台「獣道一直線!!!」(配信)の感想

先日、WOWOWで放送されたねずみの三銃士(生瀬勝久、古田新太、池田成志)のパルコ劇場公演「獣道一直線!!!」の感想です。昼間「真夏の夜の夢」を見ていて、その流れで夜にこの配信を見たので、なんというか不思議な感じもありますが。配信版での感想なので、劇場で見た方々との違いは多くあるかと思います。ご勘弁を。

三銃士の面々が揃うだけでも、なにかありそうだなと思わせる作品なので、非常に楽しみでした。仕事やコロナの関係でチケットを取る日を決めにくく、そのまま公演が始まり、見ることが難しいかな、、、、と思ったタイミングで今回の配信があったので、ちょっと申し訳ないと思いつつ、映像での観劇となりました。

ストーリーの奇抜さと最後のブラックな感じは相変わらず。クドカン脚本、河原さん演出というコンビは、どんなふうに仕上げてくれるのか?という楽しみがあります。今回は、連続殺人事件の容疑者である女性を巡って、その殺人に関する真実に迫ろうとするジャーナリストと、そのジャーナリストのドキュメンタリー映画の撮影に手を貸す売れない俳優三人組という設定です。ジャーナリストがクドカン、そして容疑者である女性が池谷のぶえさん。この池谷のぶえさんが圧巻。もう彼女が主役だよね?というくらいの活躍ぶり。男性が女性を騙して、結婚詐欺とかあったとき、「なんでこんな女性に貢いだのか?」みたいな人がいますが、そういう雰囲気をそのまま演じてくれている。女性が持つ魔性の魅力みたいなものが、オーバーな演技で笑いを混ぜつつ、演じられているのを見て、池谷のぶえさんの凄さを実感しました。山本美月さんはクドカンの奥さん、だんだん容疑者である女性に感化されていくのと同時に、それが演じる中で池谷のぶえさんと役が混ざることで、ボーダーレスになっていく印象を受けます。

ストーリーとしては、最後の怖さがどのくらいじわっとくるか?だと思いますが、個人的にはちょっと拍子抜けというか、もう少しじわじわあっても良かったかなと。むしろ池谷のぶえさんがお金を得るために見せる冷静さのほうが数段怖さをにじませていたと思います。こういうときにスパッと切れ味の鋭さを出せる演技って、役者だなあと。

昔、観た「噂の男」という舞台が、それはもう怖さ満載で、橋本じゅんさんがめちゃくちゃ怖いんですが、ああいう狂気のような怖さが最後に3人からスパッと出る部分に集約されているでしょうね。個人的にはもっとわーっときても良かったなあと。

あとはこれは劇場で見るほうがよい作品なんだと思いました。
先日の「大地」の千穐楽を配信で見たときもそうでしたが、全体を俯瞰できる視点と、配役に集中する視点の使い分けが、今回の配信だとどうしても主要な動きやストーリー展開につながる部分に、カメラワークが動くことになります。先日の「大地」もそうですが、俯瞰的に見たときにカメラの枠以外での動きとかが視界に入っていると、登場人物の心情などを理解するのに大事な要素ってあることが多い。
このあたりは難しくて、演劇という表現の特性でもあるので。
特に今回は芸達者三人がどんなことをしていたか?河原さんの演出がどうだったのか?などが個人的に気になったこともあって、もどかしい気分でもあります。

ネタバレですが、最後にドキュメンタリー映像が取れたから、再現映像の部分は必要ない、3人の役割は終了というか、利用しただけというくだりから、一気にエンディングに繋がります。このあたりまでの伏線として、完成させよう!みたいな流れのときに、3人の心情が完全に演じるプロとしての部分なのか、それとも全貌を暴くための協力なのか?このあたりのバランスが、どうなのかなあ、、、とか思っていました。セリフの中のニュアンスからすると、作品を完成させたいというプロ意識という意識に思えます。だとすると、もっとラストに感情の爆発というか、落差があっても良かったのかな。それともこの三人だから、こういう演出ということかもしれませんね。

受け止め方をこうやって振り返ると、やはりもう一回観て、感じた部分を振り返りたい作品でもあります。

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