緊急事態宣言27日目-お片付け実況中継(2020/5/5)

「はい、始まりましたお片付け実況中継。今日もぴこら邸2階ぴこら自室よりお送りしております。わたくしアナウンサーの甘木でございます」

「解説はわたくし、ヒマラヤでございます。宜しくお願いいたします」

「さてヒマラヤ解説員。このところの騒動でゴールデンウィークがおうち限定ロングバケーションと成り果てまして、あの片付けが苦手なぴこらもようよう動き出している今日この頃ですが、本日はどのような戦略で取り組むと思われますか?」

「そうですね、只今時間が午前11時30分を回っております。この後午後3時より海中考古学のyoutube授業を傍聴希望とのことですので、その前に2時間は昼寝をすることを鑑みますと、さほど大規模な箇所には手を付けないかと考えられますが…」

「おおっと御覧ください!ぴこら、廊下奥の物置を開けました!ここに詰まっているのは大量の旅行用品、大量のリュック、そして莫大な量のトートバッグ!!まさかこの伏魔殿に手を付けてしまうのかぴこら!!」

「いや、あそこは幾らなんでも…恐らく手をつけるにしても一部分かと…」

「ああっとぴこら、なんと仕舞っているものを手当たり次第に彼女のリビングに運んでいる!!既にリビングは足の踏みどころもない!!もうこれは後戻りができないぴこら!!どう収拾をつけるのか…!?」

「…愚かなことを…」

「さて全ての収納物を運び終えたぴこら、まずスマホを弄り始めました」

「黄金の最悪のパターンですね」

「その後、一向にスマホから手を離す様子がありません」

「ツイッターでなにやら気に入ったトピックを見つけたようです。
…いや、あの表情を見るにそうではありませんね。
どうやら彼女のポリシーに反する記述であったようです。
凄まじい勢いでなにやらフリック入力している体ですが、あいにく彼女は一部の文字しかフリックできず、やたらと指の動きが激しいため勢いがあるように見えるだけです」

「あ、今顔を顰めてスマホを投げ出しましたね。
これはどういうことでしょうかヒマラヤさん」

「結局は書かないことにしたのでしょう。彼女にすれば珍しく非常に懸命です。
SNS盛んななりし今、何を書くのかよりも何を書かないのかが重要な場合も往々にしてありますから」

「なるほど。
とまれ、その自制心のようなものが幸いし、ぴこらは再び片付け作業に入ったようであります。
…おおっと、何かを並べたのち天を仰ぎ、なにかぶつぶつ言いつつ結局は全てを集め、ポリ袋に収納したようです」

「ああ、あれは旅行用枕ですね。膨らますタイプ、折りたたむタイプ、形が自由自在に変えられるタイプ。
全部で5種、いや6種あるようですが、結局取捨選択できず全てを仕舞い込みましたね。
これは同じタイプのものがだぶっていれば潔く捨てられるのですが、なまじ色々なものを購入しているが故に一長一短が判断できず、そのまま残してしまうパターンですね」

「しかしぴこらは何はなくとも旅行には多々赴いているので、どの枕が一番快適かくらいは分かっているのでは?」

「あれは不眠症ゆえ、飛行機では殆ど眠れないので枕の優劣などわからないのです。
また寝るときはとことん寝ますが、その時は枕があろうがなかろうが爆睡しますのでどのみち同じことなのです」

「それではそもそも彼女には枕など要らないのでは…?」

「…えー、整理が次のアイテムに移ったようです。甘木さん引き続き実況お願いします」

「あっはい失礼いたしました。次なるアイテムはスリッパで…ってまたこれも数が多いですねヒマラヤさん」

「これは仕方のない部分もあって、ぴこら家では『泊まったホテルに置いてある使い捨てスリッパは持って帰れ』という家訓があるので必然的に溜まっていってしまうのです」

「それにしては店買いの折りたたみスリッパも幾つかあるようですが…?」

「…えー、次に移りましょう。次は所謂旅行お役立ちグッズです」

「いやそういう雑なカテゴリの括りしちゃうんですね。というか今までご紹介したもの全て旅行お役立ちグッズのような気がするんですが…
まあいいや。例えばどんなものがあるのでしょう?」

「スーツケース用秤、コイン入れ付きリストバンド、斜めがけスマホ入れ、洗濯ロープと折りたたみハンガー、折りたたみ洗面器などです」

「確かにカテゴリー分けしにくいラインナップではありますね」

「しかもここにカテゴライズされているアイテムの多くにつきましては、万が一の際にコロナウイルスに罹患して病院やホテルに隔離された際に持っていけるよう既に荷造r」

「あー今回はそちらの話はご遠慮願うことと致しまして、他にもスーツケースに引っ掛けて衣服を持ち歩くことができるロープ、とか謎の30cmカラビナとかがありますね。
てかなんですこの30cmカラビナ。でかすぎて見ているだけで笑えてくるのですが」

「ロープは事実仰るとおりの用法で役に立つものです。問題はぴこらがスーツケースに衣服を引っ掛けて運ばねばならないというシチュエーションが皆無であったということだけで、事実今まで一度も使ったことがないとのことです。
30cmカラビナにつきましては、どうやらツイッターで大きなカラビナが役に立つ、という情報を仕入れたぴこらが早速ネットで手に入れたらしいのですが、届いた頃にはそのツイッターの内容を忘れ、つまりは何に役立つのかも忘れそっと放置しているそうです」

「…」

「でも、30cmのカラビナは仰るとおり見ているだけで笑えるので、元はとったと思っているとのことです」

「…そうですか。最早突っ込む気力も消え失せました。
 …ってぴこら、今何をしているのですか?」

「大きな付箋とボールペンを持ってきましたね。何をする気なのか」

「おおっと付箋に『旅行用枕』とかと書き始めた!しかしこれをどうやって収納場所の透明ポリ袋に貼るのか?」

「内側に、外から見えるように貼りましたね」

「なるほど。確かにこの旅行枕が入ったポリ袋はごちゃごちゃしていて一見何が入っているか解りづらいですからね。少なくともこれで中身が分からず、一から全て引っくり返すという旅行前のお馴染みの儀式を執り行わずにすみますね。
…ってええっ、ぴこら、まさか夥しい収納済みポリ袋にいちいち全て付箋を貼ろうとしている…?
既に綺麗に収納している袋もあるのに…」

「整合性が取れないそうです」

「…整合性?」

「つまり、同時期に収納した物品は全て同じスタイルで収納されていなくてはならないという掟です」

「そんな掟いつからありました??何時間何分何秒地球が何回回ったとき?」

「まあ小学生時分にタイムスリップせず落ち着いてください。勿論ぴこらの謎ルールです」

「謎ルール」

「謎とはいえ、彼女がそのルールを破ることは滅多にありません。
例えポリ袋の外から見て一目で分かるアイテムであっても、彼女は付箋を貼ることをやめないでしょう」

「例えば?」

「そうですね。例えば謎の汁に塗れた巨大テディベアとか」

「なるほど。それでは次にいきましょう」

(いやそれAKIRAやん、という突っ込みは敢えてせずに次に進む甘木アナ)

(昨日初めて(そう、初めて!)AKIRA見たから突っ込んで欲しいのに突っ込んでもらえず、何こいつひょっとしてAKIRA知らないの?もぐり?と昨日の昨日まで何も知らなかった自分の事は棚に上げてもやもやしながら次に進むヒマラヤ解説員)

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「はい皆さんお待たせいたしました。ぴこらはどうやら、自身の持ち物のうち最多といっても過言ではないリュックの片付けに取り掛かったようです。
…てかこの人、一体幾つリュック持ってるんですかね?」

「それは聞かぬが花というものです。
さて、ぴこらはどうやら手持ちのリュックを使用頻度により第一集団〜第四集団にカテゴライズしていますね」

「いや第四集団のやつとか普通に処分すればよくね?」

「謎ルールです」

「また謎ルール」

「とまれ」

「とまれじゃない」

「いやまあ話の便宜上とまれということに致しまして、カテコライズを終えたぴこらは器用に袋詰した各集団を重ね、綺麗な地層にしております。
勿論最下段に配置された第四集団などは今後日の目を見ることがあるのか甚だ疑問ではありますが、それはさておき収納場所に関しましては非常に見栄えがよくなり、加え使用頻度が高い、つまり第一集団に属するリュックの収納状況に於きましては主に取り出しやすさといった機能面につき飛躍的な向上が認められます」

「いや待ってください。第二集団以下の収納状況を詳しく教えて下さいよ。
あと、この場合そもそもすべきは収納方法の向上ではなく収納対象、つまり所有物を吟味し取捨選択することd」

「次はリュック以外のバッグの整理整頓術です!どんみしっ!」

「いや、無視しないで。あといきなり続き物アニメ風にしないで」

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「いやあ、驚きましたね」

「驚きましたでしょ?」

「あの、バッグが捨てられないことで有名なぴこらが」

「あのぴこらが」

「バッグを」

「捨てたぁー」

「懐かしのウルルン滞在記の下條アトムみたいなフリよしてください」

「いやだってあなたもそのつもりでひっぱったんでしょ、それ」

「とまれ」

「とまれじゃないってば」

「捨てたんですよ、バッグを。あの捨てられないぴこらが。しかも2つも」

「それは分かります。まさしく天変地異ですね。
…けれど、何故捨てるのであればゴミ袋ではなく部屋の片隅に置いておくのです?」

「それはもうじき分かりますよ」

トントントン

「おー、階下から上がってきた人物、誰かと思えばぴこらの母親ではないですか」

「母親ですねえ。まあこの家で上がってくるのは彼女しかいないのですが」

「おっと母親、なにやらバッグを吟味し始めました。そして何かぴこらに尋ねていますが…?」

「このバッグは捨てるのか、いつ買ったものなのか、何故捨てるのか、そして幾らだったのかなどを聞いていますね」

「公費で購入した資産を処分する場合の申請書並みの詳しさですね」

「特に重要な質問は最後の金額についてです。この母親は大阪のオカンという人種には珍しく、純粋に金額で物の価値を決めるのです。
…どうやらぴこらは記憶の3割増しの金額を伝えたようですね」

「おおっと母親、バッグを2つとも抱えて立ち去っていく!」

「まさにこの母にしてこの子あり。母親もぴこら同様溜め込み主義ですからねえ」

「いやしかしこれではモノの在り処が2階から1階に移っただけで、家単位のモノの全体量は変わらないように思うのですが…」

「さて長らく実況して参りましたぴこらのお片付け、本人のやりきった感溢れる表情と眠気に襲われている様子から見てそろそろ終了のようです。
本日は長い間お付き合い頂き本当にありがとうございました。
解説は私、ヒマラヤでした」

「いや、アナウンサー差し置いて勝手に締めないで」

※何故アナウンサーが甘木で解説員がヒマラヤなのかは、内田百閒ファンのあなたであれば分かるはずです。
※因みにここで何故内田百閒を出したのかというと、ふと思いついただけで特に意味はありません。

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