ミュージカル「SIX」の「Get Down」を訳してみた(試訳:ご意見ご感想叱咤お待ちしています)

お次もHous of Holbeinに続きアンナ・オブ・クレーブスのパート。
アンナさん超男前です。
そして歌詞の訳…というよりも解説の訳が大変面倒くさかったです。

[ANNA OF CLEVES]
Sittin’ here all alone
On a throne
In a palace that I happen to own
Bring me some pheasant
Keep it on the bone

[アンナ・オブ・クレーブス]
たった一人でここに座ってる※1
玉座の上に
私が所有することになった宮殿の中で※2
何羽かキジを持ってきて※3
骨付きでね※4

※1 1540年のヘンリーとアンナの婚姻取り消し(離婚)以降、アンナは一度も再婚することはなかった。

※2 (解説サイトより)ヘンリーと離婚してからの居住場所として、アンナは2軒の家を受け取り、また彼女の社会的地位をより高める一助として複数のマナーハウスを借りることが許されたが、彼女はその賃料を自身の持ち金で支払った。
それらはヒーバー城やリッチモンドパレス、東サセックスにあるルイスのアンナ・オブ・クレーブスの家を含む。

※3(解説サイトより・その1)キジはアジア原産の鳥で、性別によって個体の形質が異なることが特徴である。つまり、同種の2つの性別は、異なる性器を有することに加え、他にも異なる特性を有している。このことは、ドイツ人であるアンナとヘンリーとの結婚と似ているかもしれない。死んでアンナに食べられたキジは、彼らの結婚の「死」を、そしてこの離婚からアンナが得た数々の利益を象徴しているのかもしれない。
(訳者より)ちょっと穿ちすぎですかねえ。まあこういう解釈がもてはやされるのは分かりますが。

(解説サイトより・その2)キジはイギリスの田舎ではよく見られる鳥であり、伝統的に裕福な地主に飼われたり狩られたり食べられたりするため、堕落した雰囲気のイメージを醸し出すのに一役買っている。

※4 (解説サイトより)ヘンリーがアンナを嫌いはじめた理由の一つに、彼女が明らかに洗練されていないことにあった。彼女が初めてイギリスにやってきたとき、ヘンリーと彼の友達は、将来の夫たちが変装して未来の妻を驚かせる、というイギリス伝統のお遊びに興ずることにした。真の愛があれば、未来の妻は仮面の下に隠れているのが誰であるかという真実に気づくはずだ、とされていた。
しかしながら、アンナはドイツ人であったのでそんな伝統などには気づかず、仮面をかぶった男の集団に待ち伏せされたとき、キスしようとしてきた男を押しのけた。それは知らない男にキスされようとしたらとるであろう全く以て普通の反応なのに、ヘンリーは怒って彼女が洗練されていないと決めつけた。
(訳者より)ヘンリー、安定のクズっぷりですね。
とまれ、骨付きでキジ持ってこい、が優雅さではなくワイルドな感じを醸し出すというのは理解できる。この曲もワイルドな雰囲気ですし。

Fill my goblet up to the brim
Sippin’ on mead and I spill it on my dress
With the gold lace trim
Not very prim and proper
Can’t make me stop

私のゴブレットを縁まで満たして
ミード(蜂蜜酒)をすすったらドレスにこぼしちゃった※5
金色のレースの縁飾り
潔癖でお固すぎることなんてないわ
私を止めることなんてできないわよ

※5(解説サイトより)当時のドイツのファッションは、他のヨーロッパ諸国の流行とは大きく異なっていた。
ボディス(胴衣)は襟ぐりが深く、レースで縁どりされ、毛皮や絹製のものが多かった。
袖はイギリスのように袖口が広がったトランペットスリーブではなく、腕にフィットしたものだった。
アンナは殆どの肖像画でドイツ風の衣装を身につけている。

I wanna go hunting, any takers?
I’m not fake ‘cause I’ve got acres and acres
Paid for with my own riches
Where my hounds at? Release the bitches
(Woof)
Everyday
Head back for a round of croquet, yeah
‘Cause I’m a player
And tomorrow, I’ll hit replay

私は狩に行きたいの、誰か一緒にどう?
私はまがい物じゃないわ、だって何エーカーもの地所を手に入れたんだから
私自身のお金でね
私の猟犬はどこ?彼女たちを放ちなさい※6
ウーフ!※7
毎日クリケットの試合をするために(狩から)戻ってくる※8
だって私はプレイヤーなんだから※9
そして明日、私はもう一度ヒットを打つ※10

※6(解説サイトから抜粋、個人的意見)単語「bitch(es)」登場。
文脈からは勿論元々の意味「雌犬」なのだけど、まあFワードです。
実はこのショーの楽曲の中でFワードの罵り言葉が無修正で登場するのはこの「Get Down」だけだったりする。
つまり、6人のお妃のうち堂々と罵るのはアンナのみであり、彼女の反抗的であり、ヘンリー曰く「洗練されていない」性質を表している、とされる。

※7 犬の鳴き声、なんだけどこれは他のお妃5人全員のコーラス?である。
つまり彼女たちが猟犬=bitchesというわけ。
Woofは魅力的な女性に対して男性が発する「いいねー」的スラングでもある、とのこと。
あと、ここでのbitchはFワードではなく、あくまで元の意味の「雌犬」として読むべきなんだよ!という念押しでもある、という説もある。

※8 クリケットは1860年代までポピュラーじゃなかったよ、ルネサンス期な当時流行ってたのは「グランドビリヤード」だよ、という解説サイトのツッコミは納得したのだが、さてここでなぜ非常にイギリス的とされるクリケットが登場して、しかもアンナがその選手だ、という歌詞が出てくるのでしょうね。
ドイツ風の服を頑なに着つつも実はイギリスに染まっていた、ということなのか?

※9 前文を受けるともちろんクリケットの選手、なんだけど、解説サイトによるとセックスをおおらかに楽しむ「プレイヤー」であるというダブルミーニングであるらしい。
実際アンナは後段で、結婚生活から解放されて自由に恋愛を楽しめるのはいいことだ、なんてニュアンスのことを言っている。

※10 ここはワンチャンある、ということなのかもしれないけどよく分からず。
解説サイトの解説もどうもしっくりこなかったので割愛。

You, you said that I tricked ya (tricked ya)
‘Cause I, I didn’t look like my profile picture
Too, too bad I don’t agree
So I’m gonna hang it up for everyone to see
And you can’t stop me ‘cause

あなたは私が騙したなんて言うのね
私は自分の肖像画に似てなかったからといって
私は認めないわ
だから、私はみんなに見えるようにこの絵を掲げ持ってやる
そうしたからといって、あなたは私を止められないわよ

I’m the queen of the castle
Get down, you dirty rascal
Get down
Get down
Get down you dirty rascal
Get down
Get down
‘Cause I’m the queen of the castle

私はお城の女王様※11
楽しもうぜ※12、汚い悪党め※13
楽しもうぜ
楽しもうぜ
楽しもうぜ、汚い悪党め※
楽しもうぜ
楽しもうぜ
だって、私はお城の女王様なんだから

※11 " I’m the king of the castle"という童謡から。

I’m the king of the castle,
And you’re the dirty rascal!
僕はお城の王様
そして君は汚い悪党!

ゲームで一番高い得点を取った子供が他の子たちに向かって歌う歌、らしい。
この歌の歴史は古く、オリジナルは古代ローマ期の詩人・ホラティウスが書いたものとされる。
(恐らくそこにルーツを持つバージョンで)同じくらい有名なのは16世紀フランスで書かれたもの。
ここでは現代英語のバージョンを用いている。

※12 get downは、飼い主が興奮して誰かに飛びつきそうになっている犬に向かって落ち着け、と諭すコマンドでもある。

※13 ここではヘンリー、そしてその取り巻きの「男ども」を「dirty rascal」と揶揄し、犬のコマンドで制しているようにもとれる。
また、先ほどの歌詞に出てきた「猟犬」のイメージとシンクロしているようにも思われる。
更に、get downには「(パーティなどを)楽しみましょう」という意味もある。

When I get bored
I go to court
Pull up outside in my carriage
Don’t got no marriage
So I have a little flirt with the footman
As he takes my fur
As you were

私は退屈したら
宮廷に行くの※14
私の馬車の前で止まって
夫婦関係(カップル)でなければ(宮殿に入ることは)だめだって※15
それで、私は従者とちょっとした浮気をした
彼は私の毛皮を脱がせると※16
(私は一言)「なおれ!」(と命ずる)※17

※14 ヘンリーとの離婚後、アンナは「王の妹」という称号を得て宮廷に出入りするようになった。
王の子供たちとも親しくなり、メアリー1世(ブラッディメアリー)の戴冠式にも出席したという。

※15 ごめんなさいここ全然分かりません。超絶意訳です。だれか助けて。

※16 毛皮なのが金持ち、そしてドイツ流。

※17 例え従者相手であろうとも、女王がこのような軍隊言葉をつかうことはまあないので、ここで敢えてこの命令形を使うことでアンナの力強さを印象付けている、らしい。

Making my way to the dance floor
Some boys make an advance
I ignore them
‘Cause my jam comes on the lute
Lookin’ cute
Das ist gut

ダンスフロアにご入場
何人かの男の子は私にモーションをかけてくる
私は彼らを無視する
だって私のジャムはリュートの調べにのってやってくる
かわいいじゃない
チョーステキ(ドイツ語)

All eyes on me
No criticism
I look more rad than Lutheranism

みんなの注目が私に集まる
批判はなしよ
私はルター派よりいかしてる※18

※18 radicalのスラング的用法(ヤバい、最高など)と本来の意味(急進的な、など)のダブルミーニング。
トーマス・クロムウェルがヘンリーとアンの結婚をお膳立てした理由の一つに、アンの兄であるクリーヴスウィリアム・クリーヴスがルター派だったことがあるのだそうな。そりゃ「急進的な」プロテスタントですものね。

Dance so hard that I’m causin’ a sensation
Okay ladies, let’s get in reformation

私がセンセーションを巻き起こしているから、ダンスはすっごくハード
さあ女性のみんな、「改革」しましょうよ※19

※19 ビヨンセのヒット曲「Formation」から。

Okay, ladies, now let’s get in formation, ‘cause I slay
Prove to me you got some coordination, 'cause I slay

さあ女性のみんな、配置について 私はヤバいから
なにかできるってこと証明してみせて 私はヤバいから

また、勿論「改革」("reformation")が宗教改革を示唆していることも自明。

You, you said that I tricked ya
‘Cause I, I didn’t look like my profile picture
Too, too bad I don’t agree
So I’m gonna hang it up for everyone to see
And you can’t stop me ‘cause

あなたは私が騙したなんて言うのね
私は自分の肖像画に似てなかったからといって
私は認めないわ
だから、私はみんなに見えるようにこの絵を掲げ持ってやる
そうしたからといって、あなたは私を止められないわよ

I’m the queen of the castle
Get down, you dirty rascal
Get down
Get down (you dirty rascal)
Get down
Get down
‘Cause I’m the queen of the castle

私はお城の女王様
楽しもうぜ、汚い悪党め
楽しもうぜ
楽しもうぜ
楽しもうぜ、汚い悪党め
楽しもうぜ
楽しもうぜ
だって、私はお城の女王様なんだから

Now I ain’t sayin’ I’m a gold digger※
But check my prenup, and go figure
Got gold chains
Symbolic of my faith to the higher power
In the fast lane
My horses can trot up to twelve miles an hour
Let me explain
I’m a Wienerschnitzel, not an English flower
No one tells me I need a rich man
Doin’ my thing in my palace in Richmond

私は自分のこと、金目当ての女だって言ってるわけじゃない※20
私の婚前契約書を確認しなさいよ 何言いたいんだかさっぱりわからない
金の鎖を手に入れた
いと高き力に対する私の信仰の象徴
追い越し車線では
私の馬たちは時速12マイルで走ることができるのよ

※20カニエ・ウェストの歌「gold digger」より。
(She give me money) Now, I ain’t sayin' she a gold digger
(When I’m in need) But she ain’t messin' with no broke n*ggas

(彼女は金くれるんだ)
彼女を金目当ての女だって言ってるわけじゃない
(ボクがピンチのときは)
でも彼女は金欠のヤツは相手にしない

アンナは「金目当てではなかった」とは言っているが、ヘンリーとの離婚で結果経済的に潤ったのは事実である。
その後の十字架やら馬やらへの言及も成金くさい…か?

Let me explain
I’m a Wienerschnitzel, not an English flower
No one tells me I need a rich man
Doin’ my thing in my palace in Richmond

説明させて
私はウインナー風カツレツ(シュニッツェル)なの、英国の可憐なお花なんかじゃない※21
だれも私がお金持ちの男を必要としてる、なんて忠告しないでしょ
リッチモンド※22にある私の宮殿で好き勝手やってやる

※21 ここ、解説サイトが大間違いしてます。
ウインナーシュニッツェルは!ホットドックでは!ない!
まあさておき、ここではアンナは自分はイギリスのチューダーローズなどではなく、むしろドイツ(系)のがっつりカツレツなのだと表明している訳ですね。

※22 (解説サイト訳出)ヘンリーは、1540年に離婚時の解決金的資産としてアンナにリッチモンド宮殿を与えた。以前はキャサリンオブアラゴンの娘メアリーの主要な住居で、その後はアンブーリンの娘、つまりエリザベス1世のお気に入りの住居となった。彼女は1603年3月24日にこの宮殿で亡くなっている。

You, you said that I tricked ya (tricked ya)
‘Cause I (I), I didn’t look like my profile picture (no no)
Too, too bad I don’t agree (too bad I don’t agree)
So I’m gonna hang it up (hang it up, hang it up) for everyone to see
And you can’t stop, you can’t stop me ‘cause

あなたは私が騙したなんて言うのね
私は自分の肖像画に似てなかったからといって
私は認めないわ
だから、私はみんなに見えるようにこの絵を掲げ持ってやる
そうしたからといって、あなたは私を止められないわよ

I’m the queen of the castle
Get down, you dirty rascal
Get down (yeah, c’mon, ha!)
Get down (get down with me)
Get down you dirty rascal
Get down (it’s Anna of Cleves)
(Aha-ha-ha, get)
Get down (ow!)
‘Cause I’m the queen of the castle

私はお城の女王様なのよ
せいぜい楽しみな、汚い悪党め

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