TRPGで想定外の行動をするプレイヤーをどう相手にするか
こんにちは、アノマロです。
いつもたくさんの再生とスキをありがとうございます。
今回は「想定外の行動をするプレイヤーをどう相手にするか」というテーマで記事を書きたいと思います。
以前の記事で「シナリオの想定」に関するお話をしましたが、そこで、シナリオの想定に従いたいプレイヤーと、自分でどう行動するかを決めたいプレイヤーがいるという考察をしました。
もしあなたがシナリオの想定の範囲内で展開を進めたいゲームマスター(GM)で、偶然一緒になったプレイヤーが自分でどう行動するか決めるタイプだった場合、あなたはとても苦労するでしょう。
例えばです。
あるシナリオで自殺事件の調査をすることになり、自殺者の手記にとある男の名前が頻繁に出てきた、という導入があったとします。シナリオの想定ではすぐにその男のもとに向かい、そこで序盤の重要なイベントが起こることになっていました。
あなたはある程度プレイヤーがセリフの掛け合いをした後を見計らって「では次はその男の家に行けます」と言おうとするかもしれません。
ところがある種のプレイヤーは「その男は危険なやつかもしれないので、どんなやつかわかるまで会うのは後回しだ」と言い、頑なに会おうとしないかもしれません。
こんなときどうすればいいでしょう?
もちろん、プレイメンバーごとに事情は違うでしょうから、明確な答えを出すことはできません。しかし、あなたがどう考えるかをお手伝いすることはできるかもしれません。
(なお、この例のプレイヤーが迷惑プレイヤーだとか、GMが力量不足だとか、シナリオが悪いだとか、そういう議論は趣旨と違うのでやめましょう。それぞれの立場がある)
あなたの立場は?
あなたがシナリオに書いてある範囲での展開にしたいGMとし、相手にしているのが自分で行動を考えたい(ので想定を外れがちな)プレイヤーだとします。
まずすべきことはあなたの立場を明確にすることです。
もっとも考えられるのは「そのプレイヤーとはスタイルが合わないので、遊ぶのは今回限りで棲み分けをしよう」という立場と「互いに歩み寄ってスタイルを合わせたい」という立場の2つです。
もちろん、人の数だけその人の立場があるでしょう。もしかしたら「完全に相手のスタイルに合わせたい」というニーズ応答型もあるでしょうし、「俺のスタイルの良さを教えてやる」という俺様型もあるかもしれません。
ですが、まあとりあえずは最初の2つの立場の場合について考えてみましょう。
スタイルの違う相手と棲み分けたい場合
この人のプレイスタイルとは自分は合わない。遊ぶのは今回限りで、棲み分けをしよう。
そう考えるのでしたら、あなたは無理に自分のスタイルを変える必要はありません。あなたはゲームマスターなのですから、基本的にはどのようなスタイルでセッションをするかを決め、プレイヤーに従ってもらうことができます。
普段と違うスタイルで無茶をする必要はありません。もちろんあなたが相手のスタイルでのゲームも“難なく出来る”ならばその限りではありませんが……
自分のGMスタイルを伝える
相手に合わせてもらうことは決まりました。しかし、合わせてもらうには自分のスタイルを明確にし、プレイヤーの「合意」を得る必要があります。
「合意」なきスタイルの押し付けは、セッションの雰囲気を悪くしてしまいます。
しかし、あなたが自分の「出来ること」と「出来ない事」を伝え、自分のスタイルに合わせてほしいと「お願い」をすれば、ほとんどの場合は簡単に「合意」を得ることができます。
プレイヤーがシナリオの想定にない行動をバンバン提案し、軌道修正が難しそうだとあなたが感じた時点で休憩を取りましょう。
そして「すみません……実は普段、シナリオに書いてある選択肢以外の行動はしないスタイルで遊んでいて。自分の能力では想定にない展開にするのは難しいので、今回だけ合わせていただけると助かります!」などと打ち明ければ、よほどのプレイヤーではない限り事情を汲んでくれるはずです。
まれに「なら私がアドリブ考える手助けをしてあげるよ」と言ってくる人もいますが、あなたが今後そういうスタイルのGMをやる気がないのなら「すみません、難しいので……」と言って断りましょう。
相手のスタイルに歩み寄りたい場合
歩み寄りをして、自分もシナリオ想定外のことをするGMに挑戦してみたい。
そう考える場合、あなたは普段とは違うスタイルに挑まなければなりません。
すごく緊張するかもしれませんし、上手くいかないかもしれません。どうするべきでしょうか?
自分の事情を伝える
この場合でも、まずやるべきことは同じです。自分が普段「シナリオにある選択肢の範囲内」で遊んでいるため、想定外の展開を扱うのに慣れていないことを伝えましょう。
プレイヤーがあなたの事情を理解してくれれば、ほとんどの場合はあなたを応援してくれるはずです。
プレイヤーの行動の目的を聞く
プレイヤーの想定外の行動を処理するためのテクニックは、細かいことを挙げればきりがありません。
ですから1つだけ、役に立つことをお伝えします。
プレイヤーが「○○に行きたい」「○○をしたい」と宣言したとき「そうする目的」を聞くのです。
例えばプレイヤーが「図書館に行きたい」と宣言したとき、シナリオでそこに情報が設定されていなかったなら「どういう情報が欲しいですか?」と聞いてみましょう。
あるプレイヤーは「過去に似たような事件があったかどうか調べたい」と答えるかもしれません。
シナリオと照らし合わせて、そういう情報があるなら(たとえ別の場所で出るものでも)出してあげればいいでしょう。無いなら単に「数時間かけて調べましたが、そういった情報は見つかりませんでした」と伝えます。
慣れてくれば、シナリオの背景から当然あると考えられる情報や場所、NPCなどを即興で作ることができるようになるかもしれませんが、ひとまずは上記のように出来れば上出来です。
プレイヤーと展開の相談をする
想定外の行動を許容したことで、シナリオの展開が大きく変わってしまい、出すべき情報が出せなかったり起こすべきイベントが起こせなかったりすることがあります。
慣れていなければその後のうまいアドリブ展開が思いつかないことが多いでしょう。
そんなときは、プレイヤーに相談をしましょう。
「本当はシナリオの想定だと、あの場面で不審者を追いかけて、そのおかげであのNPCが生きていてこういうイベントが起きるはずだったんです。そのせいでとある情報が渡せなくて困っているんです」
例えばですが、こんなふうにGMに相談されれば、プレイヤーが一緒に解決策を考えてくれる可能性が高いです。
「ではそのNPCのスマホに日記として渡す情報が入っていたことにしたらどうですか? イベントの様子も死ぬ間際にスマホで撮ったとか?」
即席の障害を使ってはいけない
これはわたしの個人的な考えなのですが、即席の障害でPCの動きをコントロールしようとするのは極力やめた方がいいと思います。
即席の障害とは、例えば
・プレイヤーが扉を破壊しようとしたとき、まだその部屋に入ってほしくないのでとっさに「扉の防護点は100です」などと言ってしまう
・その場から逃げることが前提のNPCをプレイヤーが追いかけようとしたので「ちょうど赤信号になってしまいました」などと言ってしまう
など、そういうものです。
これはあなたがやりたいスタイルがなんであれ、いい結果にはならないと思います。
なぜかというと、障害を配置すればプレイヤーは「その障害を排除すれば自分のやりたいことが達成できる」と思ってしまうからです。
「防護点100の扉」の場合、扉の横の壁を破壊するだの、地面を掘るだの、高熱で蝶番を溶かすだの、プレイヤーありとあらゆることを考えます。きりがありません。
「ちょうど赤信号になってしまいました」の場合、プレイヤーは〈回避〉スキルで車を避けながら追えませんか、などと食い下がってきます。
もし、最終的には何をやっても目的が達成できないとプレイヤーが悟った場合、結構な不満になります。ロールに成功したのに結局逃げられた、なんてことになったらプレイヤーは多分キレます。
これはプレイヤーが空気を読めないわけではありません。スタイルが違うので、言葉で「この扉の先はもっと後で見てほしい」「ここは逃げさせてほしい」と伝えなければわからないのです。
(願わくは、この記事を引用して「GM vs プレイヤー どっちが悪い論争」をしないでいただけると助かります。)
障害を配置するなら、それを突破されてもいいというつもりで配置するしかありません。そうでなければ初めから「この場では選択肢としてこれとこれができ、その他はできません」と言うしかありません。
プレイヤー間のスタイルの違いも考慮しよう
もしあなたに余裕があるならば、あなたとプレイヤー1人のスタイルの違いだけでなく、プレイヤー同士のスタイルの違いにも気を遣ってあげたいところです。
ただ、プレイヤー同士でスタイルのすり合わせをするのはプレイヤーの責任でもありますから、あまりGMがしょい込み過ぎるのも考え物です。
機会があればプレイヤー同士のシナリオの想定に関するスタイルの違いがあった場合についても記事にしたいと思います。
結論:無理なく自分の気持ちに素直に
この記事で最も言いたかったことは、自分の立場を明確にすることの重要性です。
自分と相手のスタイルが違う場合、自分のスタイルでこのセッションを乗り切って以降は棲み分けをするのか、相手のスタイルにある程度合わせていくのか、あるいは別の立場なのか。それを明らかにすれば、自分がどうすべきか考えやすくなると思います。
合わない相手と棲み分けをするのか、それとも互いに歩み寄るのかは、どちらが正しいとはいえません。
普段の自分と違うことをするのは体力がいりますし、無理なく自分の気持ちに素直に立場を考えていただけたらと思います。
すごく偉そうに語っていますが、自分も自分の立場があいまいですれ違いを起こしたことは今まで何度もありました。
自分のことを考えるのは難しいです。でも考えた方がそうしないよりうまくいくことが多いのは確かです。
それでは、良き卓ライフを。
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