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高田馬場駅 早稲田まで馬場歩き | そと

西の田舎から東京に来て、4回目の春を迎える。
満員電車にのって通学するのは嫌だろうと気がついたら母が決めていた、大学から徒歩圏内(それでも田舎育ちにしては歩く方)の物件に住み大学生活を送っている。

東京に来て思うことは、東京の人たちはよく歩くということだ。
地元に住んでいた頃、何もかもが遠く、大人たちは何の移動も車だった。コンビニにも車で行った。
なのでテレビでよく耳にした「健康のため一駅歩いて帰る」は、東京の人のための台詞なんだとこちらへ来てから肌で理解した。

こちらの生活だけの基準が他にも多くあることを日々実感する。

大学までゆく道に神田川がある。
入学式の日、神田川沿いに咲く桜を見ながら父と歩いたことを何度も思い出す。
都電荒川線に乗って、車窓から眺める景色も春の喜びの一つだ。

高田馬場は山手線の左上にある、新宿と池袋に挟まれた学生街だ。
山手線以外に、地下鉄東西線と西武新宿線が通っている。
テレビや雑誌では駅前のBIGBOXがよく映される。
意外とオフィスもあるけれど、訪れたことがない人も多いのではないか。
新宿区なのに(?)無印良品がないことに私は4年間ぐちぐち文句を言い続けている。

多くの早稲田生は、高田馬場駅~早稲田大学間を歩いて移動する。(馬場歩きという)
地下鉄代をケチったり、帰らなきゃだけどまだ話し足りない、どうせ大学から馬場に飲みに行くんだったら歩きながら話そうよ、という時によく歩く。大体、1.5キロくらい。
早稲田通りのお店は、古くからあるお店と入れ替わりが激しいテナントが混在する。
あるときはタピオカ屋が乱立し、朽ちていった。
大学の近くまで行くと、多くの古本屋がある。赤本しか置いていない古本屋も見かけたことがある。かなり古い料理や旅行の本が見つかるので重宝している。

高田馬場~早稲田の個人的に大きな問題はよい珈琲屋とパン屋が(ほぼ)ないことだ。
最近は新しくパン屋ができたので、街からいなくなってしまわないようにと祈りながら通っている。食パンがおいしい。

大学の昼休みにランチする時によく行くお店はここ。「早稲田軒」。
街中華の適当にほっておいてくれるところと、疲れた脳みそにしみるしょっぱさが大好きだ。チャーハンを頼めばついてくるシンプルなスープも好き。
特にここのお店はたくさんメニューがあるので、悩めるとこがいい。でも
卒業までにあと何回通えるかな、次ぜったい別の頼もう。などと考えながらいつも五目チャーハンを食べている。シュウマイも頼む。たっぷりからしをのせてくれているので嬉しい。店内は撮影禁止なので外からの様子をのせておく。

①早稲田軒

早稲田生のシンボルとも言える油そばについては他でたくさん述べられているので割愛する
他にも正門通りには古くからあるよいお店がたくさんある。みんな学生に優しい。

次にお気に入りは「お食事処 たかはし」だ。早大南門通りにある。
お魚の定食が人気で、いつもお昼時はいっぱいになる。先生がよくいるイメージ。
とにかく量が多くておいしい定食で、午後の授業が(出る気)ないときなど昼寝できるタイミングの時に行く。
牡蠣フライ定食を頼んだとき、大きな牡蠣フライが6個くらいでてきた。それでも1000円以下。でも、そのとき友達が頼んでいた肉豆腐定食を一口もらったらそれが本当に美味しくて、そればかり頼むようになった。バイトの給料が出てホクホクなときは、単品のお刺身も付ける。お弁当だけテイクアウトもできるようで、何人ものひとが受け取りに訪れる。

②たかはし

高田馬場、早稲田の飲食店に共通して言えることだが、女性一人客がたくさんいる。
そしてどのお店も適度な距離感で接してくれる。なんで一人なの?一人でも大丈夫系?
などと話しかけられたことがない。最近は8年生のお兄さんがお酒をつくってくれるバーによく行っている。多様な人間を受け入れる街だと思う。


今学期、すべての授業がオンラインとなり、私たちは大学にいかない。
いつもばかさわぐ人々であふれている駅前ロータリーも、今は閑散としている。
私は、お店と人生を共にしてきた人々が、苦しまないことを切に願う。
私たち学生のモラトリアムを暖かく見守ってくれるこの町が、再び活気を取り戻せることを祈っている。

いま堂々と遊びに来てくださいねとは言えないが、高田馬場に少しでも魅力を感じていただけたら幸いである。わたしは寛容で自由で、のんびりとした高田馬場が好きだ。

■そと (@sotodeochanomo)
早稲田大学4年生。よなよなケーキ職人。


*このエッセイは、住んで暮らす東京の街についてのエッセイ集『あの街』第1号の収録作品です。
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