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続ける事の難しさを知るからこそ

私が写真を撮り続ける事が出来ているのは、幾つかの偶然が重なった末の事だと思っている。

約20年撮り続けてきた。
誰にも見せる事がない。其れは知っていて、それでも撮り続けた

めげた事がないのか。
辞めたいと思った事がないのか。

私にとって写真は“撮り続ける事”に意味があった。

見せる事に、意味を見出せなかった。
私は写真が下手で、誰に見せても何かを言われるわけではなくて。

此れは、私が、此処で“生きている”事を証明できる唯一の方法で、手段だからで。
コンクールにも、個展も興味が無くて。必要を感じなかった。


そんな時、父に言われた。

「個展をしたらどうだ」


この言葉がなければ、私は個展をする事にはならなかった。
そして、この個展が無ければ私は、撮り続けることはできなかったと、言い切れる。


そういう出会いがあった。


父が教えてくれた。
「個展は、会いに行く口実になるんだ」と。
会いたい人に会いに行けない、連絡が取りにくい、距離がある。
ならば個展をすればいい。
それだけで、口実に成るんだ、と。

それは、何度も個展を続けた両親だからこそ、私に教えてくれたことなんじゃないかと思っている。


2008年の個展

2012枚の写真で会場を埋めた。

個展をする時に決めなきゃいけないのがコンセプト。

個展をすると決めた時に、本当に混乱した。何をすればいいのか分からなかった。それぐらい、私には何もなかった。ただ単に、撮っていただけだったから。


でも、夢がなかったわけじゃない。

空を、掴んでみたかった。

だから、手を伸ばせば届く空を創りたくて、壁一面に貼ろうと思った。


個展を開いたのはいいけども、実は裏側でゲボ吐いてました。
毎朝点滴を打って、会場に行ってた。

其れぐらい、自分にとって自分の写真をあれだけ見ると、吐き気がした。
自分の写真は好きではないけど、嫌いではない。
でも、嫌悪感は消えなかったから。あの量は、あの頃の私にとっては、十分キャパオーバーだった。

色んな人が、色んな事を言ってきた。
そこまでは許容範囲だった。

一番キツかったのは、褒められ続ける事だった。


『写真を撮り続けるのね』
『写真が素敵ね』

写真が、写真が、の日々は。
個展が終わった後に、ボディーブローのように効いてきた。

『写真を撮り続けない私には“存在意義がない”』と、思い込んでしまったのだ。

『私自身が認められたのではない』
『写真が認められただけで、私は認められたわけではない。勘違いをするな』


今でも覚えてる。
あの日、ベランダで膝を抱えてしゃがみ込んで。
その思念に囚われた私は、初めて買ってもらったカメラを、自分の手でコンクリートに落とした。

最初で最後。
自分の意思での破壊を想定した落下。


撮り続けない私に、存在意義はない。
生きる意味すら無い、と。

その記憶は。
今も未だ、残っている。


ただし。
忘れられない記憶が、一つある。

確か、学生さんだった記憶がある。
お友達さんに勧められて、来てくれたと、その女性は話してくれた。

そして、一枚の写真の前で、立ち止まった。
静かに、泣いているのを、見てしまった。

その女性は、この写真を撮っていいですかと、確か携帯で写メを撮った記憶がある。

この瞬間に。
私は、全く自信のなかった自分に、小さな何かが生まれた。
凄く、小さい、何かだった。

私の写真で、誰かが泣いてくれた。
たった、一枚の写真だけで。

おこがましいかもしれない。
でも、たった一枚の写真で、人を感動させることは可能な事なのだと、知れた。
其れは、自分の想定外を超えた思考だった。

あの写真は。
どこで撮ったかも未だに覚えてる。どんな感情だったかも覚えてる。

でも、そう云う背景はどうでもよくて。
私は、何処でどう撮ったかが問題じゃ無いんだと、気づかせて貰えた。

あの、涙があったおかげで。
私は、未だ立てていると言っても過言ではない。


正直。
たった一枚で、人をどうにか出来なくても。
何かのきっかけになったり。
それが偶発的なものでもいい。
きっかけになれるような、人間になりたいと思った。


そのお礼を私が、言いたかった。何が返せるか、分からない。


だから、撮り続ける。
そうだ。
いつかの日の為に。
私は、写真を続けてる。


いつか、出会えますように。
その為だけに、撮り続けている。


私が撮り続けるのは、自分の名前を届ける為。
離れた人達にも。
いつか必ず、届けてやるんだと。

続けさせてくれて有難う。
見つけれくれて有難う。

貴女の涙は。
今の私を造る一つに、間違いなくなっています。

お礼をずっとずっと、言いたかった。


有難う、ございます。


いつか、撮り続けるきっかけがあったことも、書けるといいかな。
未だ、心の整理が付かない事も、あるものです(苦笑)

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