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さむいやろ

耳元で、そうハッキリと聞こえました。
黒いクレヨンで書いたような、太く力強く、そして少しざらついた声。

私は眠っていて、誰かと海にいるような朧げな夢を見ていたと思います。

ーさむいやろー

その声が夢の中の人物の声ではないことが夢を見ている自分でもわかって、思わず「え?」と聞き返してそこで目が覚めました。

目を開けるとあたりはまだ暗く、わたしは何故か掛け布団の上で寝ていました。

腰の辺りに猫が丸まっていて、そこだけが温かい。
右隣で寝ている夫はわたしに背を向けて、深く寝入っているようです。

確かに少し肌寒く、このまま朝まで寝ていたら風邪をひいていたかもしれません。

わたしは起こしてくれた誰かにお礼を言って、布団をかぶってまた眠りに落ちました。

あの野太く、麻紐のように少しざらついた声は誰だったんだろう。夫の寝言か、猫のあくびか、はたまた…

お陰様ってこう言う時に使うんだなぁとしみじみ感じました。1人で生きているようで、いろんな人やモノに見守られている。

お陰様で、ありがとうございます。

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