すき家の"シーザーレタス牛丼"について語りたい

現代日本のファストフードの代表といえばそう、牛丼。注文すれば5分以内には提供され、値段は400円未満、たぶん自分で作るより安いし、間違いなく自分で作るよりうまい。
そして何より「どこ行ってもある」。大井町線なんか牛丼屋が無い駅前が見当たらないレベル。吉野家、松屋、すき家と三大チェーンが各地しのぎを削りあっている。

肉を活かした王道の味、ブランド力と歴史の吉野家。
ハンバーグ定食やキムカル丼といった牛めし以外のメニューの充実度、券売機システムや都市部限定のプレミアム牛めしによる地域の物価格差解消などシステム面で先を行く松屋。

そして今回の主役すき家。すき家の特徴といったら、何といっても変わり種牛丼。今や他社も真似しているネギたま牛丼や、陰キャ男性の蔑称と化した三種のチーズ牛丼。米を豆腐サラダに変えた牛丼Light、、、
マグロ丼、うなぎなど松屋に負けず牛丼以外のメニューも強い(個人的にそぼろ丼はコスパ最強でおすすめ)が、牛丼に対するアレンジメニューの数は他社を圧倒している。

すき家は期間限定メニューでお好み焼き牛丼、焼きそば牛丼、シチュー牛丼と通常メニューを凌駕する攻め過ぎた牛丼を提供している。そしてその中でも最も狂気じみた限定牛丼が毎年6月に登場する。

この牛丼との出会いは確か2018年。寮生活で休日はご飯が提供されず自炊できるキッチンもなかった私は近所のすき家に足を運んだ。何を食べようとか考えながら向かっていたはずだった。しかしその名前を見た瞬間、あまりのインパクトに全てを忘れ、気づいたときには目の前に提供されていた。それ以来、毎年6月に私はすき家に足を運んでいる。

それが今回の主役「シーザーレタス牛丼」だ。

読んで字のごとく、牛丼の上にシーザーサラダが乗り、シーザードレッシングがかかっている。茶色一色だった牛丼が、シーザーサラダの緑、黄、白で一気に華やかに。
「カレー×ラーメン」「タコス×米」など料理の斬新なコラボレーションは全国各地で試みられているが、「牛丼×シーザーサラダ」という発想、誰が思いつくだろうか。「ガリガリ君×ナポリタン」くらい誰も思いつかないだろう。
さらに言えば普通の牛丼の上に乗せたらサラダはこぼれてしまうため、カレー用の深皿にシーザーサラダ on 牛丼で提供され正確には牛"丼"ではない。

主菜である牛丼と、副菜であるサラダを混ぜてしまおう。という「令和版ねこまんま」と言わんばかりの、料理の倫理観を根本から破壊し尽くした発想。日本人の食のモラルへの挑戦。錯覚を起こすレベルで不自然な「牛丼」と「シーザー」2単語の並び。もし母親が牛丼を作ったとして私が目の前でシーザーサラダを上に乗せたら、母親は間違いなく激怒し丼で俺を殴るだろう。何を思ってこのメニューに至ったのか私は開発者に問いたい。

さらに言えば2019年にはこのメニューを「すき家の野菜」と銘打っていた。正気の沙汰でない。

とまあここまで散々なことを書いてきたが、牛肉の重さとレタスのシャキシャキ感の対比、つゆの甘さとシーザードレッシング、チーズの酸味のマリアージュ、そこに絡むご飯、どれをとってもその味は唯一無二、新感覚を提供してくれる。
美味しくもあり、「このカオスを私は許していいのだろうか」という気持ちにもなる。あまりの複雑さに、食べる人誰しも衝撃を受けることは間違いない。そして半分を過ぎたあたりからは最早何を食べているのか分からなくなる

今年も6月がやってきた、去年は気づいたら6月が終わっていて食べれなかった。
2021/6/5、13時に用事があったため12時に家を出発したが渋滞と道を間違えた私は、用事の済んだ15時過ぎ、覚悟を胸にすき家に足を運んだ。

今年のシーザーレタス牛丼は「スーパーフードMIX」なるものが、並盛り630円は高いが迷わず注文。

画像1

これが「シーザーレタス牛丼 スーパーフードMIX」。スーパーフードとはケール、くるみ、ナッツとのこと。撮影したものをそのまま載せているが、ケールのビビッドな緑がさらに見た目を華やかにしている。
ケールの量が予想以上に多く、くるみとナッツも食感のアクセントとして非常に強い。いつもの牛、シーザーサラダ、そしてケール、ケール、ケール、ナッツ、ナッツ、、、味の複雑さに大きく拍車をかけている。。。





今年は十分に堪能できた、正直一ヶ月はもう食べなくていい。

倫理的に胸を張って美味しいとは言えないが、心の奥にしまっておきたい、一生忘れない料理、ぜひ一度すき家に足を運び、食べてみて欲しい。

俺もまた来年の6月には、またすき家にいるだろう。もしかしたら来年には無くなってるかもしれないが、まあその時はその時だ。


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