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近所の本屋の話

家の近所の本屋が閉店してしまうらしい。

別に私はその本屋の店主を知っているわけではないし、それどころか私はそこで本を買ったこともない。
そこに関する記憶といえば、自転車や徒歩で通り過ぎたことか、小学生の時に漫画を立ち読みしていて店員のおじさんに注意されたことくらいだ。

ただ、私は少し悲しくなった。
十数年見ていたその本屋の看板も、店の前に出された雑誌棚も、もう見られなくなってしまうのだから。

私が本屋に入った時、レジ近くで店員のおばさんと常連客らしきおじさんが話していた。
「まだ続けられるんじゃないの?」
「2週間前に店主が倒れたでしょ、その時に限界だと思ってね」…

ああ、コロナじゃなくて、店主の高齢からなのか。
前もそんなことが何度かあったけれど、時間が過ぎていくのって、こういうことだよなあ。
気持ちがずっしりと重くなった。

時間が経って何かが変わっていくことを否定したいわけではない。むしろ時間が経つ以上、変化は必然だと思う。
けれど十数年暮らす町の中、ずっと見慣れていた風景の1つが失われてしまうのは、やはり寂しいことだ。

今回訪ねて閉店を知った時はちょうど昼食前で、昼ご飯の誘惑に負けてじっくり買いたい本を選べなかった。
今度またその近所の本屋を訪ねた時は、何か1冊買おうと思う。

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