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2023年の私的GOTY~ゲーム業界の活況と厳しいニュース、闘うことの楽しさを知った一年~

2023年はゲーム業界の活況ぶりに驚き続けた年だった。

4月にバイオハザード4のリメイク作「バイオハザード RE:4」が評判になったかと思えば、5月末には長く待たれていたゼルダの伝説の最新作が発売され、6月には「ストリートファイター6」に続いて「ファイナルファンタジー16」も発売される大作ラッシュ。久しぶりの2Dマリオ「スーパーマリオブラザーズワンダー」のブッ飛んだワンダーに溢れた表現も評判になった。海外に目を向けてみればモータルコンバットの最新作「Mortal Kombat 1」、「Starfield」「バルダーズ・ゲート3」「Marvel’s Spider-Man 2」「Alan Wake2」とこれまた大作が連発する一年となった。

モータルコンバットは残念ながら日本では発売されない。。。

中小規模のタイトルも豊作だった。Tango Gameworks開発「Hi-Fi Rush」が突如発売されたと思えば、探偵・癸生川凌介事件譚シリーズのクリエイターだった石山貴也による「パラノマサイト FILE 23 本所七不思議」がスクエア・エニックスよりリリース。「LIMBO」のゲームデザイナーJeppe Carlsenによる「COCOON」のエレガントな謎解きアドベンチャーの完成度は素晴らしく、同系統のゲームでこれ以上の完成度はそう簡単には実現できないだろう。G-MODEから発売された「OU」の美しいアートと音楽も魅力的だった。

「Hi-Fi Rush」は全編でビートを刻むサウンドデザインが秀逸

国内のアダルトゲーム界隈も大きなタイトルが多く、ゆずソフトの新作「天使☆騒々 RE-BOOT!」が発売され、枕の「サクラノ刻」が何度かの発売延期を経てついに発売。これまた発売延期の常連であった「ユズリハの詩」もついに発売された。「さよならを教えて」でカルト的な人気を誇るCRAFTWORKの新作「Geminism~げむにずむ~」が発売されるという嬉しい驚きもあった。成人向けではないものの、「ONE~輝く季節へ~」のリファイン版「ONE.」がオリジナルスタッフである樋上いたるの原画によって制作されたのも予想外だった。発売が2024年に延期になったものの、逆転裁判ライクなゲーム性で話題になった「桜花裁き」のIRODORIが放つブランド2本目「八剱伝」も期待される。

「Geminism~げむにずむ~」については別途文章を書くかもしれません

活況のゲーム業界ではあるが、一方で大規模なレイオフが欧米ではあったことは悲しい。3Dエロゲーの先駆者であるイリュージョンが解散し、老舗の戯画がアダルトゲームのメーカーとしての事業を完全終了してしまったことも記憶に新しい。

このように色々あった2023年だが、筆者自身が選んだベストテンは以下の通り。

  1. ストリートファイター6

  2. ghostpia

  3. ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・ザ・キングダム

  4. ファミレスを享受せよ

  5. The Cosmic Wheel Sisterhood

  6. 龍が如く7外伝 名を消した男

  7. コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ

  8. ウーマンコミュニケーション

  9. ヒラヒラヒヒル

  10. 崩壊スターレイル

1位の「ストリートファイター6」については前回書いた記事で詳細を書いているため、改めて書くことはしないが、本作のお陰で格闘ゲームの面白さに気づけたことが一番の収穫だった。ドライブゲージが生む駆け引き、リリース一年目で秀逸なゲームバランス、見た目の美しさなど褒めるべき点はいくらでもあるが、観戦するだけでも面白くてプレイするたびに成長を実感できるゲームなんて滅多にない。シーンの盛り上がりも素晴らしい。問答無用の1位だ。

2位の「ghostpia」についてはクリエイターのミタヒツヒトさんを迎えての配信アーカイブを見てほしいが、ノベルゲームの表現を更新するような画作りや表現の拘りはインディーズの時間をかけることが許される状況だからこそ生まれたものだと感じる。後編がいつプレイできるかは不明だが、気長に待つとしよう。

3位の「ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・ザ・キングダム」はウルトラハンドがもたらす無限遊びの可能性とオープンワールドの空間で実現させた開発力に感服した。こんなの出来たら面白いと発想することは重要だが、多くの開発者はリソースや技術力などといった理由で断念せざるを得ない。それを成立させ、なおかつ面白いゲームデザインを施すことができる任天堂の遊びの追求力は凄まじい。

4位の「ファミレスを享受せよ」は「良い感じのアートと音楽+深夜のファミレスのエモさ」といったインディ系のタイトルではありがちにも思える雰囲気ゲーかと思われたが、宇宙規模の途方もない年月の中で生き別れた友人との再会が描かれる物語には雰囲気の良さで終わらない力強さがあった。作者のおいし水氏が影響を受けたとされる「少女歌劇レヴュースタァライト」のTVシリーズの終盤を彷彿とさせる展開も印象的だった。

「ファミレスを享受せよ」は予想外にSFとしての魅力があった

5位の「The Cosmic Wheel Sisterhood」はクィアの人々の連帯を魔女というファンタジックな存在を通して描いているが、コミュニティ内の対立の解決法として選挙をゲームに取り入れたのが面白かった。プレイヤーが創作できるタロットカードによる占いも良いフレーバーとなっており、運命を自分で引き寄せる(ただし、変えられないこともある)感覚が楽しい。

「The Cosmic Wheel Sisterhood」のタロットカード作りは特に分岐に影響しないが良いフレーバー

6位の「龍が如く7外伝 名を消した男」は7の裏側で桐生一馬がどう動いていたのかを描いた中編だが、桐生一馬の物語としては集大成に当たる。これまでの桐生は一人で何でもこなしてしまうスーパーマンの印象だった。それは皆の力で頑張る新主人公春日一番が差別化していた部分でもある。そんな強くてカッコいい桐生が失いたくないものの存在や自分の立場によって迷い、感情的になる様は新鮮だった。ラストの桐生が流す涙にはシリーズに長く付き合っていた人ほど心を揺さぶられるだろう。

桐生ちゃんの旅立ちは感慨深い

7位の「コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ」は続編としての良さが発揮されていた。あのカフェの常連たちはその後どうなったのだろう?元気にやっているだろうか?コーヒートークへの再訪では彼らの時間経過による成長や多様な悩みに触れることになる。どんな時にも温かい飲み物で迎えてくれるコーヒートークならきっと大丈夫。安心できるお店の安心できるゲームだ。

8位の「ウーマンコミュニケーション」は発言の中から卑猥な単語を見つける古のPCゲーム的なスケベ遊びのゲームとして期待されただろうが、後半はその期待をゲームの側が裏切って見せる。ネタバレになるので詳細は伏せるが、このゲームの作者はどのように自分たちの作品が見られているのかをよく分かっている非常にクレバーな作りだ。

バカゲーと侮るなかれ

9位の「ヒラヒラヒヒル」は認知症や統合失調症、ハンセン病などを合わせた症状が見られる架空の病気を描いたゾンビものの亜種。病気と家族や社会との関わりを様々な視点で描けており、ケアする人々に寄り添った優しい視点と同時に厳しい現実も突きつけるテキストはシナリオライターの瀬戸口蓮也らしい真面目で物語に対して誠実であろうとする姿勢が見えてよかった。

10位の「崩壊スターレイル」は「原神」のHoyoVerseが放つRPG。ターン制バトルは日本国内でも減りつつあるが、そこにあえて挑みつつ快適なUIや美しいビジュアルで飽きさせないパワーは流石。宇宙を旅する列車というそのまんま「銀河鉄道999」の設定だが、やはり列車の旅はロマンがある。日本のRPGの良い部分を凝縮したような細かいところまで気の利いた作りを海外のメーカーが実現していることには驚いた。

「崩壊スターレイル」テキストセンスが絶妙

2023年は多くのゲームに触れることができたが、2024年も期待の作品が続く。ベスト10には含めていないが、「グランブルーファンタジーヴァーサスライジング」の完成度の高さに格闘ゲームの勢いを感じている。2024年リリース予定の「鉄拳8」も体験版の印象がかなり良い。個人的には闘うゲームの楽しさと上達することの喜びを知った一年だった。

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