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0516_私の角
私の角は折れたのだろうか。
ちくり、と右足の親指あたり、指の内側が痛い。気のせいかと思ってもう2.3歩進んで歩いてみるが、やはり痛むのだった。仕方がないので立ち止まり、靴を脱いで、痛む指に触れてみる。
赤茶色で小さくて鋭いとても小さな小さな角があった。
カブトムシ?と一瞬思うようなカブトムシの体や長い角、その下にある短い角のようだった。それにしては随分と細い角ではあった。
ゾクリと身震いをした。
なにか虫なのかもしれない。それこそカブトムシ、かもしれない。かもしれないけど、そうではないかもしれない。いずれにしても、何かの生き物であり、その一部分であるかもしれない。そう思うと、急に気色が悪くなる。
私の靴の中に、例えばその本体がいたら?慌てて靴を持ち、履き口を下にして中にあるものを出してみる。が、何もなかった。
何もない。
私はもう一度、手のひらにあるその謎の角を眺めてみる。よく見れば艷やかに光っていた。よくわからないが、まだ若くてきれいなものだった。
そして、私はその角を人差し指と親指でつまみ上げる。
私の、角かもしれないと思う。
角がとれたので、私は確かにここ数日、穏やかだった。それはこの私の角が取れたからかもしれない。
ちくり、と足の指が痛む。
角はなくても、刺さったあとは痛むのだった。
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