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0911_大きな手

【140字小説】
私を見る目がとても優しかったことを覚えている。その日は雨で空は暗かった。夏の終わりの生ぬるい風が吹き、けれどもあの人の大きな手のひらは私の頭の上で大きく優しく温かかった。私は安心した。安心して、さようならを言った。生ぬるい風はいつしか冷たい雨に変わり、私はやっぱり泣いたのだった。

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