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0406_チョコレートクッキー

 wifiが上手く接続されない。
 スマホからキャストしているのに、時々切断されてしまう。やっとゆっくりアニメが見られると思ったのに。

「はい、カフェラテ入れたよ」

 葵が2人分のカップを手に、私の隣に座った。カップを置くと、アニメが再生された。

「あ、直った」

 何が?と言う顔で私を見るので、葵に説明して、画面を見ると、また止まった。

「なんで」
「あぁ、なんか接続うまくいかないときあるよね」
「なんで今なんだろう」

 私はこのアニメにももちろんwifiの接続についてもなんにもこだわりはなかったが、無性にアニメが見られないこの状況が苦しくてとても嫌だった。

「なんで見られないんだろう」

 堰を切ったように私は泣いた。

「なんで今こうなっちゃうんだろう。見たいと思った時になんで見られないんだろう、止まっちゃうんだろう、思い通りならないんだろう」

 葵が隣を立った。けれど私はそのまま続ける。

「なんでしんどいのに、こんな風に気を紛らわせることも、見たいものを見るのも、何もしないことをするのも、私は上手く出来ないんだろう」

 カフェラテのカップには私の涙が落ちて、白い泡にぽっとくぼみが出来る。くぼみは、一つずつ増えてつながり、やがて泡が消えた。薄く白味がかった茶色いコーヒーがでてくる。飲むと苦くて、少ししょっぱい。

「はい、チョコレート」

 目の前に青色のアルミ紙に包まれた丸いチョコレートが出される。私の、好きなチョコレート。

「あと、こっちにはクッキーも」

 そう言って葵はもう一方の手でクッキーをくれた。これも、私の好きなクッキー。

「上手くいかないことはあるよね。なんでって思うし、そういうときって大体うまくいかないことが続いたりする。だからいろんな手を用意しておくといい」

 そう言うと、葵は両手を広げた。
 チョコもクッキーもたくさんあって、どれも私の好きなもの。

「アニメが見られないなら、僕と話をしようよ」

 私はチョコレートを口に入れた。甘くて、少し苦い。
 それは、私の手にもたくさんあって、いつでもいくらでも選べるのだと知った。



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