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0518_思い出ごろり

 畳に転がっていた。
 
 そこにあったブランケットを畳んで枕にして、こう、ゴロン、とした。 少しひんやりとして気持ちがいい。

 視界には全面畳が広がる。
 畳の目の色が薄くなっているところとあまり変わっていないところ、変色しているところ、埃があったり、新品のそれではないことはよく分かった。それで私は、余計に安心して、大きな深呼吸を2度ほどすると、ほどなくして眠ってしまった。

 時間にすると30分ほどだろうか、夢は見なかった。
 けれど、夢のようなものは見た。

 寝ている私に、子供がバスタオルを掛けてくれた。その上から、トントンと私を寝かしつけしてくれていたのだった。寝ているはずの私は、思わず、フフフと笑う。 
 隣か、またその隣だろう近くの部屋で、キャッキャと子供たちが話をしている。時々、ドタドタと騒々しい足音が畳から地面を通じて漏れ伝わっている。
 私はただそれに耳を澄ませながら、目を開けるでもなく、起き上がるでもなく、ただ体を休めるままに眠っていたのだった。

 目が覚めたのは夕方であった。
 なんとまぁ、3時間も昼寝をしていたのである。寝すぎたなぁと思いながらも、周りを見渡すが、それを咎めてくれる人はもう側に誰もいないのだと思い知る。私の頬についた畳跡を笑ってくれる息子も、もう家庭を持つ立派な父親となった。私の寝言を面白がる娘も、何やら夢を叶えて遠く異国の地にいるのだった。
 そして、私の隣で眠っていてくれるあの人は、一足先に逝ってしまった。
 もう慣れたはずの寂しさは、こんなふうに私の日常にちらりと、顔を見せるので、そのたびに私は寂しくなる。でもいつも、それと同じくらいの幸せを思い出させてくれるので、まぁいいかと思うのだった。

 意外と思い出だけでも生きていけるのだなぁと畳の上でもう一度ゴロンとしてみる。少しひんやりとしていて、気持ちが良かった。

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