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0605_いつも時々

 カーテンを開けて眠っていると、朝方、体が勝手に準備を始める。空が明るくなり、チュンチュンとすずめが鳴き、少しずつ、朝を知らせてくれる。陽を浴びて、体が起きてくる。そして、ゆっくりと目を覚ます。そういう朝は、決まって心地が良いのだった。

「おはよう」

 私より少し先に起きたらしい同居人がリビングで珈琲を入れていた。飲むかと聞かれたのでYESと答える。

「朝食は食べる?」
「うん、ありがとう」

 私は顔を洗いながら彼と会話をし、少しして香ばしいパンの焼ける香りを十分に吸い込んだ。食パンだろうか、クロワッサンだろうか。そんなことを思いながら服を着替えて再びリビングへ向かう。
 テーブルの上にはクロワッサンとキウイやチェリーの乗ったプレート、小さな器に入ったヨーグルト、湯気と香りの立つホットコーヒーがある。イスに座り、窓の外を見る。起床から食事へと私を変える。

「いつも、時々外を見るよね」

 彼が言う。自分のカップに珈琲を注ぎながら。

「時々ならいつもじゃないよね。逆もそうだし。でもまぁ、そのとおりだけど」

 私は小さく笑って答えた。

「私、一つずつ意識しないと頭の中が切り替わらないのよ。例えば今だと、起きた私と食事をとる私と、切り替える為に外を見るのね」
「もし切り替えないとどうなるの」
「ボーっと食べる」

 私は答えてそのまま両手のひらをパチンと合わせた。いただきます。

「ボーっと食べるのは起きてすぐだから大体みんなそうでしょう。切り替えなくてもいいのでは」

 カップを自分の前に置き、無意識だろう、彼は珈琲の香りを嗅いでいる。

「そうかもね。でも私は食事は食事でちゃんと楽しみたいの。食べていることを意識したいのよ」

 私は珈琲を手に一口啜る。多分、切り替えができていなければ、私は珈琲の香りを感じることはないだろう。

「食事、いつもありがとう」
「うん、今日も食べよう」

 彼はそう言ってクロワッサンを手にとった。ほろほろとパイ生地の欠片がプレートに落ちていた。

「あなたはいつもいただきます、とは言わないわ」
「ああ、そうだねぇ」

 それきり、彼は特にその理由を言わなかったし、私も特に続けて聞かなかった。代わりに。少しだけ小さく笑った。

 穏やかで大切な朝である。

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