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0222_やもり2

『活き餌のヤモリが最近可愛く思えてきました』

 ネットの検索結果のタイトルを眺めていたら、そんなタイトルの動画があって私はぎょっとした。
 私は、ヤモリを飼っている。活き餌などではなく、それはもう毎日子供のように愛でている(触るとやもりのストレスになるので眺めているだけだが)。話しかけたり、かごの外から指で撫でてみたり、指を動かして、視線を誘導してみたりする。可愛くて仕方ない。
 それを、活き餌とするのか。
 私は驚き、一瞬にして想像しては悲しくなってしまった。あの子が食べられてしまう。それはヘビなのかもしれない。痛いと、もがき苦しむ姿を見せるかもしれない。想像すると泣けてきたし、ゾワワと体に寒気が走る。

 でも、こんなことは普通にあることなのかもしれない。

 私が知らないだけで、そんなの当たり前でしょうと知っている人もいるだろう。例えば同じことを、やもりの活き餌となるコオロギでは思わない、それと同じことだろう。
 そう言うものなのかもしれない。
 私が今時分まで知らなかっただけで、知った瞬間、一瞬にして全身で『知る』だけ。それがたまたま『やもりを食べる生き物がいる』ことだったから、私の全身が反応しただけだろう。
 
 私は、世の中をどれだけ知っていて、どれだけ知らないのだろう。そう考えると怖くもなる。

 せめて知っていることはちゃんと消化して、知らないこともあることを認識しておきたい。そうしてまた、『やもりを食べる生き物』がいることを知ったときと同じように知らないことを知ったとき、静かで動じない私でいたい。

 とにかく今は、私のやもりを愛でていたい。

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