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みどりの窓口で

JRのSuicaと一体の定期券って、
Suica以外のカードで支払う時には
窓口に行く必要があるってご存じでしょうか。
窓口で一旦、磁気定期券を発行してから、
機械でSuicaに同期するシステムです。

横浜駅のみどりの窓口へ行った時のことです。

自動ドアを入るとすぐに、番号札の発行機がありました。
私が取った番号は164番でした。
番号札を取ってからカウンターの表示を見ると、
現在対応しているのは140番代でした。
それでも、稼働している窓口が5つ有ります。
頻繁に、次の番号の呼び出し音が鳴っています。

定期券購入の申請書を書いて、
フロアを見渡すと奥にパイプ椅子が並んでいました。
ちらほらと空席があったので、座って待つことにしました。
席に着くなり、仕事用のスマホを取り出して
メールやSNSをチェックしていました。
一通りチェックを終えて周囲を見渡すと、
先程よりも混雑していて順番待ちで立っている人もいます。

私の隣に座っていた高齢のご夫婦が、
呼び出し音と共に立ち上がってカウンターへ向かいます。
すると、小さめのキャリーバッグを引いた高齢の男性が、
空いた席に座ろうとやって来ました。
男性は通路の奥側の空席の前にキャリーバッグを置いて、
隣の席に座りました。
座席に着くとすぐに、隣の席の前に置いたキャリーバッグの取っ手に下げていた紙袋から、何やら取り出そうとしています。

呼び出し番号は、160番まで進んでいます。
あと数人なら、それほど時間もかからないだろうと私は席を立ち、
壁際で順番を待つことにしました。
私が立った空席には、すぐに高齢の女性が座りました。
キャリーバッグの高齢男性は、紙袋からパンを取り出して一口かじると、
思い出したように立ちあがって自分が立った椅子の上に紙袋を置くと、
食べかけのパンを持ったまま申請書のある場所へ歩いていきました。

私は、壁際に立ってフロアを見渡していました。
20脚は並んでいるパイプ椅子は全てが埋まっています。
食べかけのパンを持って立ち上がった高齢男性が荷物を置いている場所
だけが、誰も座っていません。
荷物の主の高齢男性は、カウンターで何やら職員に声を掛けていました。
しばらくすると、高齢男性は戻ってきて紙袋を膝の上に置いて座り、
落ち着きなくガサゴソと紙袋を込んでいます。

呆れ返って眺めていると、
高齢男性の後ろの席に座る女性と目が合いました。
私より少し年上に見える女性も、同じことを思っているのか、
顔をしかめています。

高齢男性は、また何か思い出したのか、
紙袋を座席に置いて立ち上がりました。
私のすぐ目の前を通り過ぎようとします。

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