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ドッジボールの話

ドッジボールという球技をご存知でしょうか。
今から40年以上前、
私が小学生の頃には体育の授業で頻繁に行われていました。


ある日。
体育の授業でドッジボールになって、
クラスの男女が半分ずつのチームに分かれました。

最初にボールを持つのは、運動が得意な男の子です。
投げられたボールは相手チームの男の子を狙っていましたが、
しっかりキャッチされてしまいました。
キャッチした男の子は、自分を狙った男の子に向かって
ボールを投げますが、これもキャッチされます。

私たち女の子は、何となくコートの端に固まって、
男の子同士の対決を見守っていました。

この対決が何回か続いた後、
相手チームの男の子が固まっている私たちに向かってボールを投げました。
固まっていた女の子の一人にボールが当たって、
その子は外野に出ていきます。
最初に外野を守っていた男の子が、コートに入ってきました。
そのボールを拾った男の子は、
同じように相手チームの女の子の固まりを狙いました。

一人、また一人と、女の子が外野に出ていきます。
コートの中の人数は、だんだん減ってきました。

何度目かに男の子が投げたボールが、私の横にいた女の子に当たりました。
反動で高く上がったボールを、私は咄嗟にキャッチしました。

「あ!セーフだ!命拾い!」

それを見た男の子が声をあげます。
当たったボールが地面に着く前に味方がキャッチすると、当たった人は外野に出なくて良いルールです。

「助かったんだね。ありがとう。」

ボールを当てられた女の子は、嬉しそうにそう言いました。
私は、手にしていたボールをチームの男の子に渡しました。
受け取った男の子は、また相手チームの人数を一人減らしました。

再び、私の近くにいた別の女の子にボールが当たりました。
偶然ですが、私はまた、高く上がったボールをキャッチしました。

「近くにいてくれてありがとう。」

ボールを当てられた女の子が言いました。
チームの男の子にボールを渡すと、また相手チームが一人減りました。
コートの中で逃げてばかりだった私は、
ゲームに参加している実感が湧きました。

結局、このゲームは私たちのチームが勝ちました。
授業時間は、まだ半分ほど残っています。
悔しそうにしていた相手チームの男の子が、
先生にもう1ゲームできるかと聞きました。
先生が頷いて、2ゲーム目が始まるようです。


外野にいた人たちが集まってきて、
男の子たちが最初に外野を守るメンバーを決めています。
私たち女の子は、成り行きを見守りながら固まっています。

その時です。

相手チームの男の子が、私を指さして

「アイツ、残しておくと面倒だから、先に狙おうぜ。」

と、大きな声で言いました。

突然の展開に驚きながらふと見ると、
女の子の固まりは私と離れた場所にありました。
さっきと同じように、みんなと一緒に固まって入れば良いのだと思って
私が近付くと、

「こっち来ないでよ。アンタ、狙われてるんでしょ。」

女の子の一人が言いました。
私はこの言葉に驚愕したことだけは、覚えています。



最近、この出来事を思い出すことが増えました。
コートの中でボールを投げる男の子と、固まって逃げ回る女の子は、
社会の縮図かも知れません。

貴方は、コートの中のどこにいますか?
貴方は、どう行動しますか?


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