エル・フォルテの「正体」

最初に、断っておくと、便所臭い「ゲーセン」で「トランキライザーガン」とか「ルパン三世」とか「クレイジークライマー」を50円でやっていた「ゲーセン第一世代」なので、「テレビゲーム」というのは、誰が何と言っても、「鬱陶しい生身の人間を相手にしなくていいことこそが最大のウリの〔夢の遊び〕」という認識。だから、「対戦型格闘ゲーム」と呼ばれるジャンルの実質的な「元祖」とでもいうべき「ストリートファイター2」が、酒屋のハゲ親父(いつも不機嫌)が経営する謎のゲーセン(自宅を改装したもの?)に登場したときも、対人対戦には何の興味もなく(対戦で盛り上がっている連中を尻目に)、ひたすらCPU戦(今で言うところの「アーケードモード」?)をやっていた。

というわけで、以下の「ウルトラストリートファイター4」の話に「対戦」の要素は皆無なのでその手の話を期待した方々とは、ここでお別れです。

さて、本題。今年の6月に入ってから、YouTubeにゴマンとある「ストリートファイター6」の対戦動画とか解説動画とかを面白がって毎日色々観ていたら(おかげで、ウメハラとかカワノとかクボとかナルオとかの名前を覚えた)、或時、Amazonが「レバーレスコントローラ」というものを薦めてきて、「レバーレス?! いつの間にこんなものが?」と驚いた。「ストリートファイター」シリーズは「3」で「卒業(スト3幼稚園)」していたが、俄然興味が湧いて、どうしても試したくなった。つまり、「ゲーム」の方ではなく、「レバーレスコントローラ」の方を。格闘ゲームのコマンド入力にとって、レバーやパッドは最低の入力装置だとずっと思っていたから。

ウチのゲーム機はPS3が「最新機種」なので、当然「スト6」なんかできない。調べたら、「ウルトラストリートファイター4」ってのがPS3版にあったので、それと、5千円くらいの「レバーレスコントローラ」を買って、6月の末くらいからプレイしてみたら、最初から昇龍拳だの波動拳だの、真昇龍拳(的なパワーアップ版の必殺技)だのが思い通りに出せて感激。トレーニングモードで、前後に歩いたり飛んだりしゃがんだり、撃ったり避けたりを1週間くらい練習した。最初はリュウでやっていたけど、途中でルチャリブレのプロレスラーっぽいやつ(エル・フォルテ)が居るのに気づいて、そいつに乗り換えた。2週間くらい飛んだり跳ねたり、ブルブル回ったりを練習して、まあまあ動かせるようになったので、「アーケードモード」に挑戦した。一日30分トレーニングモードをやって、最後に2クレジット分アーケードモードをやるというふうに決めて、一週間くらいプレイしたところで、「ライバル」のザンギエフを初めてやっつけたら、その次に出てきたのが、もう、大塚明夫の声のラスボス「セス」だった。このセスがびっくりするほど弱かった。こんなに弱いラスボスは初めて。初対面で2連勝してエンディング。エンディングムービー(?)のエル・フォルテも、セスなどいなかったかのように、本田に習ったらしいチャンコ(のようなもの)を作ったりしていて、なんか、のどか。

で、いろいろ腑に落ちないものを感じたので、ネットで「エル・フォルテ」の「評判」を検索したら、なんと「ストリートファイター4」では、名うての「クソキャラ」で、「全員」から「嫌われて」いる様子。驚いた。そして笑った。

思い返せば、最後のセス戦同様、「ライバル」のザンギエフとの戦いも「攻略法」がわかってしまえば、手玉に取るように(殆どハメのように)勝てたし、そもそもそこに行くまでの戦いも、一人だけ「やってることが違う(世界が違う)」印象がずっとあった。

で、考えて、気付いた。エル・フォルテは、格闘ゲームのキャラクターではなく、所謂「横スクロールアクションゲーム(アスレチックゲーム)」のキャラクターなのだ。往年の「ストライダー飛竜」(大好き)とか、「忍者龍剣伝」(大嫌い)とか、まあ、「スーパーマリオブラザーズ」とか、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」とか、そういうゲームの主人公キャラの一人。それが、格闘ゲームに乗り込んできて、好き放題やってる。今挙げた諸ゲームとの違いは、エル・フォルテはずっと「ボス戦」だけをやっているということ。ボスまでの「道中(雑魚キャラ戦や、危ない足場を飛び越えるようなアスレチック場面)」はない。だから、まあ、『ワンダと巨像』だよね。

エル・フォルテは、対人対戦用のキャラクターではなく、「アーケードモード」用のキャラクターなのだと思う。つまり、対CPU戦用のキャラクター。だから、「敵=ボスキャラ」よりも攻撃力(火力)が低い。正面からまともにやり合っても勝てない(横スクロールアクションゲームのボス戦にそういう攻略法、輒ちボスと正面からまともにやり合う戦法は絶対に存在しない)。ちょこまか動き回っては、「硬い」ボスキャラに何度も何度も攻撃を当てる必要がある。横スクロールアクションゲームの「ボス戦」って、だいたいそんな感じでしょ? エル・フォルテは、各キャラクター(CPU)との格闘戦で、いちいちそれ(中ボス戦)をやっているだけ。

一番最初にも書いたけれど、著者は「対人対戦」には全く興味がない(観戦は好き)。〔テレビゲーム(コンピュータゲーム)とは、機械を相手に遊ぶもの〕という「主義」なのもそうなのだが、何より、人間を相手に勝っても負けても、どうしても、「だから何?」と思ってしまって、だめなのだ。自分よりも上手い人や頑張ってやり込んだ人には負けるだろうし、自分よりも下手な人や初心者やその日腹具合がおかしかった人には勝つだろう。

人間に勝ったとて、と。テレビゲームにそういうものを全く求めてない。

今の目標は、エル・フォルテを、ネイサン・スペンサー(『Bionic Commando』)くらい自由自在に使えるようになって、CPUが操る「ボス」たちを翻弄しまくること。

2024年7月31日 穴藤

【追記(2024年8月3日)】:さっき思いついたのでメモしておくと、『ストリートファイター4』は、コロ助(エル・フォルテ)とコロ助以外のキャラとの間の、真の意味での「異種格闘技戦」ゲームなのだろう。


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