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「アフタートーク」台本

舞台中央に、2つの椅子が並んでいる。
上手にアンナ・カリィ、下手にマネキン。
アンナ・カリィはマイクをにぎっている。

ええ、最後までご覧いただきありがとうございました。
本作を監督しましたアンナ・カリィです。
最終日にこんなにたくさんの、ほぼ満席ですかね、この映画はもともと、下北沢映画祭さんからお声がけがあって、下北沢を舞台に映画を撮らないかと、いうことで、ワークショップという形で、皆さんと手さぐりでつくってきたんですけども、アフタートークはトリウッドさんからは15分くらいでと言われてるんですけど、(マイクを離して舞台袖を見る)あってますよね? なのお時間ある方はもう少しおつきあいいただければと思います。
あ、皆さんありがとうございます。

でですね、今日のアフタートークですがゲストの方にお越しいただいてます。
ミュージシャンと俳優としてご活躍中のコムアイさんです。

マイクをもった手の手首で拍手する。

(客席に向かい)びっくりですよね。
ばかなふりしてオファーしてみるものだっていうほんとうに、かんじなんですけど。
いやあありがとうございます。
コムアイさんとはもちろんはじめましてなんですけど、さっき控室でご挨拶したら実は、(小声で)この話大丈夫でしたっけ? 僕学生の頃、東大の映画サークルに入ってたんですけど、部室が駒場の学生会館の地下1階にあって、そこが東大のフェミニズム研究会っていう別のところと共用の部室だったんですね、でそのフェミニズム研究会に、コムアイさんがいらっしゃったっていう。
僕が96年生まれだから代はかぶってない? ああそっか、2年留年されてるってことは、そうですねかぶってますね。

あれですよね、(足を組む)フェミニズム研究会って、毎年駒場祭でトークイベントやってたじゃないですか、はい観に行きました、2016だったかな、上野千鶴子さん来てましたよね、えうそ、そのときコムアイさんスタッフやってたんですか?
ああ、そうですそうですこの映画の冒頭のシーンは、あそこのインドカレー屋です、ビレバンの向かいの、チーズナンの、あれですよね、よくそこで皆さん打ち上げしてましたよね、たまたまそのお店入ったら研究会の皆さんと上野千鶴子さんがいて、うわ上野千鶴子いるってなったんですけど、そのとき上野さん、チーズナンとカツカレーのセットを頼んでて、いやあかっこいいなあってなったっていう。

はい、(4秒ほど考えこむ)そうですね、いまコムアイさんがおっしゃったことはそれこそこの映画の主題というか、に入っていく話なんですかね、(以下、早口で)東大のある駒場って、ちょうど渋谷と下北沢のあいだにあるんですね、でどちらもこの5年10年の再開発で、これまであった場所だったりコミュニティだったりが、まったく別の空間に置き換わっていくと、下北沢の高架下しかり、渋谷の宮下公園しかり、まあ下北沢のほうはわりと最近なんですけどね、そういった過程を目の当たりにしてきて、もうすでにここにはない〈過去〉とかそういったものを、まあこれが文化芸術としての映画の意義みたいな話になったら急に野暮ったくなっちゃうんだけども、映画によって、イマージュによってどうやって立ち上げられるのか~みたいな問題意識は、あるいはその種のようなものは、駒場にいた頃からもしかしたらあったかもしれないですね。

はい。

ありがとうございました。

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