告白


この感想はネタバレありです

映画「告白」を暫くぶりに観た。
原作小説も持っているし(学生の頃に読んだ)映画も多分観るの二回目とか。

アマプラに中島哲也監督の「来る。」がきたらしいのでそれを観る前に同監督の作品なんか観よ〜と思いたち「告白」に決めた。
内容に詳しく触れると長くなるから好きなシーンとかここがよかったとかそういうのを乱雑に書いてゆく。

冒頭30分の松たか子が最高。
最初のうちはうるさかったクラスが“元婚約者がエイズ感染者であること、自分の娘はこのクラスの誰かに殺されたこと"を話し出してからシーーンとなるの、なんかすごい空気としてわかるんだけどめちゃくちゃ気持ち悪くなってしまった。吐きそう。
学生特有の頭の悪さみたいなのがわかりやすく描かれててヴッッとなる。きつい。
AとBの名前を出さないにしろクラスの人間だったらある程度予想がつくように話していて、頭がいいんですねと思った。わざとだろあれ。
極め付けの「エイズ感染者の血液をその2人の牛乳に混入しておいた」みたいな話。
感染するかどうかは運次第だからしばらくしたら検査してみれば?潜伏期間は5〜10年、命をしっかりと噛みしめてほしい。みたいな話をして教室を去っていく。こわい。とにかくこわい。
まじで終始淡々と話していくんだけどそれがもうこわい。感情というか心が死んだ人間という感じがする。復讐の鬼。復讐心だけで生きてるといっても過言ではなさそうなくらいの感じ。

最序盤の30分で事件の概要を説明されて
あとは関わりのあった他の登場人物の目線からそれが語られていくつくりになってるんだけど
別にあっと驚くようなことがあるわけでもなく
話の筋自体はだいぶわかりやすい。どんでん返しとかもない。とくに。

美月ちゃんという女の子が殺されたところはまじの理不尽だと思うのでAくん絶許となった。
普通にいい子だったし、寄り添ってくれてたのに、所詮暇つぶしみたいなこと言って殺すのまじ許せん。
きっかけは美月ちゃんに「マザコン」と言われたことだけど、Aにとっては本当に母親に認められることというか母親だけが生きがいなので、本質を見抜かれて耐えられなかったんだろうなと思うけどそれにしたってばらばらにして冷蔵庫に入れることなくない???????なんなの??????
しかもAが美月ちゃんバラバラにする描写と幼い頃母親がおもちゃをバラバラにして構造を説明してくれたってくだりと画が重なるのある意味ですごくシャレたつくりだなと思ったけどきっっっっつとなった。きつ。

あと人を2人も殺しといて「命」についての作文書いてそれが表彰されてるとかありえん。
上っ面な文章じゃんそんなの。くそ。
人を2人も殺してる奴が命の尊さについて語るなぼけ。
母親に認められるために頑張ってなんか科学のやつで優秀賞とったまではよかったけど、それよりも大きな事件が目立ったばっかりに、注目を浴びるには人を殺すしかないみたいなところに至るのほんとうに思考回路が単純明快おこちゃますぎる。
母親に認められるために他者を犠牲にすることを厭わないとかまじどんだけ。
でも母親の口癖の「ママの血が流れてるから、ママの才能を受け継いでるのよ」みたいなやつのせいでもあるとは思ってる。そのくせ子供捨てて研究者に戻ってるわけだから笑っちゃうよね。(笑えない)
無責任な愛情はよくない。

BはBで、引きこもって部屋から出ず時々暴れて泣き叫んでとにかく母親にエイズをうつさないようにしようとする(感染してないはず)んだけどある日母親がご飯に睡眠薬いれて体拭いて髪の毛切って綺麗にしたら大発狂するんだよね。
でもその後開き直っちゃうんだけど、自分が殺意を持って森口先生の娘を殺したことを母親にあっさり話してて、なにかが彼の中でプッツンしたんだろうなあって。
そのあと無理!!ってなっちゃった母親に肩口刺されるんだけどなにかがおかしくなっちゃったみたいでその包丁で母親の多分喉を掻っ切ってるんだよね。
で、捕まる。
Bくんはわりとすぐダメになって思ってたよりも簡単に復讐が果たされたように思う。もともと精神強い方じゃなかったっぽいし。殺した動機もAが達成できなかったことを自分が達成することで出来損ないじゃないことを証明したかった、みたいな感じだし。
ほんとしょーもない。そんなしょーもないことで小さい子の命奪うとかありえん。許せん。

途中で牛乳に血を混入しようとしたところを旦那に止められたことをたまたま会った美月ちゃんに話すシーンがあるけど、たとえ入ってたとしても感染する確率は限りなく低いし、今の技術だったら体内のHIVの増殖を抑えることも可能だから死に至ることは少ないとか話して、そんなことも知らないで恐れて滑稽ですねみたいなこと言うんだけど、なんかここでふとコロナのことを思い出してしまって、エイズとコロナじゃまったく違うことは重々承知だしそこではなく、病をきちんと理解し本当の意味で恐れるということについて考えた。本当にたまたまだけど。
あとファミレス爆笑シーンは必見。びっくりするまじで。あとこわい。
ファミレス出た直後、森口先生嗚咽をもらして泣くんだけど、そんなことをしても何の意味もないって本人が一番わかってるんじゃないかという気がした。

Aくんは母親に会いに行ったけどすでに再婚相手がいてなんかもうやけになっちゃってみんな巻き込んで死のうと思って体育館に爆弾仕掛けて携帯一つで作動できるようにして、翌日の朝表彰された作文読み終えたときにボタン押すけど爆発しなくて……みたいな感じなんだけどこーれがもう凄い。
体育館爆発しなくてなんでだってなってるAくんのとこに森口先生から電話があって、諸々が明かされていき、美月ちゃん殺害でもうすぐ警察がいくこと、関係ない人を巻き込むな、そんなにママママいってるならママを殺せみたいなことを電話口で言うんだけどどんどんAくん追い詰められてって、極め付けが"爆弾解除してお母さんの研究室に持っていきました。お母さんあなたのこと忘れてなんてなかったよ。あなたがボタン押さないこといのってたんだけどねえ。大切なものが消える音が聞こえました。パチンじゃなく、ドッカーンって。"みたいなこというんです。君が爆弾をつくって、君がボタンを押したんだよ。君のせいでお母さんが死んだんだよ、ということ。
えぐ。復讐がえぐ。

そんで
「これが私の復讐です。本当の地獄、ここからあなたの更生への第一歩が始まるんです。………なーんてね。」という台詞で締められる。
この「なーんてね」というのはAくんの口癖なんだけどすっごーい皮肉。
このなーんてねがどこにかかっていると感じるかによって解釈が違うらしいけどわたしは更生への第一歩ってところかなあと思っている。
仮にも教師だけど、でも教職は辞してるわけで、だからつまり彼が更生するしないは彼女にとってどうでもいいことなんじゃないかと思うんだよな。
ちなみにこのなーんてねが研究室爆発にかかってるんじゃないかという説もあり、つまり研究室を爆発させたということが嘘である、という話。
でも個人的には前者であってほしいなと思う。
あってほしいっていうのは変な話で、実際こんなこと起こらないでほしいんだけど、ラストの台詞で森口先生泣いてて、なんか、すごい虚しいんじゃないかなって、結局そんなことしても、報われなかったんじゃないかなって、思ってしまって、だからこそそこまでやりきっててほしいなと思った。

映画「告白」は、わたしの大嫌いな若者()が描かれているし、森口先生の復讐も、森口先生自身がなんにもならないことをわかっているかのように見えるから結局スッキリもせず、わりと胸糞映画なのでまだ観てないよという人はぜひ観てください。
わりとしばらく気分悪いの引きずると思うので時間がある時に……………。
あと湊かなえさんのデビュー作なので普通に読んでください。面白いです。

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