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麻雀ファンのためのゲーム理論入門(6): 最大損失を最小化するミニマックス戦略

はじめに

麻雀は、将棋や囲碁、オセロと同様に典型的なゼロサムゲームです。今日はゼロサムゲームの基本概念であるミニマックス戦略を説明します。

前回の問題

前回、こういう問題を考えていました。
兄と弟が母親からホールケーキが1つ与えられたとします。「お兄ちゃんがケーキを切って2人で仲良く食べなさい」と。2人とも自分の取り分は大きければ大きいほど望ましいと思っているとします。

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単純化して、兄の方の戦略はケーキを「5:5に切る」と「9:1に切る」の2つだとします。一方、弟の方の戦略は切られたケーキのうち「大きい方をとる」と「小さい方をとる」の2つだとします。

下の表のマス目の数字は、兄の利得、弟の利得の順で記されています。

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兄の立場で考えると、自分にとってベストな結果は9対1でケーキを切って9の方を自分が取ることです。けれども、切られたケーキを最初に選ぶのは弟の方ですから、弟が「1」を選んで「9」を残しておくとは考えにくいですね。それでは、兄はどのように考えればよいのでしょうか?

ミニマックス(min-max)戦略

ミニマックス(min-max)戦略という考え方を用いましょう。ミニマックス戦略とは、損失を最小化する戦略を選ぶという考え方です。兄にとって「5:5に切る」を選んだ場合、弟がどちらを選んでも自分の取り分は5になります。一方、「9:1に切る」を選んだ場合、弟が9の方を選べば自分の取り分は1となります。従って、赤い四角で囲った1と9を比べて、小さいは1となります。最悪のケースを考えると、「5:5に切る」のときには5、「9:1に切る」のときには1となります。5の方がマシなので、兄はミニマックス戦略に従えば「5:5に切る」を選ぶのがよいと考えられます。

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弟の方もミニマックス戦略を考えてみますと、「大きい方をとる」を選んだ場合、最悪のケースは兄が半々に来て5の取り分になるという場合です。一方、「小さい方をとる」を選んだ場合、最悪のケースは1の取り分となります。これを図で表すと下の図のようになります。

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お互いがミニマックス戦略に従うと、実現するのは左上の5:5になります。これがミニマックス均衡です。

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かわし手


麻雀で、かわし手とよばれる和了りがあります。役牌ポンや喰いタンなどでさっと和了ることです。

鳴けば和了りが早そうだけど、門前で進めてもマンガンやハネマンにはならなそうな手なら、鳴いてさっさとテンパイに取るのが吉です。

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上の手だって、リーチをかけて、白の方をツモって一発か裏ドラがつけばマンガンです。ただし、そうやって和了れればの話です。自分が和了らなかったら何が起きるでしょうか。他家の和了りです。そして、その和了りはマンガンやハネマンかもしれません。これは、ほぼ最悪のケースといえましょう。ミニマックス戦略の示唆していることは、最悪の結果が一番マシになるように選ぶのがいいよということでした。

役牌ポンや喰いタンなどの1000点の手をテンパった時に、こんな安い手を和了って意味があるのかなと迷った時には今日のミニマックス戦略の話を思い出してください。あなたが1000点の手を和了らなければ、対局者はマンガンやハネマンを和了るかもしれません。

ゼロサムゲームの均衡は、ミニマックス均衡になります。考えられ得る最大損失が最小になる選択をするって、麻雀以外でも役立ちそうな考え方ですね。

今日は2人ゼロサムゲームにおけるミニマックス戦略の概念を勉強しました。一般に、ゼロサムゲームではプレイヤーAの利得=-プレイヤーBの利得なので、Aの利得だけを表にして表すことが多いのですが、それではわかりにくいのでケーキの例を用いました。

一般的なゼロサムゲームの問題


最後に、もうちょっと一般的なゼロサムゲームのミニマックス戦略を見ておくことにしましょう。下の図は、プレイヤーAが戦略a1,a2、プレイヤーBが戦略b1,b2のどちらかを選ぶ状況を表しています(無味乾燥な例ですみません)。両社の利得を合わせると、どのマス目もゼロになっていることに注意してください。これはゼロサムゲームであることを示しています。

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各プレイヤーはそれぞれどちらの戦略を選ぶのがよいのでしょうか。ミニマックス戦略で考えてみましょう。下の図の空欄に当てはまる数字を入れてください。

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わかりましたか?答えは以下のようになります。



プレイヤー A は、a1を選んだ場合、プレイヤー B が b1を選ぶならば1の利得、b2を選ぶならば2の利得になります。従って、小さい方の利得である1を minの枠に書き込みます。同様に a2を選んだ場合、プレイヤー B が b1を選ぶならば-1の利得、b2を選ぶならば4の利得になります。従って、小さい方の利得である-1を minの枠に書き込みます。1と-1では、1の方が大きいのでmaxのところに1を書き込みます。

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以上の結果から、プレイヤーAのミニマックス戦略はa1であることがわかりました。同様に、プレイヤーBのミニマックス戦略はb1となるので、ミニマックス戦略の組は(a1,b1)となります。

次回からこのミニマックス戦略の概念を展開していきます。

あとがき

最近は、麻雀関連のnoteもだいぶ増えてきたようです。更新をさぼると忘れ去られそう。。。他にはない切り口で麻雀のメカニズムを解き明かしていく所存ですので、今度ともよろしくお願いいたします。







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