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懸命に無気力になるのは 賢明じゃない【なでしこジャパン】 

いよいよ、パリオリンピックが7月27日に開幕。
女子サッカーは、それに先駆けて25日から試合が行われる。

今回は、このオリンピック出場を懸けて、昨年10月29日に行われた女子サッカー予選日本(なでしこ) vs ウズベキスタン戦を振り返る。この試合を簡単に説明すると、実に75分に渡って両チームともに得点を放棄した試合である。無気力試合とも揶揄される。


『もう8カ月も前の試合を 何を今更』なのだが、私がnoteを書こうと思ったキッカケの一つ。本大会の試合が始まる前に書いておくべきと考えた。

この記事を書くにあたって、試合動画や当時の記事をあらためて確認してみた。

過去記事を焼き直して、同じような内容を書いても意味は無い。もっとわかりやすく、より突っ込んで解説するのが目的だ。

当時、リアルタイムでは試合を観ていないので、90分フル動画を探したが見つからない。ダイジェストはあるけれど、得点シーン以外はバッサリとカット。そりゃそうだよね。いわくつきの試合を今頃フルで観ようなんて奇特な奴は、私ぐらい。需要が無ければ無くなるのは、あたりまえ。

観ようと思ったのは、当時の空気感を知りたかったから。試合映像は無かったので、このyoutubeをスキップも倍速もしないで視聴した。

紹介しておいてなんだが、この動画の視聴はお勧めしない。
苦痛を感じるから。別に動画が悪いからではない。
このままでは配信者の光りりあさんに失礼なので、機会が合えば観て欲しい。パリオリンピックでも日本戦のライブ配信をやるだろう。
試合映像はテレビやモニタで。こちらはスマホで、観るというより聴くというスタイルがいいかな。一緒に応援する仲間が増えた気分になれる。


本題に戻る。

まずは、レギュレーションのおさらい。

<2次予選の方式>
・4チームが3グループに分かれ、1回戦総当たりのリーグ戦を行い、各グループ1位のチームが3次予選へ進出(3チーム)
・各グループ2位のうち最も成績上位のチームが3次予選へ進出(1チーム)

<3次予選の方式>
・2次予選を通過した4チームが2組に分かれ、ホーム&アウェイ方式で戦い、それぞれの勝利チームがパリオリンピック2024の出場権を獲得
・2位通過チームがグループA
 
・グループA 1位 対 グループC 1位
 ・グループB 1位 対 グループA 2位
・2位通過チームがグループB
 ・グループA 1位 対 グループB 1位
 ・グループC 1位 対 グループB 2位
・2位通過チームがグループC
 ・グループA 1位 対 グループC 2位
 ・グループB 1位 対 グループC 1位

でも、文字だけじゃ解りづらいよね。
ということで、2次予選結果の図を用意した。

グループステージ順位
及び勝ち点と得失点差
3位以下は割愛

フィリピンと韓国が敗退。
ウズベキスタンが3次予選進出。
3次予選の対戦相手は、緑の矢印に決定した。

では、なでしこの選手たちが、なぜ無気力試合をすることになったかを考察する。

グループ1位の勝ち点に注目。
オーストラリアと日本の勝ち点は9、北朝鮮は7。オーストラリアとの対戦を避けたいとの、池田監督のコメントを別にしても、成績上位の2チーム同士の対戦は、普通は無い。両チームが、共に五輪への切符を手に出来る。そうなるようなレギュレーションであるべき、普通は。普通では無いレギュレーションにより、普通では無い事態が生じる。


オーストラリアの立場で、五輪への道筋を考えてみる。

オーストラリアもまた、日本との対戦を避けたかった。日本が最も実力上位と見られていたから。

自身が2位となれば日本との対戦を避けられるが、2位進出は結構リスクの高い賭けである。

しかし、自身が1位となり自グループから2位を出してしまうと、3次予選の相手はオレンジの矢印となる。日本と対戦する可能性が高い。

そこでオーストラリアは、最大限の努力をする。フィリピン相手に8ー0のスコアで勝利した。これでフィリピンは、得失点差が大きくマイナスとなり、2位進出の望みが低くなった。
オーストラリアがいかに日本と対戦したく無かったか、うかがい知れる。


ウズベキスタンの立場で、五輪への道筋を考えてみる。

1試合目を勝利し、迎える2試合目。
グループ内で圧倒的な実力の日本に対して、勝利を手にするのは難しい。
何とか2位進出すること。引分けを狙って、隙があれば勝てるかもしれない。負けるときは僅差で。
試合前はこんな風に考えていただろう。

スコアレスの時間帯を長くして、チャンスを待つ。
そんなウズベキスタンの思惑が、試合開始15分で粉々に打ち砕かれた。
日本の2ゴールによりスコアは0-2。圧倒的な実力差。ここから引き分けに持ち込むことや、ましてや勝利などは、かなり望みが薄くなってしまった。もうこれ以上失点しないことに努めて、2位進出の望みをつなぐ。

もちろん3試合目のインド戦は、なんとしても勝たなければならない。


日本の立場で、五輪への道筋を考えてみる。

1位進出を目指して、なおかつオーストラリアと対戦しないためには、グループ_BかCのどちらかの2位が突破すること。グループ_Bの結果には干渉できないので、グループ_Cの2位が突破できるように配慮する。

1試合目の結果とこれまでの実績により、ウズベキスタンが2位候補。
2試合目となるウズベキスタン戦は、あまり点差を付けずに勝利したい。

そんな思惑で2試合目に臨むと、開始15分で2ゴール。もうゴールに向かう必要はない。なるべくならこのまま試合を終わらせよう。

2試合目試合開始15分の、日本とウズベキスタンの思惑が一致している。
もうスコアを動かす動機が両チームに無い。

なんなら、これは試合開始前から想定されていたこと。
想定外だったのは、開始15分というあまりにも早い時間帯だったことぐらい。

日本とウズベキスタンは、決して無気力に試合をしていたのでは無い。むしろ、一生懸命にボールを回していた。オリンピック出場というゴールに向かって。

これを無気力試合と呼ぶのは、私には違和感がある。
もはや目の前の相手がではいことから、無敵状態と呼びたい。

結果としてなでしこジャパンは、オリンピック出場を果たした。
だが、何か損をしているような気がしてならない。

実際、なでしこジャパンの戦い方を非難する意見もあった。
レギュレーションを理解して納得しても、なにか釈然としない。

こんなことでは、サッカーはつまらないスポーツと思われて、観なくなる人が多くなるのでは?

問題は、レギュレーションにある。
もう2度と、このレギュレーションで大会が行われないことを願う。


では、どうすればいいのか?


2位進出したグループによって、対戦相手が固定されてしまっている。
固定ではなく、成績によって対戦相手が替わる方がよい。

<3次予選の方式>
・2次予選を通過した4チームが2組に分かれ、ホーム&アウェイ方式で戦い、それぞれの勝利チームがパリオリンピック2024の出場権を獲得
・2位通過チームがグループA
 ・グループA 1位 対 グループB or C 1位 (成績下位チーム)
 ・グループA 2位 対 グループB or C 1位 (成績上位チーム)
・2位通過チームがグループB
 ・グループB 1位 対 グループA or C 1位 (成績下位チーム)
 ・グループB 2位 対 グループA or C 1位 (成績上位チーム)
・2位通過チームがグループC
 ・グループC 1位 対 グループA or B 1位 (成績下位チーム)
 ・グループC 2位 対 グループA or B 1位 (成績上位チーム)

1位の成績上位同士が対戦することがなくなる。
これなら、心置きなくウズベキスタンと戦えたはずだ。
仮にフィリピンが通過したら、日本との対戦になる。

このレギュレーションで、オーストラリアと対戦しないように策をめぐらすのは無駄である。
もしそれで無敵状態にでもなったら、盛大な批判が飛ぶだろう。
「そんな弱腰でどうする」と。



しかし、過去は過去。

なでしこの選手たちが、パリオリンピックで躍動してくれるよう、声援を送ろう。

勝っても負けても、たとえメダルに手が届かなくとも、立派な戦いぶりを魅せてくれることを期待したい。


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