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お正月が苦手だった

母と遊びたかった

「あぁ…  また正月が来るのぅ…」
母はうんざりしたようによく言っていた。
父は長男だった為、お盆、お正月、お祭り、法要等々何かの行事の時は親戚が大勢訪れてきた。
母は大勢の人が寄ってくるのが好きではなかったようだ。
私も叔父や叔母、従兄弟たちでも誰かが家に来るとすごく緊張したものだ。

年末になると母はおせち料理を作り出す。
棒鱈、里芋、黒豆、昆布巻き…
棒鱈はカチカチのものを一晩以上かけて水に漬けてもどす。
昆布巻きもひとつひとつ丁寧にニシンを巻いてかんぴょうで結ぶ。
今思えばどれも時間と手間のかかるものばかりだ。
子供だった私はそんな煮物ばかりのおせち料理に興味はなく、特にクセの強い棒鱈の匂いが苦手だった。
おせち料理は三が日料理をしなくて良いように、という話を聞いたことがあるが実際にはそんなわけがない。
母は年末から年始までずっと働いていた。
私はいつも母と遊びたかった。
お正月になったら遊んでもらえると楽しみにしていたが、なかなか母の手が空かなかった。
「正月でも飯は作らんなんし、洗濯もせんなん」
そうなんや、お正月でも休みはないんや…そう思うと寂しくなった。


おめでとうさんどす

父は叔父さんたちとずっとお酒を飲んでいる。
近所の人が新年の挨拶に来る。
誰かが来るたび丁寧な挨拶を交わす。
その挨拶がすごく長くて大人になったらお正月にはこんなに仰々しい言葉を並べ立てなくてはならないのか、と自信を無くすほどだった。
「おめでとうさんどすな、旧年中はお世話になりましてな、おおきにな、また本年もよろしゅう…………」
よく覚えていないがとにかく長かった。
恥ずかしがり屋だった私はなかなか挨拶ができなかった。
すると母から
「おめでとうさん、言わんかいな!」
と叱られる。
今でもお正月の挨拶は苦手だな…
昔に比べると挨拶も簡単になったけどね。


初詣に叩き起こされる

元日の朝5時、父は初詣に行く。
一緒に連れて行ってもらおうとすると、すごく早起きしなければならない。
なぜ5時なのかわからないのだが、朝早く詣でることに父なりの意義があったのだろう。
普段どこへも連れて行ってもらえなかったから、この初詣が早起きは辛かったけど楽しみでもあった。
毎年お守りを買ってもらうのも楽しみの一つだ。
昔は人も少なくて参拝に並ぶこともなかったっけ。


お雑煮が苦手

初詣から帰るとお雑煮だ。
お餅は丸餅、合わせ味噌にカブと里芋の親頭が入る。
かつお節をたっぷりかけたものだ。
このお雑煮も苦手でお上品な関東のものを見るとすごく羨ましかった。
苦手なのに強制的に三が日食べさせられた。
7日には七草粥ならぬ、七草の入った餅粥のようなものが出る。
確か胃を休めるはずでは?と思うがここでもまだまだお餅なのである。
味は塩味のお粥味、もう勘弁してほしい…と私の苦手は続く。
15日になると小正月、やっと大好きな小豆の登場だ。
朝から甘いぜんざいが食べられる!この日だけは楽しみでお餅をたくさん食べたものだ。


帰省の強要

私が結婚すると厳しかった父は最低年3回、お正月、お盆、お祭りには帰って来いと言った。
それを聞いた私はガックリしたものだ。
両親が厳しすぎて自由がほぼ無かった子供時代、青春時代を過ごした私は早く家を出て自由になりたいと思っていた。
なのにまたあの家に引き戻されるのか…
夫の実家もお正月等には帰ってきて当たり前、
「帰ってこない奴はキ○ガ○」と言う恐ろしい言葉を吐く義母がいた。
だからこの家が苦手で嫌で嫌でたまらなかった。
私達夫婦はお互い仕事を持っていたので長い休みがこのお正月、お盆、お祭りの時期しか無かった。
休みなのに拷問のような帰省が辛かった。
自分の自由が少しも無く義務のように二軒の実家を回り、全くゆっくりしたいと思わなかったしいつも早く帰りたかった。
年末 テレビで家族で海外旅行へ行く人達を観ると羨ましくて仕方がない。
自分も親子水入らずで過ごしたかった。
年越しを実家でも自宅でもない所でしたくて、一度だけ旅先で新年を迎えた事がある。
その開放感と幸せは今でも忘れられない。
その後ある事情で夫の実家とは疎遠になり、変な話だかすごく安堵したのである。
自分の実家は両親ともに亡くなったのでたまの行事に訪れている。


やっと訪れた自由

現在はと言うとやっと年末年始に好きな事ができるようになった。
しかし年々多忙になり、ゆっくりというにはほど遠いが。
昨年 母が亡くなったので今年は喪中だ。
年賀状も出さない、初詣も行かない。
年越しも起きていられるか?と思ったが飲んだくれて寝てしまった。
子供も帰ってこない。
元旦から雨が降ったのもあって、どこへも行く気がしなくなった。
各SNSで新年のご挨拶回りして溜まっていた写真整理をして
「あっ! この正月をnoteに書こう!」
と思いついたのである。
朝からずっとパジャマのままだし、スッピンだ。
ひどいなぁ〜
こんな元旦は今まで生きてきて初めてだ。
でもゆっくりするってこういう事なのだろう。
ダラダラ寝正月、太るのは承知の上、ええやんか、好きなことをやれて私はすごく満足だ。

さぁ!
また今夜も早くお風呂に入って呑みながら録画したグルメドラマを観よう。
サイコーのお正月は始まったばかりだ。
٩(。˃ ᵕ ˂ )و♪🎍📺🍶💕




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