恋愛マスター(?)美月ちゃん Lv.2
美月:これって私から送った方がいいのかな…
○○君との空白のトーク画面を眺めて早2時間
梅のおかげで〇〇君のLINEをゲットしたのは良いけど、未だに会話を始められないでいる
なんて送ったらいいんだろ……
うーーん
「よろしくね!」だと普通だし
「追加ありがとうございます!」だと硬いし
スタンプで始めるのは返しに困っちゃうよね
……
うん。これは、無理だっ
私から送るというコマンドは頭から完全に消え去り、〇〇くんからの連絡が来るのを祈ることにした。
”ピコン”
”ピコン”
スマホの通知が鳴る度に恐る恐るスマホを確認するもPayPay、UberEATS、LINE公式アカウント
も〜こんな大事な時に…
もはや悪質な嫌がらせと思えてきてしまう。
時折来るどうでもいい通知に惑わされながらベッドでゴロゴロしていると、あっという間に1時間経過が経過してしまった。
はぁ。今日はもう諦めよ…
ようやく諦めるという選択肢にたどりついた私
そもそも、LINEゲットしただけでも超最高の1日なわけだし(※梅のおかげだけど)
少しずつ距離が近づいていった方がさ、誠実なお付き合いができるような気がするでしょ?
なんてぶつぶつと呪文のように呟いて、自分に言い聞かせていると
───その瞬間は唐突に訪れた
〇〇:『ごめん、連絡遅くなった。』
〇〇:『〇〇です。よろしくね』
落ち込みかけていた山下に復活の呪文
美月:痛っ
びっくりしてスマホを顔面に落として物理的なダメージを喰らったのは〇〇君には内緒
美月:「山下です。よろしくお願いします…!」
”LINEは駆け引きだよ焦らさないと”なんてアドバイスをしてきた人間とは思えないほどに、一瞬で返信してしまった。
やばっ…流石に早く返信しすぎた
でも、待つのなんて無理だもん
仕方なくない?
返信が来た時にすぐ既読を付けないようにと〇〇君とのトークルームを長押しして眺めていると
思ったよりすぐに既読が付いてガッツポーズ
〇〇:『今からお風呂入るから、出たらおすすめの本送るね』
美月:「うんっ!待ってる」
〇〇:『じゃあ、また後で』
好きな人の即レスほど嬉しいものはない
〇〇君とのやり取りに全身全霊で望むためにも、私の方も急いで寝る準備しなければ
家族がドン引きするほどの速さでご飯を食べ終えると、お風呂も一瞬で済ませて髪の毛を乾かしながら連絡を待つことにした。
〇〇君ってどんな本が好きなんだろ…
長い文章が苦手な私
〇〇君目当てで図書館に通いつめてはいるものの、最初の数ページをパラパラと眺めているだけ
図書館の本を1冊も読み切っていない
そんな私でも、〇〇君がオススメしてくれた本なら読める
…ような気がする
丁度、髪を乾かし終わった頃
〇〇くんから連絡がきてやり取りは再開
〇〇:『お待たせ』
美月:「全然待ってないよ!」
〇〇:『良かった』
〇〇:『風呂でオススメの本考えたから今から送るね』
美月:「うん、お願いします!」
〇〇:『えっとね、容疑者Xの献身・マスカレードホテル・人魚の眠る家・アルジャーノンに花束をあたりがオススメかな』
美月:「何個か聞いたことある!」
本の知識なんてゼロに近い私でも名前を聞いたことがある作品が多い。私が読みやすいように有名なお話を選んでくれたのだろう
流石〇〇君
気遣いのできる男。すき。
〇〇:『有名な作品が多いかもだけど…』
美月:「名前は聞いたことあるけど読んだことない本ばっかだから今度読んでみる!」
〇〇:『うん、ぜひぜひ』
返信したらすぐに既読が付いて
返ってきたメッセージにまた返信して
まるで2人だけの空間が広がっているみたい
美月:「読んだら感想伝えるね」
〇〇:『ほんと??待ってる』
〇〇:『感想とか共有できる友達欲しかったから嬉しい!』
美月:「私も」
〇〇:『今度山下さんのおすすめの本も教えてね』
美月:「うん、今度送る!』
美月:『でも、〇〇君知ってる本になっちゃうかも」
〇〇:『どうだろ?話題の本でも全部読んでる訳じゃないから』
〇〇:『それに、もし読んだことあったら感想共有すればいいし!!』
美月:「いいね!楽しそう」
徐々に〇〇君からのメッセージに顔文字や”!”が増えていく。君も楽しんでくれてるのかな…
今日の私は口角が上がりっぱなしニヤケっぱなし
何度も妄想した〇〇君とのやりとりが現実になっているのだから無理もない
美月:「そういえば、東野圭吾さん好きなんだね」
美月:「さっきオススメしてくれた本にもいくつかあったし」
ここで会話を終わらせる訳にはいかない
”彼を惚れさせる方法”とかいう怪しいサイトで手に入れた攻略法でなんとか会話の続行を試みる
〇〇:『うん。めっちゃ好きだよ』
”好きだよ”
”好き”…?
通知欄に突如出現した”好き”の2文字。
唐突の超高火力攻撃に
山下へ9999のダメージ
美月:痛っ
驚いてスマホを落としてしまう。
スマホからのダイレクトアタックは本日2度目
”LINEではわざと好きという文字を使って相手をドキドキさせましょう”
なんて恋愛テクニックを鼻で笑っていた過去の私
あなたは何も分かってない。
めっちゃ効果あるじゃんか
あまりの破壊力にスマホを放り投げそうになってしまった。
〇〇君おそるべし
恐らく〇〇君は無意識に送っているであろうメッセージに私の心拍数は上がりっぱなし
人生で1番幸せな月曜夜だった気がする
───────────
楽しい時間はあっという間
日付が変わる時間が近づいて来てしまった。
〇〇:『そろそろ寝なくて大丈夫…?』
こういう部分でも配慮してくれるあたり本当に〇〇君は優しい。
美月:「ほんとだ、、、もうこんな時間」
〇〇:『あっという間だったね』
美月:「ね、あっという間だった」
〇〇:『今日はありがとね楽しかった!』
〇〇:『山下さんさえよかったらさ、またLINEするね』
何言ってるの?そんなのこっちから土下座してお願いするレベルです〇〇君
美月:「うん!待ってます」
〇〇:『ほんと?良かった!』
前から気づいていたけど
〇〇君はほんっとにあざとい
そんなこと言われてしまったら勘違いしちゃうでしょ。私以外には絶対そんなこと言わないでね
たった数時間、LINEのやり取りをしただけ
頭では分かってるけど心はそんなに単純じゃない。
〇〇君との親密度が上がった気がして、心の中の独占欲が膨らんでいく
〇〇:『じゃあ、おやすみ』
美月:「うん。おやすみ」
長いようで短かった夜
電気を消した真っ暗な部屋
LINEに残った沢山のメッセージのやりとりを読み返してにやけて
数分間スクロール出来るほどのやりとりが私たち2人の距離をほんのすこしだけでも近づけてくれたような気がした。
──────────────
翌朝
美月:2人ともおっはよ〜!!
美波:テンション高っ
史緒里:朝から元気だね〜
美月:え〜そんな事ないよ〜♡
史緒里:山、誤魔化すならそのニヤけた顔なんとかしなよ
美波:どーせ。〇〇君と進展でもあったんでしょ
美月:違いますよ〜だ。何となく機嫌がさ、いいだけ…だから
史緒里:相変わらず言い訳が下手だね山は
美月:じゃあ、証拠あるの〜?〇〇君とのことだって
美波:え?顔に書いてある
史緒里:うんうん。顔に書いてあるね
美月:そ、そんなんじゃ証拠として弱いから
いつもの2人に馬鹿にされていると、〇〇くんがちょうど登校してきたみたいで声をかけられた。
〇〇:あ、山下さんおはよ。昨日はありがとね
美月:あ、〇〇君!こちらこそありがと…
私の返事に〇〇君は優しく微笑みかけると自分の席に向かっていった。
〇〇君真っ直ぐなのは素敵なところだけどさ。
この2人の前でそんなこと言ったら───
美月:ねぇ、2人とも顔がうるさい
美波:山、誰のおかげでLINEできたのかな?ちゃんと話、聞かせて
史緒里:えいっ
美月:ねぇ、久保スマホ返してよ
史緒里:やだね〜絶対やりとり見てやるんだから
美月:絶対嫌!2人だけの秘密なの
史緒里:えーっとパスワードパスワードと…
美波:山の誕生日は?
美月:そんな単純じゃないから!ほら、返して〜
史緒里:これも違った。あれこれも違うのか…
美波・史緒里:話聞くまで絶対帰らせないから
今日の放課後居残り(?)が決まってしまった美月でした。
〜つづく〜
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