見出し画像

いもらぶ。〜エイプリルフール編〜

ヒロイン:岩本蓮加さん



3月31日、日曜日


明日から仕事が始まるという憂鬱な感情も、隣で楽しそうにゲームしている妹の声が和らげてくれる。

スマホを見ると時刻は23:42
もう少しで日が変わる頃だ

「これラストゲームにするわ」

『え〜もう少し一緒やろうよ』

「やりたいけどさ。明日仕事だろ?新入社員も入ってくるから研修準備とかしないといけなくて」

『お兄ちゃんが研修とかすんの?ウケる』

「こう見えてもう2年目になるんだぞ。」

『そっか〜お兄ちゃんが先輩になるんだね』

「な。あっという間だったよ1年間」

『休むことなく仕事行けてよかったじゃん。偉い』

「そうだね。結構きつかったけど」

『蓮加も次、大学3年だから本格的に就活しなきゃなんだよね〜。めんどくさっ』

「そうだよな。エントリーシートとか手伝うよ」

『まじ?ありがと』

「お兄ちゃんこう見えて新卒の中だと優秀な方だから任せなさい。」

『あのお兄ちゃんがね……。』

「要領とかいいだろ結構」

『ゲーム下手だけどね』

「ゲームは仕事に関係ないって」

『ふふっ。冗談だよお兄ちゃんっ』

いつもみたいにからかって笑っている蓮加
最近、笑顔を見る機会が増えた気がする。


『そういえばね。お兄ちゃんに1個聞きたいんだけど』

「んー?」

『仕事のモチベーションってなに?』

「なんだよ急に真面目な顔して」

『職種とか決めるのに参考にしたくて』

「ん〜、お兄ちゃんの仕事はあんまりお客様と直接接する訳じゃないからなぁ。今はまだ見つけられてないかも」

『それで、よく仕事頑張れるね』

「まあ、確かに。去年の初めは彼女が支えたのは大きかったな…」

「って言っても冬には振られちゃったけど」

『ふ〜ん。元カノね。』

「そう。やっぱり誰かの為じゃないと頑張れないよ」

『あっそ。最後1ゲームやろっか』

なんだか機嫌が悪いように見えたが、ゲームを再開したらすぐに元通りに戻った。


・・・


15分後


「ま、負けた……。」

お察しの通り、全く歯が立たなかった。

『お兄ちゃんほんっと弱いよね』

「来週は負けないから。特訓してやる」

『蓮加に勝つのは諦めた方がいいよ』

「負けず嫌いだから」

『蓮加に似たね』

「蓮加が俺に似たんだろ」

『え〜なんか嫌だお兄ちゃんに似るの』

「うげっ。冗談でも傷つく」

『ごめんごめん。』

時計を確認すると、
長針が短針を追い越していた。

「やべっ。もう12時過ぎちゃった。寝るね?」

『は〜い……。』

少しだけ寂しそうな顔をする妹を置いて、先に寝るのは心が痛むが仕方ない。


新しく出来る後輩にとって頼れる先輩になるためにも、万全の体調で明日を迎えないと。


「おやすみ。また明日な」

『うん。おやすみ〜』

ソファから起き上がり、
リビングの扉に手をかけると


『あ、そういえばお兄ちゃん。』


蓮加に呼び止められた。


「ん?」

『大好き。』

「はっ?」

『だから、だ・い・す・き』

「蓮加が俺を?」

『それ以外、誰が居んの?』

「珍しいそんなこと言ってくれるの。」

「ありがとなお兄ちゃん明日から頑張れるよ」

仕事の兄をいたわってくれるなんて、
なんて出来た妹なんだ……。

『……』


「ん?どうしたの」


『ごめん。エイプリル…フールなんだ……』

「あっ…。そっか日付変わったもんね」


『うん……。ごめん。』


「そうだよな。そんなんじゃないと蓮加からそんなこと言ってくれる訳ないと思った。」


『べ、別にそんな事ないけど…。』


「妹にあっさりと騙されるとはお兄ちゃんまだまだだな。来年は覚悟しとけよ〜」


悲しみが悟られないように、おちゃらけた返事をすると、逃げるようにリビングから去った


普段好きとか言われないから軽率に騙されてしまったな…。

別にわざわざあんな嘘つかなくていいのに。舞い上がっていた分ショックも大きい

妹に弄ばれた悲しみからか、
その夜はいつもより寝つきが悪かった。



────────



翌朝

時計を見ると8:03



「やっべ。遅れる」

『蓮加何回も起こしてあげてたんだけど?』

「まじごめん。」

寝つきが悪かっただけあってなかなか起きられなかったようだ。

『もう。そんなんで大丈夫なの〜?○○先輩っ』

「ほんとだよな…しっかりするわ」

『だ、大丈夫だよお兄ちゃんなら。元気だして?』

「大丈夫だよ。ありがとう。」

「じゃあ、行ってくるな」

『あ、あのさ。』

「ん?」

『蓮加お兄ちゃんのこと大好きだよ。』

「ありがと。でも流石にもう騙されな───」

『こ、これは嘘じゃないから』

『ごめん。昨日は』

「大丈夫だよ」

『今年は蓮加が支えられるよう頑張るからね』

「ん?どうしたの急に?」

こういう時、普段ならニヤニヤしている蓮加だが今日はやけに真剣な表情

「ってああ。そういうことか」

「ごめんな蓮加。蓮加が仕事の支えになってるのなんて当たり前だろ。」

『そんな事気にしてないよ。』

「嘘つけ。」

『も、もううるさい。馬鹿。』

「ごめんごめん。じゃあ、頑張ってくるよ」

『ねぇ、お兄ちゃん。早く帰ってきてね』



元カノが支えになっていたのに、蓮加が支えになったって言わなかったのにスネていたらしい。

ほんっとに可愛いらしい妹だ。

大事な妹に寂しい思いを
させる訳にはいかない。

いつも以上に仕事に身が入ってしっかりと定時で帰った○○でした。


〜いもらぶ エイプリルフール編おしまい〜

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?