フェミニストでない高市早苗をフェミニストが支持しなくてはならない理由


菅義偉首相が総裁選に出馬しない旨を表明したことで、衆院選の前に自民党総裁選が行われることが確実となった。
9月13日の現時点では、河野太郎、岸田文雄、高市早苗の三名が立候補を表明している。
今のところ、この中で国民からの支持率が高いのは河野太郎のようだ。

総裁選の場合党員でない国民に投票権はないので国民が直接総裁を決められるわけではないが、衆院選が直後に控えたこの時期国民からの支持は党としても無視はできないだろう。
その中にあって、フェミニストが支持しなくてはならない候補が一人いる。現時点で立候補を表明している唯一の女性候補、高市早苗である。(野田聖子も立候補に意欲を示しているとされるが、今のところ正式に立候補を表明していないのでここでは置いておく。)

高市早苗は現時点でも保守的なイデオロギーに基づく政策を掲げており、リベラル寄りのフェミニストとは表現規制を除いて相容れないように見えるが、それでもフェミニストは高市早苗を支持しなくてはならない。なぜならば、そうしないと彼女達のこれまでの主張と矛盾するからだ。

これまでの主張というのは、具体的に言うとジェンダーギャップ指数のことである。
これまでフェミニストは、世界経済フォーラムが毎年発表するジェンダーギャップ指数を金科玉条として扱ってきた。


毎年ランキングが発表されればメディアもフェミニストも大騒ぎをして、日本が男尊女卑で遅れた国かを力説し、そんな国に生まれる女性は非常に不幸だと嘆く。
上の例は毎年星の数ほど生み出される記事のほんの一部である。

フェミニストとマスコミは、まるで聖書か十戒かというレベルで、ジェンダーギャップ指数を男女平等、女性の幸福度、暮らしやすさ、女性が尊重されているかの絶対的なバロメーターとして振りかざしてきた。
この順位が低い日本は世界屈指の男尊女卑国家であり、日本で女性の地位が低く、男に迫害されている揺るがぬ証拠としてジェンダーギャップ指数を崇めたて祀ってきた。
ここまでジェンダーギャップ指数を絶対視している以上、ジェンダー問題に最大の関心を寄せるフェミニストとしてはジェンダーギャップ指数を高めることを最優先すべき、ということになる。

そして最初の話に戻るわけだが、総裁選に於いて高市早苗以上にこのジェンダーギャップ指数を上げられる候補は他にいないのだ。

詳しく説明するために、ここでジェンダーギャップ指数が一体どんな指数なのか、改めておさらいしよう。
ジェンダーギャップ指数は世界銀行が毎年発表している男女格差に関する指数で、労働、保健、教育、政治の四つのサブインデックスのスコアに基づいて決められている。
労働なら労働参加率や同一賃金、管理職比率、教育ならば識字率や就職率等とそれぞれの項目に基づいてサブインデックスのスコアが算出される。(この小項目の算出方法には色々突っ込み所も多いのだが、今回はそこには詳しく触れない。)
そしてこの4つのサブインデックスの平均を求め、それを総合スコアとする。
これらのスコアは基本的には1が最高で完全に平等、0が不平等を意味し、スコアが1なら自動的に順位は1位となる。(一部例外あり)

ちなみに日本の各項目は以下の通りになっている。

   順位 スコア 世界平均
経済 117  0.604      0.583
教育 92  0.983     0.950
保健 65  0.973     0.957
政治 147  0.061       0.218

そしてこれら4つのスコアを足して4で割ると、総合スコアが出る。
(0.604+0.983+0.973+0.061)/4=0.6552

そうすると、以下の結果になる。

   順位  スコア
総合 120      0.656

この総合スコアを国別に比較しランキング化したものが報道でよく目にするジェンダーギャップ指数ランキングで、日本は2021年は120位となっている。

スコアが1に限りなく近いにもかかわらず教育と保健の順位が92位、65位と奮わないのに気付いたかもしれないが、この二つの項目は各国で差が付かないように作られており、ほとんどの国がダンゴ状態で少しスコアが落ちるだけで順位が大きく落ちてしまう。そのため教育、保健は順位が多少低くとも総合スコア、総合順位にはほとんど影響していない。
つまり、教育、保健分野でジェンダー改革をいくら頑張っても、ジェンダーギャップ指数の総合ランキングを高めるうえではほとんど役に立たないということだ。

そして、マスコミの報道を見ていると日本は全ての分野で女性の立場が低い男尊女卑国家のように錯覚するが、実際にはジェンダーギャップ指数上でも経済、教育、保健と政治以外の分野全てで平均を上回っている。ダンゴ状態だと少しの差で大きく順位が落ちるだけで、その3分野はスコア上は特別日本の男女格差が大きいとは言えないのだ。
スコアを見ても政治だけが0.061と極端に低くなっている。
従って、もしジェンダーギャップ指数の順位を上げたければ、どれだけ頑張っても0.1〜0.3程度しか増やせない教育、保健分野にリソースを割くような無駄な努力をするよりも、0.95近くの伸び代がある政治分野に注力するのが最適解、ということになる。

ではその政治スコアはどう決まるか。具体的には、

①女性議員の割合(0.310)
②女性閣僚の割合(0.247)
③過去50年のうち、女性国家元首の在位年数(0.443)
の3つを出し、これら各項目の加重平均を政治スコアとしている。
※括弧内は各項目の重み


日本の場合、

         順位  スコア
女性議員の割合  140        0.110
女性閣僚の割合       126         0.111
元首在位年数            76         0.000

となっている。
これらのスコアを加重平均すると、

0.110×0.310+0.111×0.247+0×0.443=0.061547

となり、政治スコアが求められる。
日本はいずれも低い数値だが、日本で女性首相は過去にいなかったため③が0となる。また③は最も重み付けがなされているので、これが0だと政治のスコアも大きく落ちてしまう。
スコアが0にもかかわらず順位が76位なのは、日本と同様過去50年で女性元首が誕生しなかった国が多く、それらが揃って最下位になっている為である。


ここで他の国、バングラデシュの例を見てみよう。
バングラデシュのジェンダーギャップ指数は0.719、総合順位は65。日本よりもかなり上位に位置する。
そのサブインデックスは、

   順位 スコア
経済 147  0.418
教育 121  0.951
保健 134  0.962
政治    7   0.546

となっている。
バングラデシュは総合順位こそ日本より高いが、経済、教育、保健のいずれも日本よりスコア、順位が低い。
つまり、政治分野の差だけで日本より60位近く高くなっているということだ。

ではその政治の内訳はというと、

         順位  スコア
女性議員の割合  97          0.264
女性閣僚の割合  134        0.083
元首在位年数             1           1.000

となっている。
女性議員の割合は日本よりは高いがそこまで大きな差はなく、他の3分野での遅れを取り戻せるほどの数値ではない。
元首在位年数の1.000という数値が、政治、ひいては総合スコアに於ける日本との大きさを生み出している要因である。
バングラデシュは大統領と首相が存在し、首相を過去50年の内27年女性が務めている。
そのため完全に平等である1という評価になっているのだ。(ジェンダーギャップ指数は奇妙なことに大統領、首相のどちらかが25年間女性が務めれば1となる)それに、バングラデシュの女性首相は国父の娘という血縁関係が大きく、必ずしも女が出世しやすい環境が整っているというわけではない。

日本のメディアやフェミニストの言うことを聞いていると、ジェンダーギャップ指数65位と120位の国ではあらゆる場面で女性の扱い、立場が違うように錯覚するが、実際にはこのようにそれ以外のほとんどの項目で勝っていても元首の在位年数の違いだけで順位がここまで違ってきてしまう。女性元首(日本の場合首相)の在位年数は、ジェンダーギャップ指数ランキングを上げる上でそれだけ重要なのだ。
仮に今後25年間日本の首相を女性が務めた場合、日本のジェンダーギャップ指数は0.766となり、ランキングは(他の国に変化がなければ)アメリカを抜いて30位となる。
首相の性別以外日本社会に一切変化がなかったとしても、である。

つまり、女である高市早苗が総裁=首相となり、その在位年数が長ければ長くなるほど、その間首相がずっと寝ていてもジェンダーギャップ指数は自動的に上がっていくことになる。

ここまで元首の在位年数がランキングに与える影響が大きい以上、本当にジェンダーギャップ指数が重要なら女性首相誕生のチャンスを逃す手はないし、また逃してはランキング上位を目指すのは非常に難しくなる。


菅内閣が批判を受けたとはいえ政権交代の可能性はそれほど高くなく、野党も党首はほとんど男という現状を鑑みれば、ジェンダーギャップ指数を神聖視してきたフェミニストからすれば高市支持以外の選択肢は無いに等しい。

ところが肝心のフェミニストからの高市に対する支持は伸びていない。
それどころか下の記事のように、むしろリベラル、フェミニストからは他の男性候補よりも苛烈なバッシングを受けていると言っていい。




Twitterなどを見てもフェミニストの多くは「女だったら誰でもいいというわけではない」、「高市早苗は名誉男性でフェミニストではないから」などと述べて、高市を支持するつもりはないとしている。
一見尤もらしく聞こえるが、少なくともジェンダーギャップ指数は「女だったら誰でもいい」という指標であり、重要ポジションに就くのが女なら名誉男性だろうがフェミニストでなかろうが順位は上がる。
元首が女になるなら、極端な話寝ていようがレイプを合法化しようがジェンダーギャップ指数は上昇するのだ(ジェンダーギャップ指数に性犯罪を評価する項目はないため)。
そしてそんなランキングを持ち上げてきたのは他ならぬフェミニスト達である。


結論として、フェミニストは今までの主張を貫くなら高市早苗を支持しなくてはならないし、逆に支持しないのであればジェンダーギャップ指数を絶対的なものとして扱ってきた過去の自分達の態度、主張が間違っていたと認めることになる。

総裁選に自民党員以外が直接投票出来るわけではないとはいえ、もしフェミニスト達があくまで高市早苗を支持しないのなら、今後彼女達がジェンダーギャップ指数のランキングを持ち出してきても耳を貸す必要はない。
ジェンダーギャップ指数を上げる方法を拒絶したのは他ならぬフェミニスト達自身なのだから。


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