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G7の重要議題にスペースデブリ対策が定着しました

先週は7月8日月曜日に日本を出発して、12日金曜日の夜に帰国をしました。
7月9日から11日にかけて開催されましたG7科学技術大臣会合に出席するために、イタリアのボローニャに行ってまいりました。

2023年秋にIAEA総会に出席するために、オーストリアのウィーンに行ったんですけれども、その時と同じようにドイツのフランクフルトでトランジット・飛行機の乗り換えをしなければならないルートなんで、どっちにしても時間はかかるんですけれども、ロシアが起こした戦争のせいで、飛行機はロシアの上空ですとか周辺を飛べませんから、かなり大きく迂回をします。
よって片道で丸1日近くかかるという状況でした。
だから行きに丸々1日、帰りに丸々1日というようなことで、現地で実際に働けるのは2日半、こんな状況での出張でした。

今回、私自身が非常に強い問題意識を持って、そして粘り強く外交努力を続けてきたことによって、G7の中で大きな流れを作り出すことができたなと自負をしていることがあります。
それがスペースデブリ対策、いわゆる宇宙ゴミ対策です。
中国が2007年に行いました衛星破壊実験、これでは追跡可能なものだけで3,000個以上のスペースデブリが発生をして、そのほとんどが今後数十年にわたって地球を周回し続けると言われています。
またロシアも2021年に衛星破壊実験を行いました。
これで大量発生したデブリが国際宇宙ステーションISSですとか、各国の人工衛星を危険にさらしている、そういう状況です。
こういった細かいデブリだけではなくて、運用を終えた人工衛星や使用済みのロケットも大型のデブリになっています。
小さなデブリであっても、ISSや人工衛星に衝突すると深刻な被害が発生してしまいます。
欧州宇宙機関も分析をしているんですが、衝突すると大事故につながる直径1センチ以上のスペースデブリ、これは100万個を超えている、人工衛星が回避することができない直径10センチ以下が約9割を占めているということです。
宇宙飛行士からも直接お話を伺いました。
このチャンネルでも紹介したことがあるかもしれませんけれども、船外活動中にデブリが直撃したらそれで命を落としますし、過去にISSにデブリが接近したという時には、とにかく各国のモジュールのハッチを閉めて、皆で集まってとにかく無事に衝突が回避されますうにと祈るしかなかったということでした。

2023年5月のG7科学技術大臣会合は私が議長を務めましたので、何とかこのスペースデブリ対策を議題にしたいと考えました。
それで2023年5月の会議での議題ですから、その前の年2022年の秋から各国と議題に関する交渉を続け、根回しをしてたんです。
でも当時G7でこのスペースデブリ対策というのを議題にしたことは過去にないので、割と難色を示す国がいくつかありました。
職員も私も困っておりました。
その後、2023年2月にアメリカのネルソンNASA長官が来日されて私と会談した時に、とにかくスペースデブリ対策がどれほど重要かということをお話をしまして、ネルソン長官の賛同をいただくことができました。
その後5月に開催されましたG7科学技術大臣会合では、私の方から宇宙を持続的で安全に活用するためには各国がスペースデブリ対策に取り組む必要があるということ、それからG7から国際社会に向けて強く声を上げようということを提起いたしました。
その結果、2023年5月13日のG7科学技術大臣コミュニケにも、それからその後に開かれました5月20日のG7広島首脳コミュニケにもデブリの発生抑制、それからデブリを除去する技術開発の取り組みを強く推奨する旨のメッセージを盛り込むことができました。
その後も宇宙関係の国際会議が開かれますと、オープニングセッションなどでリモートであったり事前収録であったりするんですけれども、私が演説をさせていただく機会があります。
その度にスペースデブリの発生抑制と削減の必要性、それから破壊的な直接上昇型ミサイルによる衛星破壊実験、これの不実施、実施しちゃいけないよということを求めます、ということを強く訴え続けてまいりました。

2024年のG7ですが、2024年はイタリアが議長国だったんですが、G7プーリア首脳コミュニケこれもイタリアで開かれたものですが、この首脳コミュニケにも、それからG7科学技術大臣コミュニケにも引き続きスペースデブリ対策がしっかりと盛り込まれました。
このデブリ除去をはじめとする軌道上サービスの分野で、我が国の技術というのは世界最先端を誇っています。
以前にもご紹介したと思います。
デブリを除去するために宇宙空間を時速約2万8千キロで回転しながら飛んでいるデブリにぶつからないようにしながら近づいて除去するという一連の機能を備えた衛星が必要です。
日本のスタートアップであるアストロスケール社がこの技術を持っています。
現在はJAXAとアストロスケール社が協力をしながら、世界に先駆けてスペースデブリ除去技術の実証プロジェクトを進めています。

2024年2月にこのアストロスケール社の商業デブリ除去実証衛星「ADRAS・J」が見事打ち上げられました。
「ADRAS・J」はちゃんと軌道に投入されて、2024年5月23日になんと2009年に打ち上げられたH・ⅡAロケット15号機の第2段機体、非常にでかいやつです。
長さ11メートル幅4メートル、そして重さ約3トンという巨大な機体に、なんと50メートルの距離まで接近して定点観測することに成功しました。
「ADRAS・J」の撮った画像は6月14日に世界に向けて公開されたんです。
このデブリをこんなに近い距離で撮影した画像というのが公開されること自体が世界初でしたから、これは大変な改挙です。
アストロスケール社とJAXAは世界に先駆けて3トンクラスのでかい相対的に衝突リスクの高い大型デブリを商業的に捕獲して軌道変更してデブリを除去する、この道筋を示すことを目指しています。
2026年度以降は実際にこの大型デブリであるロケット上段の除去を行う、そういうフェーズに入っていくんです。
これは本当にすごいことで、アストロスケール社はこの能動的なデブリ除去に加えまして、衛星の寿命を伸ばす、そもそも衛星を長生きさせてデブリにしないという軌道上サービスの実施も目指しています。
どういうことかというと、その衛星に燃料を補給したり修理をする、こういう軌道上サービスの実施も目指しており、しっかりとした技術を持っているということです。

現時点でデブリ除去に成功した国や企業はありません。
アストロスケール社による本格的な商業化というものが実現しましたら、デブリ除去技術を持たない国に有償でサービスを提供して、世界に市場を開いていくことによって日本の経済力の強化にもつながっていくと大いに期待をしています。

既に日本では法律でもわりとしっかりとしたものを作っています。
私の所管になりますが、宇宙活動法という法律があります。
これで衛星の管理者に対して破砕予防ですとか衝突回避の措置を取るということを義務付けています。
そして管理が終了した衛星を適切に軌道から除去するように務めるということになっています。

アメリカでも任務を終えた低軌道の衛星を5年以内に燃え尽きる廃棄軌道に移すということを義務付けました。
このようにして各国のルール作りというのはボチボチ進み始めているんですけれども、宇宙空間にデブリを排出した国にこれを除去することを強制するような国際条約が存在しないんです。
これがむちゃくちゃ私は残念だと思っています。
情報通信ですとか情報収集ですとか、それから測位というものに人工衛星は非常に重要です。
特に災害対応でもそうです。
国防でもそうです。
気象観測にも必要です。
私たちのスマホの位置情報とかカーナビでも使われています。
今後、自動運転ですとかスマート農業でも必要です。
デブリの衝突で衛星が破壊されてしまったら大変な損害と支障が出るということになります。
ですから私は日本が優れた技術力によってベストプラクティスをまず作る、そして国際社会に発信する、外交力によって同盟国・同志国とともに、この宇宙利用に係る国際的な規範ルール作りを主導するべきだと考えています。

2022年に考えた上で職員の皆さんにも苦労をかけて各国に根回しをして、2023年のG7で初めて議題にしたスペースデブリ対策が2024年も主要議題となって首脳会合でも科学技術大臣会合でもコミュニケに盛り込まれてG7で定着してきたということを、とっても嬉しく、そして誇らしく思っています。

今日は第一弾のG7の報告ですけれども、最後に、これからもしも夏にヨーロッパ方面に行かれる方などがいらっしゃるかもしれませんので、くだらないかもしれませんが、ミニ情報を提供いたします。
私がお利口だったなと自分の思っているのは、イタリアのボローニャで宿泊する予定だったホテルの洗面所に何と何があるかっていうのを調べておいてよかった。
要は歯ブラシがついていない、それからシャンプーはあるけどトリートメントはないということを事前にチェックしておいて、歯磨きセットとトリートメントを持って行ったのは正解でした。
それから同行したのは科学技術政策担当の大臣秘書官だったんですが、彼は2023年も腹を壊しました。
ウィーンで、あちらの方は日本の私たちが飲んでいる軟水じゃなくて、固い水・硬水です。
あの時はウィーンのホテルの冷蔵庫の中の水はタダだったんです。
彼はガブガブ硬水を飲み続けました。
その結果、お腹の中に石が溜まって、その石を出す薬をお医者さんでもらったんですけれども、石が出るまでに1ヶ月かかり、毎日お腹が痛い痛いと苦しみ続けました。
彼は今回、日本から私が持参した麦茶も飲んだんだと思いますけれども、会議が長いんです。
G7の会議は第1セッション第2セッション第3セッション、次の日また第4セッション第5セッションとあり、クロージングセッションもだいたい非常に長いんですが、その間喉も乾いていたんでしょうが、会議机の上に配られた水には彼は一切手をつけなかった。
今元気です。
お腹に自信のない方は硬水を飲まずに、スーパーに行くと軟水のボトルも売ってる場合があるようですので、そのあたりお気をつけください。
あと硬水のシャワー、ほとんどボディーソープもシャンプーもあんまり泡が立ちません。
泡が立たないけれども、無理してガシガシ洗いますと、次の朝起きたら髪の毛がパシパシになっている、顔はゴワゴワになっているということになりますので、ヘアトリートメント、もしくはオイル、オリーブオイルとかありますよね。
あの手の物のご持参をお勧めいたします。

最後は割とどうでもいいことを申し上げましたけれども、暑い毎日、皆さんお元気でお過ごしくださいませ。
今日もありがとうございました。

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