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「外国人に選ばれる国」の前に「外国人を選ぶ」視点必要 入管法改正案 原英史参考人の意見を共有

日本が取るべき外国人政策については、衆議院法務委員会での原英史参考人の意見が的確だと思いましたので、共有したいと思います。

日本が取るべき外国人政策についてはいろんな意見があると思いますが、その中でも4月26日に衆議院法務委員会での原英史参考人の意見がすごく良かったのでここで紹介をしたいと思いますし、その動画をそのまま流したいと思いますが、内容としては5つのことを言われています。

1.外国人選ぶ視点
2.なし崩し移民入れ
3.技能実習生問題
4.外国人基本法要
5.受入行政体制改

1つ目が外国人を選ぶ視点ということで、選ばれる国の前に外国人を選ぶ視点が必要だというのはその通りだと思います。
2番目としては、日本は無し崩し主的に移民を受け入れてきたということを言われています。
日本は移民政策は取らないと言っているんですけれど、これは移民の定義によるものなんですけれど、国連で言う移民の定義ではないんですけど、ただ実質上は日本は移民政策だと無し崩し主的にやってきているという指摘。
3番目、技能実習制度の問題を悪用する企業があるということだったと思います。
4つ目、日本には外国人基本法がないのでそれをまず制定すべきではないかという意見もありましたし、あと受入れ行政体制が強化しなければいけない。
特に難民認定申請が殺到しているので、例えばそういう体制を強化していく必要があると、そういったことを仰っておられて確かにその通りだと思います。
そのお話の中で資料を配られています。

https://drive.google.com/file/d/15F_PmJRgwDRGE8liTP5M8KOIm2JNkoSY/view

産経新聞の記事は有料記事だったのでお金を出さないと読めないんですけど、リンクだけ貼っておきます。

もう1つは規制改革学会の提言というものです。

https://kaikaku-gakkai.jp/archives/


原英史参考人
政策シンクタンクの代表を努めています。
怪我をしてしまいまして、今日は座ったままでお話しすることをご容赦いただけましたらと思います。
誠に申し訳ございません。

私は外国人雇用協議会という一般社団法人の代表理事も務めています。
この団体は日本社会で存分に活躍できる、質の高い外国人材を受け入れる、環境を整えるという理念のもと運営している業界団体です。
ただ今日はこの団体の立場ではなく、個人として意見を申し上げたいと思います。
お話ししたいことが5点あります。

まず1点目です。
外国人に選ばれる前に、外国人を選ぶことが重要だということです。
外国人に選ばれる国になるためにというフレーズが政府の説明でしばしば出てきます。
マスコミの論調も揃って、このままでは日本は外国人に選ばれなくなってしまう、外国人に選ばれる国にならないといけないと唱えています。
私はこれに若干違和感があります。
外国人の中には、日本文化を愛し、地域に溶け込み、経済社会に大いに貢献する、来てほしい外国人もいます。
一方で経済社会に貢献せず、犯罪を起こし、脱税や社会保障制度の悪用などを行う、来てほしくない外国人もいるわけです。
後者の来てほしくない外国人に選んでもらっても、害悪でしかありません。
従ってまず日本国が外国人を選ぶということが決定的に重要だと思います。
従ってこれが抜け落ちたままではいけないということだと思いますが、これが抜け落ちたまま選ばれる国を目指して頑張っても、来てほしくない外国人ばかりが日本を選び、来てほしい外国人は日本から逃げてしまうということにもなりかねません。
残念ながらこれまでの政府の外国人政策、また今後の見直し方針においても、外国人を選ぶという視点が欠落しがちであるように思います。
ここがまず大きな問題ではないかと思います。
日本に限らず諸外国においても、移民をめぐる議論、賛否が大きく分かれがちです。
イデオロギー的な対立、感情的な対立にも陥りがちです。
解決の道は、安易な受け入れではなく、一方で外国人を排斥するということでもなく、日本にとって有用な外国人材を選び抜いて受け入れるということではないかと思います。
詳しくは資料でお配りしましたが、産経新聞の2023年12月10日付、私のコラム「選ばれる国の前に」お配りしましたのでご参照いただけましたら幸いです。

2点目です。
従来の外国人政策は、無し崩しの移民受入れだったと思います。
政府はこれまで移民政策は取らないと言い続けてきました。
実は第二次安倍政権の初期に一度、経済財政諮問会議の小委員会で「毎年20万人の移民を受け入れた場合にどうなるか」という試算が示されたことがあります。
これは試算を示しただけで猛反発が起きました。
それで政府はそれ以降「移民政策は取りません」と言い続けることになりました。
しかし、その間に実際に現実には、何が起きたか。
外国人労働者の数は、2012年は68万人でしたが、2023年には205万人です。
11年で3倍、137万人増えました。
実質的には毎年12万人の移民受入れを行ってきたのに等しいということだと思います。
また政府は建前では単純労働の外国人は受け入れないとも言っていますが、これも実態とは乖離しています。
137万人、11年で増えたうちの相当部分は技能実習と資格外活動です。
技能実習は、言うまでもなく国際貢献のために技能水準の低い外国人を受け入れる仕組みです。
これが2012年に13万人から、2023年に41万人に増えました。
資格外活動は主に留学生のアルバイトです。
当たり前ですが、技能水準の低い外国人です。
多くの国では留学生は基本的にアルバイトは許されないというのが通常だと思いますが、日本では異例なことに週28時間のアルバイトが認められているわけです。
この資格外活動は2012年に11万人、2023年には35万人に増えました。
要するに過去10年ほどの間に起きたことは、実質的には年間12万人の移民を受け入れてきた、その相当部分は単純労働だったということです。
しかも建前上は移民政策は取らないと言いながら、無し崩しで移民受入れを行ってきたということです。
なぜこんなことになったかというと、安価な労働力を求める一部産業界の要望に政府が応えてきたからです。

3点目です。
技能実習制度の問題と解決策についてお話をします。
まず技能実習制度の根本的な問題は、安価な労働力を求める一部産業界に悪用されてきたということだと思います。
もちろん全てが悪用なわけではありません。
制度が有効に活用されている良い事例もあります。
例えば私が存じ上げている群馬県の農業生産法人さんは高い給料を出して快適な寮を自前で建設して、経営者自らアジア各国に本人と家族の面談に赴いて、優秀な人材を受け入れ育て上げるということをやっています。
他にも技能実習生たちが地域社会に溶け込み地域活性化する、また帰国後も日本との架け橋になるといった事例もあります。
しかし一方で、悪用の事例も少なからずあります。
生産性の低い業界や企業が高い賃金を払えないので、人手不足に陥って生産性を高めて賃金を上げる代わりに、安価な労働力としての外国人に頼るケースです。
政府はこうした一部業界の要望に応えて、対象業種を追加して悪用を黙認してきたということだと思います。
結果として3つのことが起きました。
1つ目は安価な労働力を求める企業が利用するので、おのずと劣悪な労働環境、そういった人権問題が生じがちになりました。
このため失踪などの事案も生じました。
2点目に未熟練労働者を多く受け入れる中で、どうしても犯罪や社会的トラブルといったことが生じがちになるということも出てきます。
3点目に受け入れた企業にとっては賃上げをせずに生き延びる道ができました。
生産性を高めて賃金を上げる代わりに、外国人労働力を受け入れて生き延びて、結果として賃金は低迷し経済成長が阻害されました。
日本は残念ながら今、他の国々を比べて相対的に賃金の低い貧しい国へと転落しつつあります。
要因の1つがこの技能実習制度の悪用だと思います。
賃金水準が低迷するので日本は選ばれない国になるということだと思います。
本来の解決策は安価な労働力を求める企業には、制度を利用させないということだと思います。
そうすれば、この3つの問題はいずれも解決に向かうはずです。
例えば地域業界の賃金水準よりも一定比率以上高い賃金を払う企業にしか制度を利用させないという要件を設ければ、悪用の可能性は相当程度なくせると思います。
今回の改正案は、残念ながら根本的な解決にはなっていないと思います。
技能実習制度の廃止ということですが、名称育成就労とする、名目があまりに実態と乖離してしまったので、人材確保を人材育成に改める、いわば看板の掛け替えに近いと思います。
転職を一部認める、これは労働環境の改善、人権問題の解決のために一定の効果があると思います。
しかし安価な労働力として悪用される可能性が残されている以上、根本的な解決にはならないと思います。
また、政府が繰り返し唱えている外国人に選ばれる国、これも果たされないと思います。
安価な労働力の受け入れを続けて、さらに拡大していくことになれば日本はさらに相対的に貧しい国になります。
むしろ、ますます選ばれない国になっていくということではないかと思います。

4点目です。
個別制度の見直しの前に外国人基本法を制定すべきと考えます。
これまでの対応を振り返ると、無し崩しで移民受入れを行ってきた。
その中で特に技能実習について劣悪な労働環境などの問題が生じた、それに対処して技能実習という名称を変えて、少し手直しをするということだと思います。
こうやって戦略性を変えたまま、無し崩しとパッチワーク対応を続けているので根本問題が解決しません。
技能実習などの個別制度の見直しを行う前に、まず外国人受入れについて、国としての基本戦略が必要だと思います。
そして、そのために外国人基本法という枠組みが必要だと思います。
外国人受入れは国民にとって、また国の将来の有り様にとって重大な影響のある事柄です。
従って、行政の担当部局で検討して戦略を策定するといったことではなく、国民的議論を経て国会での審議を行って外国人基本法を制定するということであるべきだと思います。
その中でまず何のために外国人を受け入れるのか、この目的を明確にすることが重要です。
目的は人手不足の解消と考えられがちなのですが、この考え方は私は危ういと思います。
もちろん業種によって深刻な人手不足が生じているということは認識しています。
しかし、人手不足は安易に解消してしまったら賃金が上がらないのです。
日本をより貧しい国にしていくことになりかねないと思います。
そうではなくて、日本を豊かにすることを目的にすべきだと思います。
生産性を高めて経済社会を発展させる、日本を豊かにすることに貢献できる質の高い外国人材を選んで受け入れていく、そうした考え方を明確にすべきでないかと思います。
その上で具体的にどのような外国人をどう受け入れるのか、どんな人材は短期で受け入れ、どんな人材は中長期なのか、どこの国からどの程度の規模で受け入れるのか、そういった具体的な戦略を定める必要があります。
もちろん経済政策や労働政策との整合性が求められます。
経済政策の観点では生産性を高めて日本経済を強くするためにどんな分野でどんな外国人を受け入れるのか、労働政策の観点では賃上げを十分達成するためにどの程度の規模までなら外国人を受け入れてもいいのか、またさらに外交安保政策の観点で人的交流を強化すべき国から重点的に受け入れていく、そういったことも含めた戦略が必要だと考えます。
別紙の2でお配りをしていますが、制度規制改革学会、これは私も所属する学会なんですが、その有志による外国人政策に関する意見書、経済成長に貢献する外国人受入れへの見直し書という2024年1月付の文書をお配りしています。
実は岡部参考人も有志のお一人なんですが、詳しくはこちらもご参照いただけましたらと思います。

最後に5点目ですが、外国人受入についての行政の体制強化にお話ししたいと思います。
近時、在留資格審査の遅延がとても目立ちます。
別紙の3で、外国人雇用協議会の要望書、東京出入国在留管理局管轄における就労関係在留資格の審査遅延に対する要望、2023年11月15日付の文書をお配りしています。
2022年10月の水際措置緩和以降、就労関係の在留資格申請が急増しました。
その後、特に東京入管局において、審査の大幅な遅延が生じるようになりました。
それまでは1ヶ月から3ヶ月程度だったものが、4ヶ月から8ヶ月、場合によってはそれ以上かかるということが状態化しました。
就労を希望する外国人が何で待たされるのかわからないという状態で、待ちきれずに断念をしてしまう。
また企業側で人員確保の計画変更を強いられるといった、現場では大混乱が生じました。
この要望を申し上げた後、12月に入管庁で急遽応援体制が組まれて一旦問題解消したのですが、2024年2月頃から再び遅延が生じつつあるような印象を現場では持っています。
言うまでもなく、これは申請件数の急増に審査体制が追いついていないためです。
人員の増強、またデジタル化の推進によって人を介さず効率化できることは極力効率化する、この両面で体制強化を緊急に行う必要があります。
こんな状態が続けば、それこそ本当は日本に来てほしい外国人が日本を選ばなくなってしまうという重大な要因になりかねません。
さらに体制強化が必要なのは審査部門だけではありません。
戦略的な外国人政策を進める上で、省庁横断的に戦略を策定し実施する体制の創設も必要です。
労働行政との連携強化も課題です。
例えば、不法就労防止、今回の改正案でもその関係の事項が盛り込まれていますが、これは警察と入管当局だけで取り締まりをやっても限界があって、やはり労基署の役割の強化を検討すべきではないかと思います。
こういった外国人政策についての包括的な体制整備を早急に行う必要があると考えます。
以上です。
ご清聴ありがとうございました。

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