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猫ちゃんに水をたくさん飲ませるコツ

こんにちは!犬猫の獣医師、あんじゅ(@vets_magazine)です。

うちの猫、あんまりお水飲まないんだよね

獣医さんに「お水たくさん飲ませてください」と言われたけど、そんな事言われても・・・。どうやったらお水たくさん飲んでくれるの?

という疑問に答えます。

猫ちゃんはもともと砂漠の生き物。

濃いオシッコを作ってなるべく尿量を少なくし、少量の水でも生きていけるように進化してきました。

元々あまりお水を飲まない動物なのです。

そのためか、猫ちゃんには以下のような病気が頻発します。

  • 猫特発性膀胱炎

  • 尿路結石

  • 慢性腎臓病 etc.

これらの疾患を持っている猫ちゃんは、お水を積極的に飲むことが重要です。

また、今はこのようなトラブルがない猫も、飲水量が低下することによってこれらの疾患を発症するリスクが上がってしまいます。

でも、猫ちゃんに「たくさん飲んでね〜!」と伝えても飲んでくれませんよね。

この記事では、

  • 猫ちゃんにお水を飲まる工夫

  • 猫ちゃんの水分摂取量を増やすアイテム

などを紹介したいと思います。

特に尿路疾患を抱えている猫ちゃんの飼い主さんには参考になるかと思いますよ〜!

猫の飲水量が減ると病気のリスクが上がる

猫ちゃんの飲水量が減少すると、以下の病気のリスクが上昇すると言われています。

尿路結石

尿路結石とは、腎臓(おしっこを作る場所)や膀胱(おしっこを貯める場所)などで硬い石ができてしまう疾患です。

腎臓でできた腎結石は、尿管といわれる細い管でつまりやすく、膀胱でできた石は尿道という管に詰まることがあります。

そうすると、腎臓で作られた尿が体外へ排出できなくなります。

オシッコの中には、体で作られた毒素がたくさん含まれているので、尿が出ないということは体の中に毒素が蓄積していくことになります(これを尿毒症といいます)。

また、作った尿の出ていく先がないため腎臓の中がパンパンになり、腎臓が傷ついて慢性腎臓病を発症することもあります。

尿路結石の危険因子は、

  • 飲水量が少ない

  • 尿回数が少ない

  • 食餌が体質に合っていない

  • 生活環境ストレス

など、多岐に渡ります。

特に飲水量とトイレの回数は重要です。

飲水量が少なくおしっこを溜めがちな猫ちゃんは、濃いおしっこが膀胱内に長時間停滞することで結石ができやすくなります。

猫特発性膀胱炎

膀胱炎というと、おしっこの中に細菌が感染して炎症が起きる、いわゆる細菌性膀胱炎をイメージされる方が多いと思います。

しかし、猫ちゃんには細菌性膀胱炎以外の膀胱炎が多発します。

それが猫特発性膀胱炎です。

この疾患、実は原因はよく分かっていません。

血尿や頻尿など膀胱炎の症状が出ているのにも関わらず、尿検査で異常が無いことが多いのです。

ただし、この病気の発症要因はいくつか分かっています。

それは前述した尿路結石とほぼ一緒で、

  • 飲水量が少ない

  • 尿回数が少ない

  • 食餌が体質に合っていない

  • 生活環境ストレス

の大きく4つです。

特にストレスの影響が大きいと言われており、経験的には多頭飼育しているご家庭で多発する印象を持っています。

本来単独行動を好む猫は、狭い空間に他の猫がいることにストレスを感じやすいのかもしれないですね。

ストレス解消法は以下の記事で別途解説しています。

そして、飲水量もまた大切です。

いっぱいお水を飲んで薄いオシッコをどんどん流すことで、尿路トラブルを減らすことができます。

便秘

猫は便秘が多い動物です。

おそらく皆さんがイメージしているのは、「ちょっと最近便秘気味だな〜」くらいの軽い便秘だと思いますが、猫の便秘はそんな軽いものではありません。

程度の差はありますが、大腸に便がこれでもかというくらい溜まった結果、ビロンビロンになって機能しなくなります。これを巨大結腸症といいます。

正常な大腸は、便が溜まると押し出す動きをして排便行動を助けるのですが、巨大結腸症となった猫は便が溜まるばっかりです。

便が出ていってくれないのでお腹が痛いし、胃や小腸を圧迫して食欲不振や吐き気を催すことすらあります。

治療は、

  • まずはお薬や食餌療法で便の質を改善

  • あまりに溜まりすぎたときは浣腸

  • 最終的にどうにもならないときは、結腸亜全摘術(外科的に大腸を切除する)

といった流れになります。

猫の便秘は想像より大変!

さて、便秘の危険因子ですが、これまた飲水量が関わってきます。

便秘の一番のリスクは脱水です。

特に腎不全を患っていて脱水しやすい猫ちゃんは、カピカピの硬い便になって便秘になりやすいです。

いっぱいお水を飲んで便秘を回避しましょう!

猫にお水を飲ませるためにできること

ここからはいよいよ、猫ちゃんにお水をたくさん飲ませるために、おうちでできる工夫を解説していきます。

お水の設置場所を増やす

まずはお水の設置場所を増やしましょう。

皆さんの自宅には、水のお皿、いくつ置いてありますか?

一つしか置いていない方が多いのではないでしょうか。

たとえ1匹しか飼っていなくても、水のお皿は少なくとも三つ用意してあげてください。

  • 水が目に触れる回数を増やすことで、頻繁に「水飲もうかな〜」という気持ちになってくれる効果あり

  • 1つのお水が空になっても予備がある安心感

  • お皿の材質や大きさ、形を少しずつ変化させることで、お好きなお皿に出会える確率が増える

といったメリットがあります。

お水のお皿を工夫する

猫はお水に対するこだわりが強いです。

  • ステンレスのお皿は臭くて嫌

  • お皿が高い位置にないと嫌

  • 流水じゃないと嫌

  • キレイな水じゃないと嫌(これは人だってそう。)

こんなこだわりを持った猫さんが結構います。

お水のお皿を少し工夫してみましょう。

お皿は陶器がおすすめ

まずお皿の材質は陶器がおすすめ。

ステンレスや金属製のお皿はスタイリッシュですが、匂いに敏感な猫さんは水に金属の匂いが付いてしまって気に入らないことがあります。

また、プラスチックのお皿は表面にごく小さな穴が空いているので、汚れが溜まりやすくこれまた衛生的によくありません。匂いも次第に付いてくるでしょう。

陶器のお皿は汚れがつきにくく洗いやすくて衛生的です。

重さもあるので、位置がずれて猫が飲みにくかったりこぼしたりすることもありません。

同じ理由で、ごはんのお皿も陶器がおすすめです。

↓猫壱のウォーターボールは高さがあるので猫が飲みやすく、メモリが付いているのでざっくりとした飲水量もわかっておすすめです。

↓これも可愛い・・・。欲しい・・・。

流れるお水を用意する

流れるお水が好きな猫ちゃんがいます。

私が大学生時代、研究室で飼っていた猫は、水道の蛇口から出るお水が大好きでした。

喉が渇くとキッチンに駆け寄ってきて、蛇口をペロペロ舐めるので、学生がよく蛇口を開けて水をやっていました。

とはいえ、常に蛇口を開けておくわけにもいきません。

そこでオススメなのが以下の商品です。

循環式でずっとお水が上から下へ、滝のように流れているので、流れる水が好きな子にはオススメの商品です。

この商品の推しポイント

  • 自動給水器では珍しいセラミック製

  • 重みがあるので猫がいたずらして倒す事故も起こりにくい

  • 電源ガードが付いている

  • 静音

  • 2重フィルター

  • 不在時に停電しても下に溜まった水を飲める

  • 水飲み台の位置が高い

  • お掃除が週に1回でよい

他にも商品がありますが、なかなか陶器の自動給水器は売っていません。清潔感があるしずっしり感があって安定感があります。

デザイン性もGood!

ただし、このような自動給水器に全く興味を示さない子もいます。

買ったはいいものの全然飲んでくれない、あるいは警戒して近づかないということは、まぁまぁあります。

そんなに高い商品ではないので、1度買って試してみるのもありかと思います。
猫ちゃんを複数飼っているなら、誰か1匹でも好んで飲んでくれる子がいれば買った甲斐はありますね。

もう少しお値打ちもので試してみたい人には、こちらがおすすめです。Amazonでの評価もかなり高いです。

ウェットフードを利用する

キャットフードには、ドライフード(いわゆるカリカリ)と、ウェットフードがあります。

ドライフードの特徴

・腐りにくいから置き餌できる
・少量でカロリーが取れる
・低コスト

・水分量が少ない
・消化性が劣る

ウェットフードの特徴

・水分量が多い
・消化性か高い(お腹に優しい)

・ほぼ水分なのでカロリーを取りづらい
・腐りやすく置き餌に向かない
・コストが高い

どちらも一長一短ありますが、水分摂取量を増やすためにはウェットフードがおすすめです。

しかし、ウェットフードはほとんどが水分なので、ウェットフードだけで1日分のカロリーを摂ろうと思うとかなりの量を与えなければいけません。

おまけに高価なので、全部をウェットフードで賄おうとするとかなりお金がかかります。

例. 消化ケア i/d チキン&野菜入りシチュー缶の場合

3kgの成猫の場合、1日2.6缶を食べなければいけません。
i/dシチュー缶は375円/缶(2022年3月時点)であり、一日あたり975円となります。

また、猫ちゃんは少しの量を何回かに分けて気まぐれに食べる習性があります。

日中留守にする間も、できれば置きエサしたいですよね。

ウェットフードは水分量が多いため痛みやすく、置きエサは難しいのが欠点です。

そこで、おすすめの方法は、

  • 朝ごはん、夕ごはん、夜食など家にいる時間帯のごはんはウェットフード

  • 日中はドライフードを置きエサ

という方法です。

これであれば、全部をウェットフードにする必要がないので経済的だし、ドライフードの「置きエサしやすい」という長所も取り入れられますね!

疾患を持っている子は基本的にその疾患に応じた療法食を食べなければいけません。

※療法食は疾患によっては薬と同じ効果を持ちます。必ずかかりつけの動物病院で処方してもらいましょう。

これらの療法食の多くは、ドライフードの他にウェットフードも販売されています。

最近は嗜好性もかなり改善されて美味しくなったみたいだよ!

現在療法食を食べているならば、1度ウェットフード版も試してみてはいかがでしょうか。かかりつけ医に相談してみましょう。

経口補水液

経口補水液というものが、市販されています。

いわゆるポカリスエットのようなもので、「病院で点滴剤として使う生理食塩水を飲みやすくしたもの」と考えるといいでしょう。

普通の水と何が違うかというと、

  • 電解質(ミネラル)や糖分などが含まれていて、体液の組成に近いこと

  • 商品の多くは猫が好んで飲んでくれるよう美味しく作ってあること

です。

注意点として、腎臓病の子はかかりつけの先生に相談してから投与するようにしてください

腎機能の低下によりミネラルのバランスを調節できなくなっている可能性があります。

経口補水液に含まれるミネラル成分はナトリウムやカリウムなど、体にとって重要な成分ばかりです。

多すぎても少な過ぎても生命の維持に悪影響を及ぼします。

勝手に経口補水液をジャブジャブ与えてミネラルバランスを崩すと大変ですから、必ずかかりつけの先生に相談してからにしましょう。

そうでなければ、基本的にはポカリスエットと同じ感覚で飲ませてOK。

むしろ飲水量を増やしたい猫ちゃんの心強い味方になってくれます。

例えば、以下の商品。私の動物病院でも取り扱っています。

PURINAはロイヤルカナンやヒルズと並んで信頼度の高いペットフードメーカーです。

そんなPURINAが出している経口補水液。

特徴は以下の3つ

  1. 個包装なので使い切りやすくて衛生的

  2. 旨味成分グリシンを配合

  3. オズモライト配合で猫のスムーズな水分補給をサポート

オズモライトという成分は水分補給や水分維持を助ける成分らしい。

成分表
ホエイプロテイン、チキンレバー、アミノ酸類(グリシン)、グリセリン、増粘安定剤(グァーガム)、ミネラル類(カリウム、クロライド)

こちらの商品は動物病院専用ですが、お試しセットなら公式ページから買えるようです。

PURINA公式ベージ

継続的に使いたい場合はかかりつけ医に相談してみましょう。

ちゅーるを水で解かして与える

この方法は私が尊敬している獣医師インフルエンサー、獣医にゃんとす先生がInstagramで発信していて知りました。

作り方は簡単。

  1. チュール1本をお皿の中に入れ、適量の水でそれを薄めます

  2. チュール風味がついた、美味しいお水の出来上がりです!

チュールが大好きな猫ちゃんにはとても効果があると思われます。

腎臓病の子は腎臓病用のチュールが売ってるので、こちらを使うことをオススメします。

まとめ:猫に水を飲ませるためには試行錯誤が必要

猫ちゃんに水を飲ませるのは簡単ではありません。

いろんな方法を初回しましたが、どの方法が合っているかはその子その子で違います。

実践できそうなものを1つずつ試し、うまくいった方法を継続してあげてください。

以上、参考になれば幸いです。


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