血液検査で調べる項目まるっと解説集
「せっかく血液検査してもらったけど、何の数値なのかよく分からない」
という飼い主さんのために、血液検査項目の解説集を作りました。
一般的に動物病院で調べる血液検査の項目を、まるっと分かりやすく解説したnoteです。
こんな飼い主さんにオススメです。
定期的に健康診断を受けているけれど、項目が多すぎてどう解釈すればいいのか分からない
肝臓の数値が高くて、薬を飲みながら経過観察を受けているけれど、肝臓の数値って何種類もあって違いが分からない
いつも健康診断でC判定が付く項目があって気になる。本当に経過観察でいいの?
血液検査は、物言わぬ動物たちの健康状態を知るために、非常に重要なツールです。
しかし、検査項目は非常に幅広く、かつ複雑で、一般の飼い主さんには到底理解しづらい内容となっています。
血液検査の項目の具体的な中身を知っておくことで、今までよりも動物の健康状態を深く理解することができますし、闘病中の犬猫の飼い主さんは、より深く病状を把握することができるでしょう。
獣医師からの説明も飲み込みやすくなるので、積極的に治療に参加することができ、獣医師と飼い主さんの2人3脚で治療を進めることができます。
全部で2万文字強と、かなりボリューミーな内容となっていますので、一気に読むのではなく、血液検査データを手元に用意し、気になる数値だけ目次から選んで、都度都度読んでいただくことをおすすめします。
※最初の1項目のみ無料公開しています。2つ目以降も同じような構成で解説していきます。
※基準値は検査機器によって多少前後します。
※獣医学生さんや動物看護師さんのお勉強にも役立つかと思います。
※返金保証も付けております。内容にご満足いただけなかった場合には、全額返金致しますのでご安心ください(note運営事務局の審査が入る点はご了承ください)。
血球計算(CBC)
血液は細胞成分(血球)と液体成分(血漿)で構成されています。そのうちの細胞成分を分析するのが「血球計算」です。
血液中に含まれる細胞は3種類。赤血球、白血球、血小板です。
白血球数(WBC)
白血球とは、体に入ってきた敵と戦う、兵隊のような細胞です。
細菌やウイルスが感染したときに、奴らをやっつけてくれます。
細菌やウイルスが体内に入ってくると、骨髄で貯蔵されていた白血球が一気に血液中に動員されます。
つまり、血液中の白血球数が上昇しているということは、今、体のどこかでバトル(炎症)が起きているということ。
「炎症の指標」と覚えておくといいでしょう。
白血球数が上昇しているときは、併せてCRP(犬)やSAA(猫)といった炎症マーカーを調べることが多いです。
白血球と他の炎症マーカーが同時上がっているのであれば、「やっぱりどこかで炎症が起きている!」ということになります。
体温測定も重要ですね。白血球数上昇とCRP(or SAA)上昇に、発熱が加われば、より炎症性疾患の可能性が高くなります。
体のどこに炎症があるのか、他の検査も組み合わせて精査していくことになるでしょう。
実は炎症以外でも白血球数が高くなる疾患があります。
それは、白血球の腫瘍です。
白血球のなかでも、特にリンパ球という細胞は腫瘍化しやすく、リンパ腫や急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病といった腫瘍は、すべてリンパ球由来のガンです。
炎症なのか腫瘍なのか見分けるためには、血液塗抹検査という追加検査を行います。
血液塗抹検査は結構アナログな検査でして、血液を1滴スライドガラスに乗せて顕微鏡で観察します。
白血球の種類ごとに数をカウントし、内訳を調べることができます。
一般的には、体の炎症反応であれば「好中球」、血液のガンであれば「リンパ球」が増加している場合がほとんどです。
逆に白血球数があまりにも低い場合は、防衛力が低くて感染に弱い状態であることが伺えます。
どうして兵隊の数が少ないのか、調べる必要があります。
猫の場合は、猫エイズウイルス感染症や猫免疫不全ウイルス感染症などのウイルス疾患により、白血球減少が見られる場合があります。
白血球数が低い場合には、ウイルス検査を受けておくと安心です。
抗がん剤治療中の動物は、抗がん剤の副作用により、白血球数が低下します。
抗がん剤は、ガン細胞だけではなく、白血球をも叩いてしまうのです。
抗がん剤投与の前には必ず白血球数を測定し、白血球数があまりにも低いときは、感染症のリスクが高まるため、(そして白血球がもはや再生できないくらいにダメージを食らうことになるため、)その週の抗がん剤投与を延期することがあります。
そして、白血球数の低下でもう1つ覚えておきたいことがあります。
細菌性腹膜炎(お腹の中で感染が起きている状態)や子宮蓄膿症などの重度の感染が起きている場合、白血球が戦いの場に動員されすぎて、血液中の白血球数が少なくなってしまうことがあります。
つまり、白血球がもっともっと必要な状況なのに、供給が間に合っていない、かなり危険な状態です。
飼い主さんに説明するときは、「体が負け始めている」と表現したりします。打開策がなければ、予後不良であることが多いです。
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