晴れ時々マサラ #11 バッタリ遭遇とカード紛失の顛末
皆さんこんにちは、楽しいインド案内人アンジャリです。毎週月曜更新のこのシリーズ、まったくスケジュール守っていませんが続けます!
2018年7月、当時の興奮のままに書いた文章をブログに再掲……したのをさらにnoteに再掲。使い回し? 違います再記録ですっ!
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ちなみにこのときのホテルは2019年10月のツアー「マダム・イン・デリー」でも使ったル・メリディアンに下見を兼ねて泊まりました。メリディアン、おすすめですよー(義理があるので最後に紹介するぞ)。
弾丸デリーの不穏な幕開け
いろいろと信じられないことが起きている。「きっとうまくいく」「PK」で知られるラージクマール・ヒラーニー監督にバッタリ会った。
今回、出だしから不穏。
まずは仕事なのに名刺を忘れた。それは非常にカッコ悪いけど私のキャラに名刺以上のインパクトがきっとあるから、まあいいとして。
ホテルに着いたら、勝手にアップグレードしてくれてスイートルームになった。今回、なんの色気もない下見と買付で外出ばかりになるので、広い部屋もゆっくり滞在する時間はあまりない。できれば新婚旅行とかそういう機会に利用したいものだ。クラブラウンジもどうぞご利用くださいとありがたい申し出。
しかしなんと。
クレジットカードがない。
ロビーで手荷物とスーツケースをひっくり返して見たが(高級ホテルでこういうの、とてもみっともないです)、ない。
今回に限って予備の別のカードを日本においてきた。現金の持ち合わせはあまりない。ATMで引き出せる口座にはあまり残高がない。
ものすごくヤバイ。
とりあえず旧知のMr.外交官に電話すると、幸い出張などではなく、日曜だしデリーの自宅にいるという。
「しょうがないなあ。いざとなったら立て替えてあげるから心配するな」
これまで何回となく助けてもらった私のライフライン氏につながり、ひとまず心は落ち着いた。異国で泣きつく人がいるのは大変心強い。頼れる強い男サイコー。いつもありがとう。
朝、スマホケースのいつもの場所に入っているのは見た。盗まれるタイミングがまったくなかったため、機内で充電しているときに逆さまにシートポケットに入れていて、スルッと落ちたに違いない。
カードを探せ大作戦
チェックインを担当したホテルマンは若いけれどテキパキとデキる感じの男子。搭乗券を預けてさっそくエアインディアに電話してもらうものの、うーむそこはあまり期待できそうにない。
ちゃっかりチェックインはさせてもらい、部屋で1時間待っても音沙汰なし。東京支社の営業部長Kさんに連絡して日本からプッシュしてもらおうかと思いつつ、そういう裏技をここで使うのはフェアじゃない気もするし、今回は添乗でもないし、やめておく。
カード会社に電話すると、まだ不正利用らしき履歴はないという。緊急カードを発行してホテルに届くのは早くても3日後。わたしゃその日にはもう日本だ。
ひとまず、カードは止めずに待つことにする。支払い関係がすべてこのカードなので、再発行で番号が変わるとひじょうに面倒臭い。
デリーには何度も来ているが、この季節は着くのがだいたい17時前後。ゆっくり出てくる荷物をピックアップし、夕方の渋滞のなかタクシーに乗って市内に着いたら19時半とか20時になることが多い。飛行時間は8時間超で、成田が混んでいてなかなか飛び立てなかったりすると、成田で1時間待機になったりもする。
それが今日はサクッと離陸。しかも7時間で着き、まさかの15時12分着。こんな早い時間に着くの初めてよ。
まだ明るいうちに着いたし、先週公開されたばかりの"Sanju"を観に行こうと思っていたが、カード紛失で時間を取られてしまい、20時スタートの回はちょっと難しそう。近場とはいえ単身だし23時の回はさすがにやめておいたほうがいいかしら。
厚かましさで生き抜く
でもまあ、焦っても仕方ないなとカード会社には止めずに待つ旨を伝え、ありがたくクラブラウンジ訪問。世の中、お金持ちっているのよねー。オフシーズンだからわりとお財布に負担がない感じの料金で泊まれているけど、こういう世界も知っておくのはとても大切。
ツアーの添乗ではありえないけれど、単身で飛行機に乗ったりホテルに泊まったりすると、オーバーブッキングだったりたまたまフロア改装中だったりで、勝手にビジネスクラスやスイートルームにアップグレードされることがたまにある。
ブランドものを着ているわけではないものの、ある程度きちんとした身なりをしておくのがいいのかも。国籍日本人、40代、とくればまあまあ筋のいいマダムと思ってもらえるような気がする。カードをなくして現金も持ってない身ではあれ、堂々としていればいいんです(友人一同の呆れ顔が脳裏をよぎりますがこの厚かましさ、インドではとても大事だと思います)。
それでも映画は観にいくのです
クラブラウンジの軽食はなかなか充実していたので、夕飯がてら食べて、やっぱり映画を観に行くことにした。今回、気軽な食堂がないエリアだし、ひとりでちゃんとしたお店に入るの面倒だからこういうのすごく助かる。
手持ちのお金もあまりないし、ホテルの車の送迎はバカみたいに高いし、20時からスタートなのに現在19時50分でUberを呼んで配車を待っていたら確実に間に合わない。
Uber登場以来あまり乗らなくなったけど、たまにはオートに乗ることにする。高級ホテルには入ってこられないので通りに出て流しを拾う。
時間ギリギリだったが「”Sanju”が始まっちゃうから急いで!」と急かしたドライバーが頑張ってくれてなんとか間に合う。割り込み男子たちに囲まれるものの、ガンを飛ばして牽制し、知らんぷりする輩にはExcuse me!!! とどいてもらいチケットも無事ゲット。何度も同じこというけどさ、インド人、並んでよ。
つつがなく前半終了。間際駆け込みのため、すぐ出られるいい席はとれず。出遅れるとインターミッションのトイレが激混みなのは毎度のこと。デリー銀座のハイソな映画館ですが、ここでもまたみんなちゃんと並ばないので、トイレの順番でバトる。気の弱い私はそういう疲れることは極力したくないので、人波が引く休憩終了間際にサッと行くことにする。
やっと人がいなくなったトイレにホッとしつつ、さて後半もう始まっちゃったけど席に戻ろうとトイレを出たら。
目の前にラージクマール監督がいた。OH MY GOD!
「日本からSanjuのために今日来ました(嘘でもないけどかなり盛ったw)。監督、以前来日されましたよね? ぜひまた日本に来てください。写真一緒にいいですか」
相手が監督だからか、我ながらマードゥリー・ディークシトにバッタリ(注・こちらは来週再掲しますです)のときとはえらい違いである。監督は息子さんと来ていた。中学生くらいかな、賢そうな息子さん。
監督の指示で映画館のスタッフが何枚も写真を撮ってくれた。テンションがあがりすぎ、私、めちゃくちゃしゃべる。普段は滑舌悪いのにこういうときだけスイッチばりばり(笑)
「ヒンディー語わかるの? 字幕なくて大丈夫?」
「えー、念で理解しています。なにより今観たいから字幕じゃないんですよハートで観るんです」
「そうか、まだ言えないけど、半年後くらいに日本でもやると思うよ(それはリークではないのでしょうか監督……)」
「え、まじっすか。じゃあ字幕で心おきなく観られますね」
あとなにを話したか覚えていないけど10分くらいはたっぷりおしゃべりしてくれた。この映画館はわりとハイソなインテリ層向けなのだが、お忍びで観客の反応を見にきて、かつ映画館のスタッフを労っていた……というタイミングだったらしい。息子さんにも熱心に観客のことや映画作りのことを話しておられた。きっと彼も将来の映画界を担う人材に育つのだろうな。
震える手を握りしめて客席へ戻る。思い切り興奮状態で、後半が頭に入らねえ。
いい映画だった。でもいろいろ吹っ飛んだ。
そしてまさかの大円団
そして帰りはUberでと思っていたのになかなか捕まらない。
たまたま通りかかったオートのドライバーが、私のほうがぜったいに腕力あるなという小柄で気の弱そうな人の上、拍子抜けするくらい相場の料金を第一声で言ってくれたので、23時すぎてはいたけど道はわかるし、乗ることにした。
さてホテル着。
やっぱり明日の朝一番にカードは止めてもらおう。でも一応聞いておくかとフロントへ立ち寄る。フロントのシフトが変わってもどうせ引き継ぎなんてしていないだろうし、またゼロから事情を説明するのダルいなーインドはそういうところがダメだよなーと内心かなりやさぐれつつ。
「Ek minute Madame」
(「1分、マダム」、という表現、「ちょっと待って」という意味でよく使う)
なんと名前を名乗る前から私の顔を見ただけで、封筒片手ににこやかに歩み寄るホテルマネジャー。厳重に封がされた封筒を開くと、私のカードがうやうやしく納められていた。
エアインディアだしな、なくなったよな完全に。と諦めたのに、無事見つかったうえに、ホテルまで届いていた。なんの魔法か。澄ました顔をしていたお行儀のいいその場のフロントスタッフ全員と思わずガッツポーズ。高級ホテルなのに付き合いよくて嬉しいよ(笑)
ちゃんとホテルのレビューを書きますから。あと今度はお客様を連れてくるから。
今回のことは、慢心するなという神様の警告に違いない。
この数日、白鳥の船に乗るデーヴァセーナーばりに心ここにあらずだったから。
とまれ、神様仏様ご先祖様友人家族の皆さま、ありがとうございます。私は元気です。
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そんなわけで、2021年もあとすこし。
ル・メリディアンはインドテイストまったくないモダンな内装ですが快適です
都心のホテルのため広さはこのランクのホテルにしてはちょっと狭めだけど、改装も行き届いています
アンジャリツアーのマダムシリーズ『マダム・イン・デリー』のときのお部屋はこんな感じ
ディナービュッフェ。朝食ビュッフェもインド料理以外にも充実していて生野菜も安心して食べられます
私の天敵・インドスイーツも洗練された感じで豊富にありひじょうに困ります
というわけで、デリーのル・メリディアン、とてもよいホテルでございます。はい。