裸の上半身:博士の普通の愛情
寄り合いがあった。その集落はとても小さく、人口は54人。珍しく駐在の石渡くんが皆を集めたが何の寄り合いだかわからない。いつもは隔週の土曜日の夜に玉城さんの家に集まることになっているが、今夜は石渡君くんの家でやるらしい。
「まだ全員じゃないけど、始めましょう」
石渡くんはパソコンをテーブルの上に置いてそう言った。集まったのは9人。遅れてくる者もいれば、欠席の者もいるようだ。
「うちの集落ではほとんど事件らしい事件が起こったことがないです。うちの親父の頃からです。一度、観光客が崖から飛び降りたことがあったけど、大きな事件といったらあれだけです。親父は初めてのことだったんで興奮してました」
「ああ、そんなことがあったな。あれは事件だったのか事故だったのか、結局わからずじまいだった」
「はい。前田さんの言うとおり、事故という形で処理しましたが、真実はよくわからなかったというのが親父の本音みたいでした」
「で、今日は何の集まりなのよ」
「大変言いにくいことなんですが、ちょっとこのパソコンを見て欲しいんです」
9人の男たちは画面が見える位置にぎゅうぎゅうに集まった。
「えー、くれぐれも注意していただきたいのは、これを見ても決して口外しないで欲しいということです。プライバシーに関わることですんで」
「なんだ、エロ画像か」
お調子者のノブさんがふざけて言う。酒を飲んでいるようだ。
「おいノブ。石渡くんが真面目に説明してるんだから、やめとけ」
前田のじいさんがたしなめた。しかしノブが言ったことはあながち外れてはいなかったのだ。石渡くんがひとつのフォルダを開いた。
多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。