フードコートにて:博士の普通の愛情
友人夫婦と食事に行った。彼らは6歳の息子を連れている。赤ちゃんの時から会っていなかったので、こどもの成長の早さに驚いた。ショッピングモールのフードコートのような場所。連休なので家族連れで一杯だ。
「俺、ちょっとトイレに行ってくる」
「私も行きたい。悪いけど、いいかな」
僕は、構わないよ、と答え、こどもとふたりになった。
「あのね、ぼくはミニカーが好きなの」
「そうか、今日は持って来てるの」
「うん。これはパトカー」
こどもはポーチの中から大事そうにパトカーを取り出す。
「サガワさんのおうちに向かいます、どうぞ」
警察ごっこが始まった。いつの時代も同じだな。
「けいさつです。おたくで、ふうふげんかをしているらしいですね」
サガワというのは友人夫婦の苗字だ。リアルな設定に笑ってしまった。
「パパとママは喧嘩するの」
「たまにね。昨日の夜もしていたよ」
「そうか。仲良くしなくちゃいけないのにね」
「ぼくが起きたらふたりとも裸だったよ」
あまり深く聞いてはいけない展開になってしまった。
「それでね」
「うん。どうしたの」
「裸で喧嘩しているのかと思ったの」
友人夫婦の顔が浮かぶ。だめだ、もうこの先は聞いてはいけない。
多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。