見出し画像

60人のための料理。

あるシェフがSNSをやめた話を聞く。多くの人が朝から晩までアップし続ける料理の写真を見るのに耐えられなくなったからだそうだ。

「人が食べているモノなんか見たくねえよ」というありきたりな理由じゃない。ほぼ全員、他人が作った料理を食べていることに我慢ならないのだと言う。

立場の違う俺たちには決して理解できないけど、昼一回転で20人、夜二回転で40人にしかその人の料理は食べてもらえないとしたら、それ以外の数十億人は自分以外の料理を食べていることになる。

その店を愛する60人に毎日食べてもらえることだけで十分スゴいことだと思うんだけど、そうではないらしい。インスタでより上質な料理を見せられれば凹み、ジャンクなモノを食べているのを見れば落胆する。

唯一心が揺れないのは家庭料理で、それは家族が家族に作っているモノだかららしい。

自分に置き換えて考えてみると、他人が撮った写真を見て「これなら俺が撮りたかったなあ」と思うことはある。ただ、マスに関わっていると数千万人に向けて作っているような勘違いをすることがあるけど、行列はできなくていいから毎日自分の小さな店の60人のテーブルくらいを味のわかる人で空席のないように。

すべきことはそれだけだと今日も思いながら、おはようございます。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。