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やんばるくんの初恋:博士の普通の愛情

ついこの前まで暑い暑いと言っていたのに、今日は「会議室が寒いので暖房を」という言葉を聞きました。東京もすっかり秋、ロバート・ツルッパゲです。さっそく沖縄のガンバルやんばるさんからいただいたお便りをご紹介します。

ロバートさんこんにちは。いつも「ハッピーナイト24」聴いてます。沖縄・うるま市のステーキハウス坊ちゃんという店でバイトをしているガンバルやんばると申します。ハピナにはがきを出すのは初めてですが、勇気を出して今週のテーマ「私の初恋」に。

僕の初恋は「あかるい子保育園」で一緒だった優ちゃんです。皆からゆうゆうと呼ばれていました。ご存じの通り沖縄の女の子は彫りが深い美人が多いのですが、ゆうゆうもとても笑顔の可愛い子でした。

城前小学校高学年だったある日のことです。クラスのませた女子が男女の人気コンテストをやろうと言い出しましたが、男子はまだまだ子供。海に潜ったりゲームばかりしている時期で、恋愛などには何も興味がない頃でした。

僕は勉強もスポーツも見た目も特に取り柄がなく目立ちませんでしたから「そういうのはやめて欲しいなあ」と思いました。スポーツ万能の真喜志くん、勉強ができる喜屋武くんや、子役でテレビにも出たことがある仲里くんたちに票が集まるのはわかり決っていたからです。

結果はやはり彼らが人気で、女子はダントツでゆうゆうが一位でしたが、驚いたのは僕にも一票が入っていたことです。クラスの誰かが僕に入れてくれたということです。その日から「犯人捜し」が始まりました。犯人というのはおかしいですけど。

人気投票の日から男子も休み時間に集まっては「あの子が好きだ」などと言い始め、アダムとイブのように異性を意識し始めるようになりました。僕はそれがあまり好きじゃなかった。その日を境に、男女が取っ組み合ったり、馬乗りをしたり、一緒に泳いだりすることができなくなってしまったからです。犯人はわからずじまいでした。

ゆうゆうとは城前小学校まで一緒だったんですが、親の方針で彼女は中学からはアミークスインターナショナルスクールに行ってしまいました。時々スーパーのサンエーV21で買い物をしているところを見かけることはありましたが、どこか遠い存在になってしまったような気がして声をかけることもできませんでした。

中学2年の時に城小で一緒のクラスだったある女子が人気投票のことを話していました。「その時に一番人気だったゆうゆうって子は今アミークスなんだけど、やんばるくんに入れていたんだよね」と言うのです。

探しても見つからなかった犯人はゆうゆうだった。

僕はそれから、ゆうゆうと会えないかと思ってアミークスの近くをうろうろするようになりました。うちの中学とは違ってお洒落なコンクリート打ちっ放しの校舎で、当たり前ですが下校する生徒たちは英語で話していたりして、こちらの気持ちはうちひしがれっ放しです。

12月、その日も自転車に乗ってアミークスに向かおうとした時、やんばるくん、という声が背後から聞こえました。ゆうゆうでした。

「久しぶりだね。何してるの」僕はしどろもどろで「ちょっと、用事があって」と小さな声で答えるのが精一杯でした。

「これからTettohに行くんだけど、やんばるくんも行かない」Tettohというカフェの前は通ったことはありますが、僕らは子供だけでカフェなんか行きませんから、やはりインターの子は大人だなあと妙な感心をしました。

「いいよ」財布にお小遣いがあったかを心配しながら答えると「じゃあ後ろに乗せて」と、ゆうゆうが僕の自転車の後ろにまたがりました。

Tettohに向かう道、彼女は僕の腰にぎゅっとつかまっています。僕の背中にはゆうゆうの柔らかい胸が当たっているのも感じました。背中というのは触覚が鈍感だそうですが、その鈍さがうらめしかった。なぜお前は鈍いのだ。

カフェに入るとアミークスの男子生徒が二人いました。「おう、ゆう」僕は彼女をそんな呼び方をするそいつらが気に入らなかった。瞬時に「敵」と認定しました。ゆうゆうと僕は奥の角の席に座り、懐かしい話を始めました。

聞くのは野暮かと思いましたが、あの日、ゆうゆうは本当に僕に投票してくれたのかをどうしても確かめたくなりました。

「ねえ、人気投票のこと、憶えてるかな」

先にそう言ったのは、ゆうゆうの方でした。

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恋愛に関する、ごく普通の読み物です。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。