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あのトンネル:博士の普通の愛情

妻と近隣の街に買い物に行くと、おかしなことを言うことがあった。山奥の自宅に帰るにはわざわざ遠回りになる店に寄りたいと言い出すのだ。僕は多少面倒だなと思いつつ、週末くらいは付き合うかと渋々車を走らせていた。あとから思えば、妻はあのトンネルを通りたくなかったのだろう。

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トンネルを迂回して山道を走ると約40分ほど遠回りになる。必要なものは街で買ったというのに、妻は途中にあるどうでもいいカフェに寄ったり、さびれたアウトレットモールをのぞいたりする。あるときなぜそんなことをするのかと聞くと言葉を濁したのだが、数年前にテレビでトンネル火災のニュースをふたりで見たことを思いだした。もしかしたら、あのトンネルを通るのが怖いのかもしれないと思った。妻は僕が出張に行っている間はときどき自分で運転をしてひとりで街に出かけていたらしい。ひとりなら自由に道を選べる。おそらくその日の夜もトンネルを迂回しようとしていたのだと思う。

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恋愛に関する、ごく普通の読み物です。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。