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ひもで結んだナイフ:Anizine

ソーシャルメディアに不平や不満、悪口や愚痴を書くのは己の幼稚さを晒すだけだと思っているのでしないようにしているんだけど、自分の知り合いにもそういうことを書く人がほとんどいないので耐性がない。早朝からこう書いていることさえ気が引ける。ネガティブなことなど読まされたくないだろうから。

「自分の正しさや繊細さに注目して欲しい」という理由だけで他人を傷つけるのが平気な人がいる。その手の矛盾に満ちた人は第一印象でだいたいわかるからあまり近づかないようにしている。その弱さから生まれる気持ちもわからなくはないんだけど、ときどき巻き込まれて落ち込むことがある。

ダメージを受けるのは、自分の繊細さを理由にしないで生きている、彼らよりも「もっと繊細な人」である場合が多い。性善説と言ってしまうと陳腐になるけど、誰でも相手のことを最初から悪く思いたくない。しかし正義と繊細さを振り回す人は容赦ない。長いひもで結んだナイフを頭上で振り回しながら近づいてくる。近くにいるときはその人が何を回しているのかわからないが、やや距離を置こうとするとナイフにぶつかって傷つく。もっと離れると彼が何を振り回していたのかの全貌が初めて理解できる。

誰でも自分の考えが正しいと思っている。小学生でも営業部長でもフリーターでもマイルドヤンキーでも皆がそう思っている。自分の価値観と違う人の存在は疎ましいものだけど、「自分と意見は違っても、相手の自由も同じように尊重した方がいい」と、どこかのフランス人も言っていた。

では、ソーシャルメディアで一番大事なのは何か。

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Anizine

¥500 / 月

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。