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写真の部屋

人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。
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#写真の部屋

サボり写真:写真の部屋

若い頃、先輩から「お前は、雨が降っていると家の猫しか撮らないのか」と怒られた友人がいました。写真には行動の量が写りますから、雨だから部屋にいる猫でも撮るか、というサボリは伝わってしまうよ、ということだったのだと思います。 20代の人に会ったとき「おじいちゃんかよ」と言いたくなるほど枯れた写真を見せられることがあります。ベランダにある花、テーブルの上のオーガニックなクッキーとカプチーノの露出オーバー気味の写真に「日常の繊細な美」みたいにポエちらかしたキャプションがついているの

山村紘未さん:写真の部屋(無料記事)

いいモデルが目の前にいなければ、いい写真が撮れないのは当たり前です。つまるところ、写真家にとって「いいモデルと出会う能力」がとても大事だということになります。写真はモデルで女優の山村紘未さん。ある撮影で知り合い、何度も仕事をしました。 モデルとして活動していたときから、この人は俳優に向いているのではないかと感じていました。衣装を着てカメラの前に立った瞬間に何かが見えてくるからです。神秘的な言い方は好きではありませんし、おおげさな表現かもしれませんが、彼女がそこにいれば何もし

心がロコモコする:写真の部屋

私は30歳くらいまで「引きこもりのインドア人間」でした。広告のアートディレクターをしていたのですが、当時はわざわざスタジオで撮るアイデアばかりを提案していて、なぜかロケは避けていました。出不精だったのです。今はデブ性ですが。パワハラじみたオヤジギャグはさておき。 広告の仕事では自分がロケーションを決めるときもあるのですが、「ここでこういう撮影をする」というのが先に決まっていることもあります。そうなると行かざるを得ません。そこで「ロケって楽しいじゃん」と、10年遅れくらいの発

ハリウッド・メソッド:写真の部屋

写真でもムービーでもそうですが、演出して撮る側は「演技においてのグルメ」でないといけないと思っています。たとえば泣く演技。涙をスポイトで垂らして撮れば終わりではありません。なぜ写っている人はそこで泣いているのか、観る人がその涙に感情移入できるかどうか、が大事です。演出は小説を読んだり、映画を観たりすることで訓練できますが、そこで得られるデータは「してはいけないこと」の膨大なストックになります。 たとえば映画を観ていて、ここで主人公がこんなに泣くのはおかしい、と感じたとします

ギャラ問題:写真の部屋

相変わらず、平林監督が書いたことに影響されていますが、ギャランティの問題についてです。 平林監督の定期購読マガジンは非常に大事なことが書かれているので、是非とも。これに払う500円をケチると、今後の人生でいくら損をするかわかりません。で、私のほうも生々しい話になりますので、ここからメンバーのみに。

必リンク:写真の部屋

あなたの写真はなぜ「ただ撮っただけ」に見えるのか。 これを見て学んだからと言ってすべてを参考にしなくてもいいのですが、こういうことをしているのか、と知らない場合はぜひ知っておいた方がいいです。写真を見たときに何をしているからこう写っているのかがわかっている人は見なくても構いません。それでは以下のリンクへ。

ソール・ライター:写真の部屋

デザイナーになったばかりの頃、参考になりそうな雑誌広告を手当たり次第に切り抜いてファイルにまとめていたことがありました。それを見たデザイナーの同僚から「いいモノだけをストックしないと意味ないよ」と言われたのをいまだに憶えています。それから何十年か経って考えてみても、どちらが正しかったのかという答えは出ません。当時の私はまだ何もできなかったので、ほんの少しでもテクニカルなヒントになる部分があれば参考にしていたのですが、彼は「目が腐るから、マスターピースしか見てはいけないのだ」と

子どもや犬を撮る:写真の部屋

写真を撮るうえで大事なことはたくさんあります。定期購読メンバーの皆さんと考えていきましょう。例題は「子どもや犬を撮る」です。

対等な関係:写真の部屋

何をするにしても、まず「関係が対等か」と考えます。自分が相手から得たのと同じ量を相手に返せるか。もしもそこに不均衡があるのなら、どちらかが相手から何かを搾取していることになります。先日、あるアーティストの作品を観ていたところ、その人から「あなたの写真が好きです」と言われました。これをもって対等とするにはいささか僭越すぎますが、少なくともお互いを認め合っている均衡を感じました。 自分が提供できる情報が増えていくと、それに反応する相手が増えていきます。もちろん「誰かに提供するた

ノルウェー軍の寝袋:写真の部屋

写真を撮る行為にはいくつもの段階があります。まずカメラかスマホでその辺にあるモノを撮ります。カプチーノとか鉢植えとか猫とか犬とか。これが第一段階。いくら撮っても文句を言われない存在に目が向きます。 「写真を撮ること」に興味が出てくると、いいカメラやレンズを手に入れようとします。しかし何が何だかわからないのでカメラ機材のことをネットで検索したり、本を買って勉強します。『写真の部屋』を定期購読してくれている人たちはすでにご存じだと思いますが、ここに第一の分岐点があります。 機

仕事の予算について:写真の部屋

仕事を引き受けるときの基準がいくつかあります。決定権がある人と直接話せること、関わる人が少ないこと、本物が使えること、など。結局すべての理由は同じなのですが「忖度が面倒」ということです。15年近くお手伝いさせていただいたあるクライアントで言うと、年に二度の撮影は私とクライアント日本担当者の二人だけで、現地のParisのクライアントが合流し、ロケはたったの三人だけで進行していました。 それまでの共通認識があるから現場での判断が早いのですが、ここで重要なのは必ず「本物を使う」こ

RAW現像:写真の部屋

午後のカフェ。店内に綺麗な光が差し込んでいます。上のほうはごく普通の現像で、人物を明るく見せるために窓からの光は飛ばし気味です。下のほうは、中心の人物の後頭部から肩にかかる光を重視してそれ以外は落としています。窓のロールカーテンが適正からややアンダーになっています。

撮影後:写真の部屋

仕事で撮影をしたあと、承諾をもらって顔の写真を撮らせてもらうことがあります。撮影が終わってリラックスしている表情がとてもよかったりするので。 After a photo shoot for work, I sometimes ask for permission to take a portrait of the model. I like the relaxed expressions on their faces after the shoot because they

トリミングをする:写真の部屋

「トリミングをするのはいけません」という教条主義的な人もいますが、私たちが目にしている写真のほとんどがトリミングされています。昔で言うとフィルム、今で言えばイメージセンサーの比率は、雑誌やポスター、印画紙へのプリント、ウェブの表示画面とまったく同じではありませんから、フチをつけたデザイン(ノートリミング)以外では必ずトリミングされています。 また、撮った写真のどこを強調するかという目的もあります。重要なのは、撮影したときの自分と、セレクトしているときの自分では、すでに変化が