マガジンのカバー画像

写真の部屋

人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。
¥500 / 月
運営しているクリエイター

#カメラマン

ピアニストのように:写真の部屋

「僕は運動神経がいいのでアスリートになりました」と聞いても、当たり前すぎて何とも思いませんよね。でも、写真はなぜかそこが違います。アートを観せられたときに「いや、アートはまるでわかりませんので」と言って発言を避ける人がたくさんいます。しかしその人が、ある日突然カメラを買って写真を撮り始めたりします。そして「いい写真が撮れないなあ」と言うのです。 これって「運動神経が悪い私はアスリートを目指しましたが、まったく記録が伸びません」と言っているのと同じくらい不思議に聞こえないでし

付加価値型と記録型:写真の部屋

自分がなぜ写真を撮っているのかを考えています。 ただただ撮るのが楽しいからですが、それだと趣味ということになります。私は趣味が好きではありません。そういう感覚も珍しいと思うんですが、何かをするときに趣味にとどめておく「消費行動」に興味が持てないのです。かなり正確な説明が必要だと思いますが、たとえばギターを趣味で弾くことに惹かれません。どうせやるならドームでコンサートをしたいし、それができないことを認めたくないのです。 ですから写真を撮るなら自分で満足するだけの趣味ではなく

不運な写真学生:写真の部屋

秋に出版する「写真の本」を書いているので、写真にまつわる様々な意見をネットなどで調べていますが、そこでわかったのは、「いい写真を撮っている人が写真の技術を教えていることはまずない」という事実でした。どのジャンルでも同じでスキルにはいくつかの段階があるので、それに応じて人が分布しています。 先日、こんなことがありました。私の仕事場は渋谷と原宿の中間にあるので、道端で何かの撮影しているところを見かけない方が珍しいくらいです。規模は様々で人の少ない早朝には映画やドラマのように数十

最初に仕事をした写真家:写真の部屋

私は40代までアートディレクターとCMディレクターをしていました。つまり、カメラマンに仕事を頼む立場でした。その経験は自分が撮影を頼まれるようになった現在、とても役に立っています。私が10年間在籍した会社は、日本で最初にできた広告制作プロダクションで、社内にデザイナー、カメラマン、クリエイティブディレクター、コピーライター、プランナー、CMディレクター、プロマネ、プロデューサーがいましたから、グラフィックとCMの広告すべてを内製できる体制が整っていました。 社内にいるだけで