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写真の部屋

人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。
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2023年12月の記事一覧

ヒリヒリしないと:写真の部屋

写真は料理と重なる部分が多いので、ついその喩えを使ってしまいます。素材を吟味して探し、技術を使って調理して、皿に盛り付ける、最初から最後まで似ています。 料理を作る技術のベースメントは、それまで自分が食べてきたものによりますから、美味しいものを食べた経験がない人が素晴らしい料理を作ることはあり得ないと思っています。写真も同じです。シェフが舌を鍛えるように、写真家の眼が鍛えられていないと、自分が撮った写真がいいかどうかがわからないはずです。 手垢のついた「インプットとアウト

突然の贈り物:博士の普通の愛情|写真の部屋

14歳のときに聴いていた音楽は一生ものだと言います。さっき大貫妙子さんの『突然の贈り物』を久しぶりに聴いて泣きそうになったのですが、調べてみると、それは私が14歳のときに発表された曲でした。皆さんにもそういう曲があると思います。『突然の贈り物』の歌詞で、私が一番グッとくる部分は、 「必ず待ち合わせた 店も名前をかえた」 というところです。その前の「別れもつげないで 独りぼっちにさせた」のフレーズも勿論、切なく心にくるのですが、心情的ではない情景描写だけで表現しているのがう

運命と写真:写真の部屋

昨日、来年の2月の隙間を縫ってソウル行きの航空券を取りました。この時期のソウルはかなり寒いのですが、そんなときにしか撮れない写真が残ればいいと思い、やや修行的な気持ちでいました。 それが、なんと!

他人に動かしてもらう:写真の部屋

フリーランサーというのはどういう仕事ですか、と聞かれたときにはいつも、「他人に動かしてもらうこと」だと答えます。 この答えはフリーランスの立場を未経験の人に向けた、ひとつの簡単な答えなのですが、かなり本質的な部分も含んでいます。何かを作る仕事をする場合、それを買ってくれる人がいて初めて商売になります。趣味というのは「買ってくれる人がいないモノを自分のためだけに生産し続けること」なので、その点については何も考えなくていいわけです。ただ純粋にジョギングを楽しんだり、湖の畔でキャ

カバー確認:写真の部屋

『カメラは、撮る人を写しているんだ。』 今日は本のカバーの色校正があがってきました。それを確認がてら、編集の今野さんと軽めの中間打ち上げランチをしました。 美味しいイタリアンを食べつつ、ああ、やっとカタチになったなあ、と感慨もひとしおです。自分の本を作るのは二度目ですが、前回の経験もあるので今回はかなり落ち着いて進行状況を味わえました。

オバマと写真家:写真の部屋・Anizine(無料記事)

U-NEXTで『大統領のカメラマン』という映画を観ました。「ホワイトハウスの大統領専属フォトグラファーか、参考として観ておくか」くらいの気持ちで観てみたところ、受ける印象はまったく違いました。写真に興味がない人も魂が揺さぶられると思いますし、カメラを手にしている人なら「写真を撮る意味」をもう一度考えるはずです。 メインになっているのは随行していたオバマ元大統領の姿ですが、それはアメリカの理想、人間の存在、政治の在り方のすべてにリンクしていきます。後半はわかりやすくもうひとり

2割のズレ:写真の部屋(無料記事)

誰もが常識だと思っていることには、2割のズレがあると思っています。私がネットで見ていて苦手なのは「普通、あり得ないだろ」のようなコメントで、あなたが思っている普通だけが真理ではないと思ってしまいます。普通や常識は『正解』のような印象を与えますが、そんなものはどこにもなく、気の合う人でさえ、8割の共通認識で生きているだけです。 性格の不一致、などと言いますが、完全に一致する人などいるはずもありません。生まれてからずっと一緒にいる蕎麦屋の家族の中でさえ十割の一致はあり得ないので

『カメラは、撮る人を写しているんだ。』

1月30日刊行の『カメラは、撮る人を写しているんだ。』の予約が始まりました。写真について足りない頭で考えていることのすべてを、この一冊にまとめました。カバーの小橋めぐみさんを始め、参加してくれた皆さんありがとうございます。

冬ならでは:写真の部屋(無料記事)

アナログな方法ですが、気温の低い日に軽くレンズに息を吹きかけてみます。光源がこういう感じになります。デジタルのフィルター処理では表現できない雰囲気で撮れますよ。 『写真の部屋』の定期購読をすると、定期に購読ができます。

必ず見つかるんだぜ:Anizine・写真の部屋

今日は金沢へ。ミーティングを終えて渋谷に戻り、近所のコンビニエンスストアで水を買おうとしていると道路に「あるもの」が落ちているのを見つけました。 ここから先は事態の受け取り方が人ぞれぞれだと思うので、定期購読メンバーにだけお伝えいたしますが、なぜ「Anizine」と「写真の部屋」の記事になっているのかはあとでわかると思います。

強迫観念から脱出する:写真の部屋

「どんな写真を撮ればいいのかわからないんです」というのを聞くと、不思議に思います。写真はそこで見たモノをただ撮ればいいんですから、どんな写真が撮りたいかはシャッターを押して撮る瞬間までわかりませんし、どこかに出かけるならそこに行くまでわかりません。初心者向けの教えでは「テーマを決めましょう」などと言うようですが、それらのアドバイスが生み出す強迫観念なのではないかと感じます。 どんな写真も自分の写真。やるべきことをあらかじめ決めて自縄自縛になると世界を見つめる目がひとつになっ

表紙の撮影:写真の部屋

今日は『写真の本(仮)』のカバー写真の撮影をしました。書籍のカバーを新規に撮影するというのはあまり多くないスタイルだと思いますが、文中で出てきた内容をそのままカバーにフィードバックするカタチになっております。そのアイデアを考えついたとき、写真家でありアートディレクターである醍醐味というと大げさですけど、頭の中で考えたものをビジュアル化することができる楽しさを再確認しました。 最近の書籍では大きめの書名がバーンと表紙を埋めている傾向のものが多く、編集の今野さんに聞いても、本の

自分がいるエリア:写真の部屋

一枚の写真を見るとき、あなたの心はどう動いているでしょう。一旦、写真のことを忘れてみてください。いい音楽を聴いたとき、美味しい料理を食べたとき、私たちの感覚器は技術だとか理論だとかを経由しない反応をします。 私が好きなフレンチレストランが西麻布にあるのですが、誰かをそこに連れて行くのがいつも楽しみです。最初に出てくるアミューズを初めて食べる人の驚いた顔を見るのが好きなのです。私はもう何度も体験していて、それでも毎回美味しいと思うのですが、初体験は一度だけですから初めての人の

ポルターガイスト:写真の部屋

今日はホテルの一室でポートレートの撮影でした。 ホテルは渋谷の桜丘で、そこから徒歩30秒のギャラリーで本浪さんの写真展のオープニングがありました。本浪さんに直接お目にかかるのは初めてですが、わざわざ『ロバート・ツルッパゲとの対話』を持って来てくれていて恐縮です。展示は10日までですのでお早めに。 いや、ポルターガイストの話!