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写真の部屋

人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。
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2022年10月の記事一覧

「試行錯誤:写真の部屋」

求められたことを実現するために、ありとあらゆる方法を試し、毎回それを評価される。スタジオで100回やった結果が3回目の人と違うのは当然。でも勘違いしたらいけないのは、1000回やってきた先輩がたくさんいることだ。 「写真の部屋」 https://note.com/aniwatanabe/m/mafe39aeac0ea

さようなら伸子さん:写真の部屋(無料記事)

2014年の山形ビエンナーレのとき、初めて伸子さんに会った。七日町になくてはならない『郁文堂』という歴史のある書店。その店は多くの文人に愛されてきたそうだ。七日町を撮影しに何度か足を運ぶうちに伸子さんが俺のことを気にかけてくれ、とてもよくしてもらった。何という理由もなく山形に行っては突然郁文堂のドアを開ける。 「あらあ、アニさん。来てくれたのね」 そしてお茶をいれてくれて、1時間くらい近況やお孫さんの自慢話を聞かせてくれる。じゃあ、また近いうちに、と言って帰る。そんなこと

カラーコントロール:写真の部屋

色というのはご存じの通り、光の反射でできています。写真を始めたばかりの人がコントロールに苦しむのが「色」で、それにはまず目を鍛えるしか方法がありません。 色は光源、対象物、(見る)角度、面積、隣り合う色など複雑な要素で変化します。「昼の太陽の下で白いハンカチをグレーのテーブルに広げている」こういった状況で写真を撮ればニュートラルな結果になるのはわかると思います。昼の太陽の色温度はおよそ5000から6000Kで、カメラのカラーバランスにある「太陽光マーク」はそのあたりに合わせ

手が止まる:写真の部屋

膨大な写真をスクロールしながら見ていると、なぜか手が止まる一枚がある。それは写真家の手によるものであることが多い。どこがどういいのかなんて説明はできない。おそらくその人が撮りたくなった心の動きがそのまま写っているからじゃないかと思う。 定期購読マガジン「写真の部屋」 https://note.com/aniwatanabe/m/mafe39aeac0ea

懐かしのParis:写真の部屋(無料記事)

2年半ぶりにパリに行った。今の状況になるまでは年に平均4回くらいは行っていたので、これほど長く行かなかったのは初めてだ。 人の少ない朝の羽田空港。6月に久しぶりにヨーロッパに行ったときまで知らなかったのだが、国際線ターミナルという名前ではなくなっていた。仕事場に迎えに来てくれたタクシーのドライバーが、「外国に行かれるんですか。いいですね、やっとですね」と言う。「はい」と答えたときのちょっとしたチカラの入り方が自分でもわかった。 6月はクライアント指定でANAに乗ったので今

インスタライブ告知:写真の部屋

今日13日の19時くらいから『写真の部屋』インスタライブをしようと思っています。何か教えられるような分際ではないので、質問に答えるスタイルにはなりませんが、コメントしてもらえればこちらでピックアップしてお返事をしたり、ブロックしたりできるので、よろしくお願いいたします。

ここだけの秘密を:写真の部屋・Anizine

写真という概念には色々あって、レタッチしないとかトリミングなどけしからんとか、それぞれの正義で話をするものです。でも裏でどんな作業をしようと、一枚の写真を見たときに「何が加工されているか」なんて、見た人にとってはあまり関係ありません。 たとえば、この写真(と言えるかな)の元になった写真をご覧にいれましょうか。けっこう驚きますよ。元のは転載しないでね。

こう撮ればいい:写真の部屋

毎回同じようなことを書いていますが、写真は自分が好きなように撮ればよくて、そこには正しさなどありません。不思議なことに多くの人は「正解」があると思っていて、教則本などで「こう撮ればいい」という通りに撮ろうとします。ここを読んでいる人にはすでにそういう人はいないと思いますけど、もう一度確認のために書いておきます。 受験や資格、免許の試験のようなカタチの教育に慣れていると、どんなものにも正解が存在すると思いがちです。でも表現というのは今までに自分以外は誰もしていなかったことを世

あなたは誰ですか:写真の部屋(無料記事)

今回初めてパリに来る人と一緒に一日過ごしたので、自分が最初に行った日のことを思い出しました。その日は嵐のような大雨でしたが、それから仕事や遊びで30回以上訪れるうちに友人も増えて、今では「お帰りなさい」と言ってもらえるようになりました。「あなたは誰ですか」と聞かれるようではそこで何もすることができません。ただのカメラを持った観光客と同じです。 敬愛するCRIMSONのLindaに2年半ぶりに会うことができ「I miss Paris.」と言うと、彼女は「Paris misse

アナログNFTの実験:写真の部屋

今回のパリは時間がありそうだったので、定期購読マガジン「PDLB」のメンバーにオーダーメイドの写真をお届けするという企画を考えました。最近NFTやその周辺に関しての勉強をしていて感じたことへの実験でもあります。言うなれば『アナログNFT』でしょうか。 写真の価値はオリジナルプリントに限る、という考え方はわかりやすいものです。写真家もしくは専属のプリンターがプリントした写真だけが持つ、鑑賞者と作家の繋がり、というのがわかりやすいからです。この感覚をブロックチェーンでデジタルに

写真の設備投資:写真の部屋

たとえば製造業を始めようと思ったら数億円の設備投資が必要になります。一定の品質をクリアできる最先端の機械や、それを設置するスペースが必要で、仕事を受注するための説得力にも関わってくるからです。 さて、写真はどうでしょうか。仕事として成立させられる「一定の品質」の納品レベルを満たすのにヨドバシカメラやビックカメラで誰でも買えるカメラとレンズ、これまた誰もが使っているパソコンがあればいいわけです。我々が来月、高性能な半導体工場を作るのは不可能でしょうが、初期投資が安く済む分だけ

一人旅:Anizine・写真の部屋(無料記事)

浅生鴨さんが一人旅の短編を、平林監督もたまたま一人旅について書いていた。俺も帰ってきたばかりなので書く。 国内もそうだけど、外国に遊びに行くときはできれば一人がいい。俺のスタイルはかなり衝動的なので自分の予定だけで決められた方がラクなのだ。二人のスケジュールを合わせるのも大変なのに4人とか5人ではほぼ無理だ。 行きたい場所も予定せずに行くから、誰かが「せっかく来たんだからあそこに行きたい。3時間で行けるから」などと言われると気絶しそうになる。せっかく、が厄介なのだ。とにか